まずこの型を守れ!チーム構築術
夏の記事には、ありがたくも共感がありつつ、批判的なコメントも見受けられた。中には「長すぎて読む気にもならない」という人もいた。
モチベートについて述べた記事がそもそも読者をモチベートできていないという、実に滋味深いお笑いを提供してしまった。つくづく人間は複雑である。
懲りずに本題
本稿では、学生組織・チームを成功させるための「型」を紹介する。
そもそも、(かつての私を含めた)大半の学生にとって、チーム運営は難しすぎる。何が難しいかといえば「正解が明確でない割に、やり直しが効かない」ことである。

大学チームに限れば、運営を任されるようになった頃には、自分の “寿命” は残り1年あるいは2年などと決まっている。
短すぎる任期のなかで、こうすべき!と明確にゴールを描いて突き進んでいけるリーダーがいれば間違いなく名将だが、己の感覚だけを頼りにこの芸当ができる人はそうはいない。周囲がついてこないこともしばしばある。
なんとなく幹部になりました。
気が付いたら1年経ちました。
ちょっと分かってきた気がするけど…
もう3年生。就活!?
そっちのほうが大事か。
運営は結果が見えにくいし評価されないし…。
でも俺、キャップ野球で何かを成せたのかな…?
なんて思い悩んでいる人には、数年前の私が鬼のヘドバンで熱い同意を送っていることだろう。
私なりの「型」をお伝えする。少なくとも明日から、何も分からない状態ではなくなる。とりあえずやることが明確になるはずである。
チームを成功に導く型
チーム運営には3つの段階がある。これを「型」と捉えるとよい。
①関係を構築する
②ともに思考する
③ともに試行する
順番を入れ替えてはいけない。1つずつ段階を踏む必要がある。

例えば、いつぞやの記事に「仲良くない人を統制しようとしても、無駄」という話を書いた。
これは「①関係構築」と「③試行」の順番が逆なのである。関係構築が充分でないのに、新しいマネジメントの型を試行するからうまくいかないのだ。もっと書けば、試行が「ともに」でなく「独りよがりに」行われるのも、失敗の原因である。
この型と順序を念頭に置くだけで、不正解を引くリスクが低減する。
①なしに②に移るのは得策ではない、独りよがりな試行は反発を招く、など自らのマネジメントを律する指標になるだろう。

命名センスが終わっている
さて以下では、上記3段階の入り口である「関係構築」について、私なりの考えと蓄えた僅かな技術を放出したいと思う。
関係を構築する

何をすべきかハッキリしないなら、とりあえず周囲と仲良くなる努力をしてみよう。先輩後輩は関係ない。チームメイトあまねく片っ端からである。
陰キャで人見知りの私は、初対面の人と話すことに莫大なパワーを必要とする(関西シャッフルは周囲が話しかけてくれたので助かった)。新歓をやるたびに向いていないと思った。
でも仲良くなりたければ、自分から歩み寄るしかない。ここがしんどい部分だが、状況を変えるなら自分が変わるしかないのである。
世の中に不満があるなら自分を変えろ!
それが嫌なら、耳と目を閉じ、口をつぐんで孤独に暮らせ。
関係構築において私が意識していることを列挙してみるので、適宜参照されたし。
・言葉遣いに気を配る

敬語と挨拶は当たり前のお作法なので割愛する。そこから事故っている人もたまに見かけるが。
言葉遣いについては、事故っているケースから学ぶのがよい。私の主観だが、目撃例を1つ紹介しよう。
■例
下位打線は好きに振っていいよー
私は思った。
好きに振るって何?
下位には期待してないよってこと?
第一、指示があいまいすぎねーか?
気にしすぎやろ、と思うのも捉え方だとは思う。ただ少なくとも私は、入部当時の五島にコレを言われたら腑に落ちなかったであろうし、この手の発言が続けば失踪したと思う。当然、五島はこんな発言はしなかった。
無頓着・無遠慮な言葉は、ボディーブローのようにジワジワ周囲を破壊するのである。
ポイントは、
✔︎受け取り手の立場をシミュレーションする
✔︎アドバイスは前向きかつ具体的に行う
ということである。
例のケース、下位打線に発展途上の新入生が並んでいるなら、いきなり「タイミング合わせて好きに振れ〜」はハードルが高いことを理解すべきである。
特に野球未経験者だと、そもそもバットの振り方が分かっていない可能性がある(私もそうだった)。見慣れない速度で飛んでくる物体へのアプローチが分からないのである。
そんなときは、「リリースと同時に振り始めてよい」「頭だけはブレないようにする」「高めだけは注意」など、何かしらの課題を1つだけ与えて、その課題をクリアできているかどうかでアドバイスを組み立てていくと分かりやすい。
リリースと同時に振っていない(遅れている)なら、まずそこから。リリースと同時に振っても遅れているなら、反応速度かスイングスピードに改善の余地がある。いずれにせよ、課題を1つ細分化できるのである。

欲を言えばというか、本来的には練習でやるべきことだが
ちなみにありがちだが、「結果を出すこと」を目標として提示するのは避けたほうがよい。
「ヒットを1本は打とう!」と銘打って打てるなら苦労しない。
目標は難しすぎず、簡単すぎないものがよい。相手のレベル感に合わせて、仮に結果が伴わなくても前向きでいられる目標の方が、マネジメントする自分も楽である。
…結果にこだわってほしい?それはあなた自身の言語化不足を、ただ美辞麗句に置き換えているだけだ。
物事には順序があり、いきなり飛び越えさせるより、1つずつ踏み締めてもらうほうが効率的である。
例はこのくらいにして、私が言葉遣いで注意している点をまとめてみた。
気になる人は、お気軽にDMでも飛ばしていただきたい。どれもオススメのテクニックである。
>否定から入らず、前向きにフィードバックする
>会話を遮らず、会話のボールを待つ
>受容と共感の姿勢で接する
>他人と比較せず、現在について評価する
>主語を「YOU」でなく「WE」にする
言葉は関係構築における最大の武器である。同時に、一瞬で焼け野原を生み出すこともできるシロモノである。
私はもともと言葉遣いが粗悪で、そのせいか中学生の頃は孤立気味だった。中2くらいで世界史に触れて「光栄ある孤立!w」とか抜かしていた苦い記憶がある。中3くらいでようやく反省して、以降は上のような意識で自らを御するよう努めている(たまに発現して周囲に迷惑をかけるが)。
意識ひとつで結果を大きく左右できるから、ぜひやってみるとよい。
・承認欲求を制御する
この界隈には承認欲求の塊がウジャウジャいる。
私もそのうちの1人、なんならトップクラスと自認しているので否定はできない。現代社会において承認欲求は、もはや “四大” 欲求の1つと言っても差し支えないと思う。

(科学的根拠に乏しいと言われているが)
マズローの五段階欲求が100%正しいとは思わないが、下2つの物理的な欲求がほぼ関係ない界隈において、所属(チーム)を得た先にあるもの=承認欲求だという理屈は、経験則的には正しい。
ただ、あまねくキャッパーはこの言葉を反芻してほしい。
他人を褒めるのは体力が要る。
つまり、褒められたいがための他者への賞賛要求は、他人の体力を吸い取っているテイカー(搾取)行為である。
全く要求するなとは言わない。たまには褒めてほしいこともあるだろうし、「次は自分が!」と他者を発奮させ、周囲に好影響をもたらす可能性もある。広報なんかは、傾向としてこの類の側面が強い。
ただ、加減と節度をわきまえるべきかと言われれば、首を大きく縦に振って頷く。
自分のプレーしか動画化しない広報屋がいたら覚めるし、隙あらば自分語りする人は大体話がつまらない(自戒)。興味の矢印が自分にしか向いていないから、視野狭窄なのである。
>ではどうすべきなのか
往年のアニメにこんな名台詞がある。
人に愛されたければ、まず自分から人を愛さなくては。
これを応用し、私の考えを述べれば以下の通りである。
人に承認されたいなら、まず自分が人を承認できるようになろう。
極端な話、チームメイト全員がこの論理を妥当に守っていれば、他人にいちいち承認欲求をふりかざす必要性が低くなる。黙っていても褒めてもらえるからである(承認欲求は「欠乏欲求」っぽいので、際限なく求めてしまうものかもしれないが)。
私は本項の題名に「承認欲求を“制御する”」と書いた。これは自分のことだけでなく、他者の承認欲求も制御するという意味である。
チームメイトが承認欲求モンスターになる前に、欠乏を充足してみよう。互恵的な関係を築くことができれば、その上(マズローで言えば、自己実現欲求)が見えてくるはずである。

>褒め殺しに注意
色々注文をつけて申し訳ないが、1点注意点がある。
賞賛は妥当性がなければ逆効果である(皮肉や嫌味に聞こえる)。
褒めるポイントがズレてるな、とか、何を褒められてるんだろう、とか、思った経験はないだろうか。これではせっかくの賞賛も台無しである。
対策はズバリ、何がいいのか、何故褒めるのかを説明できるようにすればよい。賞賛の根拠に筋が通っていれば、より深く腹落ちする。
私は新歓期でも、賞賛の根拠を考えながら新入生と接していた。
「君いいね!→センスあるね!→入部してください(誠実なる土下座)」はたぶん多くの2年生がやる動きだと思うが、そこに根拠をひとつまみ添えてあげるだけで、威力が爆増すると考えている。
センスがある・・・つまり、スイングの軌道がインサイドアウト?回転数の多い弾き方ができている?まで言及し、賞賛を正面から受け取れるように加工するのである。
・対話の機会を確保する

これは個人の関係構築術というより、チームメンバー同士の関係構築をサポートする技術である。
関係構築において、時間の共有は必須である。ある程度は一緒に過ごさなければ、仲良くなりようがない。ところが、チームメイト同士が共有する時間を計ってみると、意外と多くないのである。
例えば、週1のチーム練習3時間、月1のリーグ戦4時間のチームがあったとする。

というのが難しい
A君と他の対話機会を持たなかった場合、1ヶ月に3×3+4=13時間しか時間を共有していないことになる。コミュニケーションはもっと希薄で、下手すると合計10分あるか分からない。
これでは流石に、仲良くなるもクソもない。同じユニフォームを着ているだけの他人である。
ではどうすればよいのか。
簡単なことである。機会を増やせばよいのだ。
メジャーなのは練習後の夕食だろうか。そこで2時間でも時間を共有するだけで、雑談する機会を持てる。他愛もない話が関係性を著しく向上させる。
他にも打ち上げやBBQを企画してみたり、文化祭に出店してみたり、旅行してみたり…学生は機会はいくらでも作ることができる。
面倒な幹事仕事も、チーム強化への貢献と思えば取り組みやすいかもしれない。間違いなくその行動は、チームのコミュニケーション強化に寄与しているから自信を持っていただきたい。
私の話をすると、しばしば車を出して部員を送迎しているのは、車内での何気ない会話を重視しているからである。
別に自分は会話に入らなくてもよい。部員同士がしょうもない雑談で爆笑しているサマをミラー越しに眺めているだけで、代表冥利に尽きる。
・無意識の仲間はずれを防ぐ
メンバーの関係構築サポート術をもう1つ紹介する。
普段の練習会で、1分でもいいからレーンを外れて、体育館あるいは公園全体を眺めてみてほしい。
何も違和感がないなら、それは練習会が健全か、あなたの目が「仲間はずれ」を見落としているか、いずれかである。

意図なく1人だけレーンに入り込めていない人がいたら、声くらいはかけてみよう。それが新入生やチームメイトなら尚更である。ひとこと「打席立つ?」と投げかければよい。
あなたの少しの勇気というか思い切りで、相手の練習満足度が大きく変動する。練習の狭間で、少しでいいから俯瞰的視点でチームメイトを観察してみてほしい。
わざわざ書いているのは、上のピクトグラムのような残酷な状況を、ここ1年以内の関東で複数回見かけているからである。自チームの練習を顧みることを強く推奨する。
>一見、仲間はずれに見えない構造に要注意
関東のとある練習会で見かけた光景で、思わず口を出しそうになったシチュエーションがあったので紹介する。

残りの上級生はずっと練習
なんと全くトス上げに参加しない部員がいる。容認されているのか…としばし愕然とした。
仮に事前の同意なくこの状態が生まれているなら、とても健全とは言いがたい。青い人に負担が集中しすぎだからである。
新歓や育成は尊ぶべき投資だが、それなりの手数と時間を献上する必要がある。その負担を少人数に強いるのは、実質的な「仲間はずれ」と定義できる。少なくとも私はそう考えている。
対策は(言動の手数としては)難しくない。そういう状況を見かけたら「変わるよ」と進み出るのである。あるいは初めから分担を決めておいてもいい。~時15分までは君、15分からは俺、という具合である。
ただそもそも、このマズい状況「気付く」かどうかは、あなたの日頃からの視点の高さに依存する。自他を、チームを俯瞰視する癖がついている人ほど、リスクの種に気づきやすいのではと推察する。
まとめ
あらためて、チームを成功させるための「型」を振り返ろう。

チームを強くするための方法が「技術論の共有」のみだと考えているなら、その考えには肉付けをオススメする。
技術論の共有は、段階でいえば第2~3段階の話である。その前にやることがあるよ、という話を本項で書き殴ってみた。
関係構築から上手くいっていないチームが、長期的に成果を出し続けるのは不可能と断じてもいい。どこかで歪みが生じてチーム存続の危機を迎えるのは、過去あまたのチームを見ても明らかである。
どこまでやれば関係構築?
目が痛くなるくらい「関係構築」と書いてきたが、これを “健全に” こなすのが重要である。
「馴れ合い」になってしまっては勿体ない。傷の舐め合いは短期的には心地よいが、長期的に見てメリットが少なすぎる。
関係構築の基準は「相手に改善要望を、気兼ねなく言えるか」である。
―さっきの言動は改善すべきだと思う。○○だから。
―ごめん、教えてくれてありがとう。言わないように気をつける。
これを遠慮なく言える関係である。どうだろうか、先は長いと感じただろうか。
でもあなたは、既にいくつか武器を持っているはずである。本稿でなくてもいいから、健やかで充実した人間関係を築き上げるため、あらゆる知見を武器として扱ってみるとよいだろう。
おわりに
ちなみに、私が示した3段階と似たようなことを主張したフレームワークがあるらしい。せっかくなのでごく簡単に紹介する。

素晴らしいチームを作るためには、このサイクルが重要だという。まるで私がパクったみたいな・・・。この学説には、95%同意する。
私は本稿で、敢えて結果には言及しないことにした。これを段階の1つに加えてしまうと、結果が上手く出なかったときドツボにハマってしまう。
キャップ野球は実績を出す機会もそこまで多くないし、まだ「その場の運」によって結果が大きく揺れ動くスポーツでもある。結果前提、成功前提の不安定なプロセスよりも、まず堅実な道筋を示したかった。
久しぶりに正当派に近い文を書いて脳がショートしそうである。
かつて嫌われ者だった私も、意識ひとつで“ある程度は”世を忍ぶことができるようになった。打算的に見えるかもしれないが、コスパの良いテクニックはつまみ食いしておくに越したことはない。
ぜひあなたも、デパ地下の試食コーナーばりの貪欲さをもってチーム構築のスキルを身につけ、強い組織を作ってみていただきたい。
私もチームを新設して半年、まだまだこれからの気持ちで頑張ります。
