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仕事手放し、リシケシへ

「インドに行ってみたい」
ここ数年密かに温めていた想いである。
親しい人たちには打ち明けていたものの、打っても響かずとはまさにこのことという感じで、どれだけ説明しても「行きたくない」とバッサリ断られていた。

海外経験がなく、英語も話せない私にとって、一人インドの壁は高すぎる。
かといって、会ったことがない人が主催しているツアーに飛び込むほどの熱意はない。
想いは募れど、何もしないまま時が流れていった。

しかし、機会は突然訪れる。
通っているヨガスクールの先生から、少人数のヨガリトリートを企画していることを知らされたのだ。
「インドは、行けると思った時が行く時です」
想い続けているだけでは叶わない、先生の力強い眼差しに後押しされ、インド行きと最終出社日を決めた。
2026年1月のことである。

私はインドに呼ばれたのかもしれない。

そう考えたのも束の間、インドに行くためにはハードルが3つある。

  1. パスポート取得
    これは当たり前ではあるが、敢えて記しておく。
    私の場合期限が切れていたため、再度取得する必要があったが、マイナンバーカードのおかげで申請から取得まで、かなりスムーズに行うことができた。

  2. インドビザ(e-Visa)取得
    私のミスによって手間が倍になり、先生にもご迷惑をおかけすることになってしまった。
    Application StatusがGRANTEDに変わるまでの間、本気で「私はインドに呼ばれてなんていなかったんだ!勘違い野郎め!」と頭を抱えながら過ごすことになる。
    よく、人生に行き詰まってインドに行きました系の話を聞くが、インドビザを取得する気合いがあるのであれば、全く詰んでいないだろ!と声を大にして言いたい。
    というか、本当に詰んでいたらまず申請できないのではないかと思う。
    私が申請した時点でも、入力や確認が必要なページが8ページくらいあった気がする。
    感じ方は人それぞれというのが大前提であるにしても、入力項目の多さ(全部英語)と顔写真とパスポート画像のアップロードの面倒臭さ、さらに支払いでも気が抜けない。
    支払い完了後も数日待たされ(人によるようだが)、たとえ申請が通らなくても申請料は戻ってこない。
    なぜこんな思いをしてまで自分はインドに行きたいのだろうか、と何度も考えたし、「だからよせばいいのに」という身内からの哀れみの視線を痛いほど感じた。
    そして驚きなのは、あんなに大変だったのに、もうところどころ思い出せないことである。
    苦しかったことや辛かったことをいつまでも詳細に覚えていたらやってられないが、もしまたインドに行く機会を得た時、同じように頭を抱えている自分の姿だけは容易に想像できる。
    本当に情けない。

  3. インド入国カードのオンライン申請
    他の参加者の方に助けていただき、問題なく申請できた。
    入国審査時に提示を求められたため、コピーを持参しておいて良かった。
    内容をきちんと確認していたのかは不明だが、事前に申請しておいたことによる安心感がかなりあった。

この3つは出発前には完了している必要がある。
インドビザの審査待ちの期間荒れ狂っていた私は、同じような境遇の人を探すべくブログなどを読み漁っていた。
その中で、誰かが「インド旅行は日本にいる時から既に始まっている!」的なことを言っていて、人生に行き詰まってインドに行きました系の人は行き詰まっていない説を確信に変えていったわけである。

そもそもなぜインドなのか。

理由は単純で、ヨガを学んでいて、本場をこの目で確かめたかったから。
ヨガとの出会いは8年ほど前になる。
きっかけは「健康になりたい」というありふれたものだったが、いつしかその効果の虜になり、ヨガに関してはスクールに通って資格を取得した。
修了後、ヨガを教えたいという気持ちは特に芽生えなかったが、自分の身体と心が良い方向に変わっていくのは実感していたし、かつておざなりにしてしまった「学び」に再び取り組むことの楽しさも感じた。

しかしそれと同時に、ヨガ関係者からの本場信仰のような空気も強く感じていた。
それはいつしか、「インドに行ったことがない・行けない自分」というレッテルを自分自身に貼ってしまうことになる。
本場での学びがどれだけ素晴らしいものなのかであったり、「インド自体が先生である」といった話を見聞きする度に、「インドに行ったことがない・行けない自分」という思いは膨らみ、何とも言えない気持ちになっていた。

これは私の捻くれた性格がそう思わせているのだと信じたいが、インドに行ったことがあるという人が醸し出すあの空気感、優越感というか自慢気な雰囲気は何なんだろうか。
悔しいが、眩しいし羨ましい。

そのため、今回のリトリートの話を聞いた時、「今しかない!行くのは私だ!」と思った。
インド入国のためにはビザが必要だなんて知らなかったため、ほぼ即決ではあったが、やはり金銭面のことは気がかりだった。

無職になることは決まっていた。

ここまで書いてきて、まるでインドに行くために仕事を辞めたようになってしまっているが、仕事を辞めるが先である。

仕事は好きだった。
やりがいを感じていたし、人間関係も良好であったし、給料にも満足していた。
ではなぜ辞めることになったのか、転居によって物理的に通えなくなったからである。
仕事の性質上、在宅勤務は不可能であったため、家族や職場の方たちとも充分に話し合った上で、退職を選択することにした。

転職活動をして切れ目なく働くことも考えたが、一度きりの人生、「無職」と名乗ってみるのも面白いのではないか、と考えてしまった。
また、度重なる引越しによってモノの断捨離を行なっていた私は、「仕事を手放す」ことへの憧れもあった。
そして、仕事を手放しインドに行くというのは、なんだか面白いぞ、とも安易に考えてしまったのである。

そうしてインドに降り立つことになる。
リシケシにあるヨガアシュラムを中心に、1週間という短い期間の滞在ではあったが、人生観までは変わらなかったものの新たな気付きを得て(帰国直後に会った人たちには、少なからず前述の「インド経験者」の空気を出してしまっていたに違いない)、現在元気に無職をしている。

これから、そんな日々の暮らしや感じたことなどをここに書き記していこうと思う。


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