斜陽の関東を見て思うこと
多くの大学生にとって、キャップ野球など所詮、サークル活動のうち1つに過ぎない。バイトは忙しいし、兼サーもしてるし、恋人やゼミ同期と旅行に行きたいし、文系は3年生になったら就活しなきゃいけない。キャップ野球は嫌いじゃないけど、あくまで行きたいときに行く。
世間的にはこの姿勢が標準である。界隈に両足を突っ込んでしまって、世間と隔絶している人々は、努めてこの視点を持っておく必要がある。
あなたがどうこう言ったところで、人の生き方は簡単には変わらない。
ところが、ひとたび自分がサークルを率いる立場になると、これをすっかり忘却してチームメイトを「変えよう」とする人が現れる。もっと練習や試合に来い、真摯に競技に取り組め、バイトっつったって24時間やってるわけじゃないだろ、空いてる時間見つけて素振りくらいしろ、せめて事務仕事くらいやれ。少しはサークルに貢献しろ。
そしてこの「矯正グセ」はエスカレートする。少し経って、自分の指示がうまく守られていないと感じたとき、より細かい部分が気になって仕方なくなる。珍しく練習に来たと思ったら、転がった蓋を取ってくれない、飲み会でポテトを独占していた、だらしがない、こんな奴は後輩に悪影響だ_____!
もう、おしまいである。意思疎通が不十分で、何の関係性も築けていないうちに厳しく統制しても、誰もあなたの言うことなんか聞かない。人間そこまで単純ではない。
逆の立場なら直感的に分かるだろう。自分があまり重視していないコミュニティであれやれ!これやれ!と言われても、あーはいはい(鼻ほじ)となるのは必定である。ただ、上のようなハリボテの統制を強いて失敗しているケースを、私はいくつも知っている。
高校生たちは、よく覚えておいてほしい。将来君たちが、キャップ野球に関わらず大学生の団体に属したとき、傍輩のモチベーション管理がいかに簡単でないかを思い知るはずである。
さてこの、いわば「敵」になってしまったチームメイトが、別に必要ない人材なら話はここで完結する。むしろ早く、違うコミュニティに流出して欲しいとすら願うのかもしれない。
が、これが逆パターン、つまり「必要な人材なのにうまくいかない」なら悲惨だ。今から書く話は鼻かみ程度には使えるんじゃないかな。
広がるノンモチベの輪
他人をモチベートするのは、特に「サークル」という緩~い前提のもとに立っているこの競技では、容易ではない。
当然ながら、この傾向は有志より「大学チーム」に顕著に見られる。頭数は揃っているケド・・・ガチ勢のあなたからすると "イマイチパッとしない" 同僚。
各チームごくひと握りのガチ勢が、"なぜか" ついてこないチームメイトに苦慮しながら、あるいは半ば諦めながら競技に打ち込んでいる。もともと優勝を激しく渇望していて、いわばガチ勢の端くれだった筆者としては、最近の関東にこういうチームが増えたなと感じる。
敢えてストレートに問題提起するが、関東にはモチベートがうまくいっていないチームが多い(関西は知らんが)。
ガチ勢はチーム内で、じわじわ少数派になって孤立しつつある。
ガチ勢がしばしば強い有志に流出したり、実力あるメンツだけ集めて大会に出たがったりするのも頷ける。 “聞き分けの悪い” チームメイトと格闘するより、高いモチベと実力を維持しているチームでプレーに集中する方が、短期的コストは格段に低い。
逆に、受け容れるチーム側としても、自らモチベートして自前生え抜きの上位プレーヤーを生み出すより、よそで溢れているガチ勢を拾ってきた方が育成はラクである。口うるさく練習しろと言わなくたって、ガチ勢は勝手に練習する。サステナブルではないが、当座を凌ぐ方法として乱用されるのは理解に難くない。いわばwin-winなのだ。
筆者の印象ばかり話しても説得力を欠くから、関東リーグ1部の面々でも見てみよう。

順位は詳しく知らないが、湘南、世田谷、横国、砂嵐、三田、東大。大学純正の横国・東大以外は、ガチ勢が移籍先に選びがちなチームである。
ガチ勢は特定のチームにつぎつぎ集って先鋭化し、満足するまで競技に打ち込む。取り残されたノンモチベ集団は、それを大して気に留めず、他に興味を見出して界隈から離れていく。
この段落だけ切り取れば、別に悪くない未来だ。お互いが短期的にやりたいことを探った結果、違う道だったということである。さようなら。
筆者はめんどくさい男だから、ここまで書いてきて「ガチ勢」の定義をしていないことが気になっている。自分はエンジョイ勢だから関係ないね~と逃げを打つ読者もいそうで、やや釘を刺しておきたい気持ちはある。
ただまあ、そういう人は「エンジョイ」という言葉を都合の良い逃げ文句にしているだけで、自分から他者を適切にモチベートするつもりのない人だから、何を書いても響かない。しょうがないかな。
この前、誰かの発言でハッとさせられた言葉がある。あまりにも筆者の思想と対極を行きすぎていて。ニュアンスだが再現してみよう。
すぐ大会で勝ちたいなら、強い人と連合すればいい。逆に新入生を増やすのは、いってしまえば「お荷物」を増やすようなもの
発言の主が誰だったかド忘れしてしまったが、ニュアンスは否定的だった。要は、ガチ勢がみだりに固まることを憂いての発言だと思う。筆者も同感である。
そして、上述の文章をもとにこの言葉に肉付けをすると、ひとつ理屈が通る。
強い人と連合し、新入生を置き去りにするのは、モチベートからの撤退なのだ。うまくいかないから、ついに放棄するという意味である。
・・・
。。
、
それでいいのか?
筆者は、読者のあなたを「変えよう」とは思っていない。そんな説得力は生み出せないし、他者を変えようなんて、考えてはいけないとすら思っている。まあ、変えようとして悉く失敗してきたから、もう懲りたってのが正直なところだが。
力不足ゆえに、ただ現状についてボヤきたいことをボヤいているだけである。でも、変わらなくてもいいけど、これだけは書いておく。
自チームを強くしようよ。あなたがリーダーの1人になって、チームを強くするんだよ。人を正しくモチベートして、育てて、組織が花咲いたときにはじめて、一人前になれる。ひと味ちがう喜びを得られるんだよ。
その点では、筆者もまだまだ半人前だ。前所属の三田メンツのほとんどは初めからモチベがあったし、後からモチベを上げていった人も、なんか知らないうちにキッカケを掴んでいた。品川サーペンツも、もともとモチベが約束されている集団だから、筆者がどうこうという話ではない。
でも常に、人のモチベを下げないよう、上がる契機を横に添えられるように考えているつもりではある。あくまで横に置いておくだけ、それを取るかは本人次第だと思っている。取ってくれたら嬉しいな~の気持ちで。
他人を「変える」には
先述したが、基本的に他人は変えられないというのが筆者の考えである。でも、モチベートって要は「ノンモチベ状態▶モチベ状態に変える」ってことじゃん。矛盾してない??
ここが説明不足だったので、補足しよう。厳密には他人に「変わる」ことを働きかけることはできる。結果としてこの人、変わったな~となる瞬間もなくはない。ただし、過程を踏まないでいきなり、無理に変えようとするのはほぼ不可能ということである。どころか、しばしば逆効果をもたらす。

変わろうと思わないと変わらない
挨拶とか敬語とか、一部の例外を除いて、筆者はチームメイトに「○○しなさい」と言わないようにしている。方法論とか、重要な考え方を共有することはあっても、強制はしない。各々自分で考えて、必要だと確信したものを、収穫できる位置にあらかじめ植えておくのが筆者の役割である。
結果として収穫してもらえない理論もあるかもしれないが、それもまた人生。それ以上の踏み込みは、いわば洗脳である。思考を奪っていて、逆に本人のためにならない。
単純じゃない。言って変わるものでもない。かといって何もしなくても変わらない。人間は難しすぎる。
品川の高校生たち。君たちがもし、仮に大学時代もキャップ野球に打ち込むなら、たぶん(少なくとも初めは)実力面で世代を引っ張る存在になる。そのとき、他人に健全な働きかけができる人になっているといいなと思う。
君たちが上級生になる頃には、私はもう界隈にいないかもしれないが・・・せいぜい頑張って良いチームを作って、飲み会で聞かせてよ。
なんやねん、結局持論の押しつけやんけ!と思う人に、現実的な見解も示しておく。
想像できる未来、協会は移籍系のルールをますます厳しくしていくと思う。大学生は大学純正じゃないとダメ!みたいな極端なことを言い出す可能性だってある。上手くいけば、その方が(いろいろチームがあって、散らばってる方が)広報的においしいし、協会の実績になるからね。
筆者はあいにく、外部への広報にはほぼ興味がないので、「広報のために○○しろ!」という全体主義に呼応しようぜ!とは思わない。でも、レギュレーションには適応しなきゃいけない。1人のプレーヤーとしてね。
それにそもそも、よそからの移籍組で戦力補充しているチームは、長期的観点で、新歓を続けているチームより明らかに劣後する。組織面でも、単純に戦力面でも。
組織面は言うまでもない。特に大学チームは、自前選手が生えてこなかった時点でサークルとして終焉する。大学という特殊な繋がりを活かせる形態ではなくなり、あとは有志化するしかない。もはや別チームとして。
有志チームも、関係性の近い人ばかり入れていたら高齢化は免れない。社会人になってしまったら、もうほとんどは衰退間違いナシだ。松浦さんみたいな例外もたまーーーにいるけど。
次に戦力面。長く界隈にいる選手ほど、弱点も傾向も掴みやすい。新しい選手が入らないチームは、選手が固まっていて予想もつくし、弱点を突けるバッテリーさえ用意すれば簡単に転がせてしまう。情報オタクの筆者としては、未知なる脅威との戦いこそ最も避けたいものである。
筆者は、チームにおける「新歓と育成」こそ、勝利を目指すうえで最大出力を狙いやすい択だと考えて取り組んでいた節もある。
そして、新歓とも育成とも切り離せないのが、モチベートである。
妥当な働きかけとは
さて、ではどうすれば、効果的で正当な働きかけができるのだろう。これは筆者も日々手探り、場合によっては苦手な活字にも手を出してなんとか身につけようとしているが、いまだ掴めずにいる。
ので、自分で頑張って探してね♡ だとあまりに不親切だから、筆者がいま時点で心がけている意識を3つほど共有しておこう。
・まず雑談より始めよ
結局、長く在籍したいと思うコミュニティは人間関係が優れているのだと思う。ハーバードかどこかの80年くらいやっている研究で、ヒトが幸福を感じるのは人間関係であると結論づけたという話もある。なんでも統計に当てはめるつもりはないが、実感としてあなたも感じるのでは?
人間関係構築のコツはいろいろある。分かりやすい手本が欲しいなら、垂井か佐藤学あたりが相応しいだろう。
筆者は、人間関係の根本にあるものは相互理解だと考えている。その第一歩として、キャップ野球に関係のない「雑談」は非常に有効だった。過去の経験からも、好きなものの話からも、その人となりが分かってくる。
この姿勢は三田時代、まだルーキーだった原川から学んだ。蓋の話以外あまりしなかった筆者と対照的に、原川はルーキー同士なんだったか面白そうな話をしていて、良いねと言ったら「小杉もやればいいじゃん」と返ってきた。ああ確かに、と得心したのを覚えている。
お題はなんでもいい。部活、大学の話、出身地、ゲーム、恋愛、旅行、野球、酒・・・最初は義務感で仕方なく仕掛けるつまらない雑談でも、聞いているうちに自分の知見も広がってきて、純粋に雑談を楽しめるようになるかもしれない。
やっぱり楽しいコミュニティじゃないと、必要以上に関わろうとも思えない。逆に、いろんな話を気楽にできて、承認してもらえる組織には貢献欲も湧いてきやすい。
あなたにとって興味がある/ないの話なんかしていない。興味を持つんだよ。チームメイトの好きなことには。
・感謝はくどいほど声に出す
こんな当たり前のこと!?と思ったあなた、この界隈は感謝を伝えない界隈だよ。個人主義だと揶揄されているチームは気をつけることです。あなたたちのことを言っている。
感謝は発声して伝えないと、意外と伝わっていない。最初は無償の愛でも、感謝されているのか不明な状態がずっと続けば、モチベーションも漸減してくる。言うまでもない。
ちょっと動画を共有してもらったでも、ウィルキンを貸してもらったでも、ちゃんとお礼を言うことが大切。それも「うっす」とかではなく、「ありがとう」としっかり。意識してみると、声に出すべき機会は日常にありふれている。これは筆者が、母方の祖母から教わった姿勢である。
感謝することは、全く恥ずかしいことではない。むしろ健全な人間関係構築のためには外せない主役だろう。
・受容と共感
これは、会社でお世話になっている先輩に繰り返し教えられた姿勢である。後から考えてみると、モチベートの姿勢に共通しているなと感じたので書いてみた。
どんなに親しくても、他人の心情を完璧に見通すことはできない。だが、その心情に寄り添い、共感の意を示すことは、不可能ではない。
「なるほどね」「確かにね」と、いったん受容してみる。その理論が正しいか正しくないかなど、どうでもよい。正しさなど、所詮あなたが今までに集めた、偏見のコレクションでしかない。
まず受容し、共感し、他人がなぜそう考えるのか見極める。あなたにとっては理解しがたい理屈でも、彼らの心中では市民権を得ている考え方だ。 真っ向から否定したところで、事態が好転しないことは明白。
否定から入るなど、決してあってはいけない。あなたに実力と発言力があるなら尚更。「それはセンスないね」などと言われて喜ぶ人はいない。他人をモチベートしたいなら、自己肯定感を下げるような言動はご法度である。


ちなみに筆者もまだまだ未熟者なので、理屈づけて他人を批判してしまうことはよくある(特に立場が上の人には)。生まれながらの性格の悪さは、意識しててもすぐには改善しないねー。
例えば、遠回りを容認する
1つ例を紹介してみる。
あなたは実力ある大学生で、キャッブ野球において何が強く、何が合理的かを心得ている。そんなところに「関節投げをやってみよう!」という下級生が現れたとする。
一般的に見て、関節投げはメジャーな投げ方ではない。試してみると分かるが、リリースの感覚が弾き投げとは全く違うし、変化球のバリエーションを生むのも難しい。一朝一夕でモノになるとは、正直考えにくい。あなたは弾き投げだから、アドバイスもできない。
でも今、後輩が関節投げに興味を示している。あなたは止めますか?
筆者は、こういうとき大抵容認する。よし、やってみよう!と言ってしまう。他人の興味は誰にも抑制できないからだ。
繰り返すが、人は他者を変えられない。人が真の意味で「変わる」瞬間があるすれば、自分自身で危機感か、あるいは猛烈な興味を持ったときである。
押し付けの情報は、たとえそれが合理的であっても耳に逆らう。場合によってはモチベーションを著しく削ぐことになる。俺はこの投げ方がしっくり来てたのに!あの先輩はわからず屋だ。あ~あ、こんなサークルつまんねーわ。おしまい。
とりあえず、試してもらう。もしかしたらコツを掴んで、関節投げなら森下氏を彷彿とさせる名投手になるかもしれない。そう考えれば必要な投資だ。
あるいはもし、モノにならなくても、経験は無駄にならない。関節は自分には合わない・・・と認識できれば、他の投げ方に移行するかもしれない。試行錯誤は成長への必要なプロセスだ。
のびのび研究してもらいつつ、必要な情報をそっと横に置いておく。彼が関節投げに限界を覚え始めたとき、すぐ軌道を変えられるよう用意しておく。あるいは、一緒に関節投げに触れてみて、有識者から知見を集めてみる。
筆者は、モチベートは連続的な機会提供によって成り立つと考えている。
ひとつ忘れてた
書いていて思い出したので追記する。大前提、他人をモチベートする人は、自分がモチベーションを失ってはいけない。モチベを振り撒くモチベモンスターとして、チームに無限のやる気を共有するのが、あなたの役割だ。
筆者は精神力が弱い方で、些細なことであらゆるモチベーションを紛失してきた。キャップ野球も、何度辞めようと考えたか?数え切れない。
そんな人、筆者と同類の人、でも他人をモチベートしたい、強くないけど欲張りな人。ひとつ筆者の主義を書いておく。
モチベがないときほど練習に行く
下級生のモチベは、あなたが管理できる。必要に応じて叱咤し、激励し、引っ張れる。でもあなたのモチベーションは、誰も管理できない。自分で管理するしかないのだ。
あなたが事切れてしまったら、この物語は未完の大作のまま打ちきりになる。それが嫌だと思うなら、重い体に鞭打って、這ってでも練習会に行こう。一度足が遠のくと、もう行かなくなるよ。
「無事是名馬」という格言がある。能力が多少劣っていても、怪我なく無事に走り続ける馬は、疑いようのない名馬である。
モチベーターであるためには、途中離脱なんてしてる暇はない。本懐を達成するまで、やりきったと言えるまで、「無事」でいることが何よりの価値である。

モチベがなくなった?
なら(?)練習に行こう。
うーんおわり
もっと体系的、論理的にこの話題を深掘りしたかった。精神論じみているのは分かっている。共感しにくいかもしれない。
でも、他人を率いて何か成し遂げようと思ったら、モチベートは避けて通れない道だ。好きなキャップ野球で、少しだけでも訓練しておくのは、悪くないんじゃないかな。
人間、特に学生時代にキャップ野球に興じる余裕のある、上流階級のあなたは、どうせ人生のどこかでリーダーシップを取ることになる。その "どこか" が、家庭なのか、職場なのか、地元の自治会なのかは分からない。そのとき後悔しないようにするために、今から備えておくんだ。
あなた1人だけで出来ることなど、限界がある。周囲の力を借りたいタイミングもあるはずだ。そんなとき、振り向いてもらう力を身につけるには、キャップ野球界隈は絶好の環境だ。ぜひ強いチームを、自ら作ってもらいたい。
最後にまとめとして、キーワードを書いておく。モチベートしたい人にむけて発動させてみるのも一興。責任は持たないけど。
・相互理解は大切!雑談しよう
・感謝はクドいくらい口に出す
・常に受容と共感の姿勢を持つ
繰り返す。筆者はあなたを「変えよう」とは思わない。あなたが将来「変わろう」と思ったときに、一歩目を踏み出しやすいようトラックを描いておくのみである。
関東では、チーム主義が緩やかに衰退している。筆者もいつか有志偏強、アンチチーム主義の波に飲み込まれて死んでいくのかな。
