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イクニ初心者による『輪るピングドラム』感想


2020/11/18-2021/2/24 dアニで観た。

最終話を観終えた直後に書いている。
考察サイトなどはまだ一切見ていない。

初めてのイクニ作品。
いちばん評価が高く(?)、いちばんわかりやすく初心者向きである(?)という話を聞いて観た。

まず1話を観て思ったのは、作家性が凄いな、ということ。ものすごく個性的。
モブを紙切れにするとか、場所移動ごとに挟まる改札カットとか、回想の電光掲示板カットとか、普通のアニメではまぁ見られないだろうなという独創的な演出がてんこ盛りで、こりゃあ腰を据えて観なきゃあかんぞ……と居住まいを正された。
また、アニメーションとしての快楽を追求しているな、とも思った。「そこが動いているのを見るのが楽しい」という感覚をこちらにもたらしてくれる。
そう思ったいちばんの例は、生存戦略〜♪の変身バンクのあとに、ひまり(憑依)が高いステージから、兄2人のいる低い舞台まで、背骨みたいな階段を一歩一歩降りてゆくシーン。あそこで、一段降りる度に、ステップに設置されている2本のバー?みたいなものが左右にウイーンと開いて、足の踏み場を作る。
正直言って、そんな細かいところわざわざ設定して描かなくても何も問題ないだろう。でも、あそこが、ひまりが一段下るごとに、ガシャン…ガシャン…と開いてゆくのを観て自分はめちゃくちゃ感動した。感動というか、めちゃくちゃ"気持ちよかった"。

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↑ここ

別に、これを観るまで、そこが動いてほしいだなんて思ってはいなかった。でも、そこが動くのを見た瞬間に「そう!!!そこが動いてほしかったんだ!!!」と遡及的に思わされた。これがアニメーションの快楽である。

他にもアニメーションの快楽を感じられた要素として挙げなくてはならないのが、3匹のペンギンたちである。正直言って、これらペンギンたちがいなかったら私はピンドラを最後まで観れていたか分からない。私にとってピンドラは「ペンギンのコミカルな動きを楽しむアニメ」といっても過言ではない。

ペンギンたちは、それぞれが憑いている(?)冠葉、晶馬、陽毬の横で、彼らの行動や仕草を真似したり、全然カンケーない下品なことをしたりする。言ってしまえば、このペンギンたちの動きだって、作画コストをいたずらに爆上げするだけで、話の筋にはほとんど関係ない。というか人物たちがシリアスなことをやっているのにそれをペンギンズが変に茶化していて邪魔だと感じるひともいると思う。

でも、自分にとってはペンギンズがいてくれて良かった、シーンごとに笑わせてくれて本当にありがとう、という気持ちでいっぱいだ。作画コストを上げてまで、シリアスシーンが台無しになる危険を犯してまでペンギンの挙動を最後まで描ききったのは、もちろん作品テーマに連なる高尚な意義などはあるのだろうが、自分にとってはそんなことよりも単純に「画面を眺めていて楽しい」というアニメの根源的な快楽を刺激してくれたのがいちばんでかい。

キャラについて。
普通に本作の美少女キャラの陽毬と苹果ちゃんが好き。苹果ちゃん、前半はヤバい奴だけど、ヤバい奴であればあるほど魅力的。(元デレマスPとしては三宅麻理恵さんこんな役もやってたんだ……という観点からも聞いてしまう。)陽毬はストレートに愛らしい。おでこピカーン
あとはそんなに、キャラデザでも人格でも特段好きなキャラはいないかな。
あ、早くすり潰さないと…の娘忘れてた。あの子敵キャラのポジションな割にコミカルなシーンが序盤から多いので、敵対していても緊迫感は無かった。
後述するが、それはこの作品全体にも言える。

ストーリーについて。
1話でいきなり美少女妹がスピード死して破天荒なシナリオだなぁと思ったが、「ピングドラムを手に入れるのだ」というミッションが与えられてからは結構のんびり大筋は展開していった印象。苹果ちゃんとタブキ先生と女優のひとの三角関係云々が長かった。そんなに嫌いではなかったけど。
あと地下鉄サリン事件をこんなに露骨に出すんだーというのは驚いた。もっともーっと暗喩チックに忍ばせるのかと思っていた。(もともと誰かの評で、ピンドラはサリン事件をモチーフにしているというのは知っていた。)

好きな回、というか印象に残っている回は、陽毬が中央図書館空の孔分室に行く回(9話)。あの回がストーリー上でどんな意味があったのかよく覚えてないけど(トリプルH/ダブルHの過去回想はエモく哀しかった)、あの図書館の画、「カエルくん〇〇を救う」という書名の本がズラーッと並んでいる壮観なシーンを見せてくれただけで満足。みんな大好きバベルの図書館。

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終盤の展開は端的に言って意味がわからなかった。エヴァTV版の最終話観たあとみたいなポカーン状態だった(さすがにあそこまでではないけど)。最終話で唯一感動というかテンションがあがったのは恒例の生存戦略変身バンクのロングver.のところだけだった。

なんか運命を乗り換えて、あの3人が(擬似)家族ですらなく他人になって、それでもぬいぐるみに入っていたお兄ちゃんからの手紙が泣き所で……というのは何となくわかるが、何となくわかる程度であって、まったく感動も泣きもしなかった。
「あっ、ここが多分泣き所だ!ここで泣けなきゃここまで24話観てきた意味がなくなる!涙腺!どうしたんだ緩めよ!涙腺〜〜〜〜!!!」と必死に訴えかけたが、徒労に終わったことに泣けた(泣いてない)。マジで2クール目のシリアス展開辺りからまったくお話に乗れなかった。ペンギンたちによるコミカルな動きしか楽しみどころがなかった。

イクニ作品、何もかもが苦手なわけではないが、シリアスは苦手でコメディは好きなのかもしれない。(でもすり潰さないと女のお爺ちゃんのギャグ回みたいなのがめちゃくちゃ好きなわけでもない。あくまで人間たちが真剣に何かやってる横でふざけているペンギンたち程度の塩梅がちょうどいいのかも)

なぜシリアス展開がノレなかったのだろうと考えたときに、ピンドラは「演劇っぽい」から、というのはあるかもしれない。それはどういう構図の画にするかという画作りの観点もそうだし、台詞が大げさだったり、展開が大げさだったり、演出が過剰だったり、愛や運命という抽象的で大きなテーマを扱っていたり……これらを「舞台っぽい」というタグでまとめていいのかはわからないが、作中で演劇が扱われていることを除いても、そうした要素が多いように思われる。

その演劇っぽさの全てが苦手なわけではない。コメディ・喜劇的な演出に使われるのは許容できるような気がする。生存戦略〜♪の変身バンクとか毎話楽しみにしていたし。変身バンクが来るたびに画面の前でいっしょに歌って踊っていた。(そういや「きっと何者にもなれないお前たちに告ぐ。ピングドラムを手に入れるのだ」「「あれっ、あれっ、あれーっ!?」」辺りの"お約束"シーケンス感も舞台っぽいのかな。舞台っぽいって何?反復性?ゴドーはそうだけど……)

自分が大好きなアニメとして挙げる岡田麿里脚本の現代青春群像劇……「あの花」や「凪あす」などは、上に「演劇的」要素として挙げたようなものとは真逆である気がする。地に足が着いているというか、現代思想のタームや知見を用いてなにか高尚な批評が出来るようなテーマ性を持っていずとも、若者たちの「しょうもない」がゆえに切実な人間関係のドロドロしたいざこざを観るのがいちばん好き。マリー作品以外で挙げるなら、今期のイチオシである「ワンダーエッグ・プライオリティ」もまた、画も雰囲気もキャラの感情や関係、仕草や台詞のどれをとってもリアルで、ファンタジー世界のバトル要素はあるんだけど地に足が着いている空気感がめちゃくちゃ好み。(「まどマギ」っぽいと言われているが、まどマギが好みではない自分としてはむしろ「よりもい」的な作品として受容している。)

イクニ作品はこれら(マリー、ワンエグ、よりもいetc.)とはおそらく真逆なので、もともと自分の趣味には合わない可能性が濃厚。いちばん見やすいというピンドラでこれならかなーり濃厚。ピンドラはいちおう現代日本のリアルな舞台がテーマなのにこれだから、ウテナとかはもっと苦手かもしれない。

忘れてた!あと主題歌について。
1クールOP「ノルニル」はめっちゃやくしまるえつこだな〜とは思うがそんなに好きじゃなく、何度も聞いているうちにハマってきた。洗脳
2クールOP「少年よ我に帰れ」は初聴から好き。でもスルメ感はノルニルのほうが上なのかな。
EDは……後半はなんか1話ごとにめっちゃ曲変わってて凄いなと思った。


以上。
ちょっと他のイクニ作品にも手を出そうか出すまいか迷っている。
フェミニズム的な文脈で言及されることの多いウテナは気になるけど4クールはキツい……でも信者なので細田守が演出を務めたという伝説の回はどうしても観たい。。。

とりあえずネットに転がっている高尚な批評・感想文を読んできます。


【2022.1.24追記】

ウテナ観ました。3クールですよ





「岡田麿里のこういうところが好き」記事↓



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