バッハの演奏スタイルについて
読者のみなさん、こんにちは。
今日はゆるーくバッハの演奏のスタイルの違いについて述べようと思います。
私が参照している何人かののバッハ弾きを紹介しながら、現代楽器の一角を占めるピアノとバッハとの関係性を検討できれば良いかなと思います。
サー・アンドラーシュ・シフ
まずはバッハといえばこのお方、サー・アンドラーシュ・シフです。
彼のバッハは透明感があり、室内学的な対話性がふんだんに散りばめられていて、品性の高い上質な響かせ方です。
誤解を恐れずに書けば、チェンバロ的なバッハ空間を現代ピアノで再現するような古楽的な要素もある演奏で定評があります。
なぜそんな芸当ができてしまうのかといえば、彼の学習歴にその理由が見出せます。
まずはソ連の女性巨匠(大バッハ弾き)のタチアーナ・ニコラーエワに師事したこと。彼女はゴリデンヴェイゼルの一派であり、明瞭なタッチが個性の弾き手です。ここにもシフの持つ奏法上の性格の「種子」が認められるのではないでしょうか。
そして何と彼は渡英しチェンバロ奏者であるジョージ・マルコムに師事します。
チェンバリストに習い、習ったことをピアノで実現するという、少し特殊な方法でバッハの世界の探索を進めたわけです。
実はシフはシューベルトの作品集をフォルテピアノで録音したり、あとはバッハをクラヴィコードで収録したりと、特に近年古楽への接近をキャリアに具象化させています。
個人的なシフの思い出といえば、フランクフルトのアルテ・オーパーで聴いたゴールドベルク変奏曲の講義付きコンサートです。流麗なドイツ語による説明のあと、ノーミスで素朴にかつ大きなフレーズ感を持ってバッハを聴かせるその姿は巨匠の特権とでも言うべきもので、ティーンエイジャーだった私の目と記憶に刻み込まれています。
コンスタンティン・リフシッツ
次にシフと対照的なバッハ弾きを紹介しましょう。
このアカウントではお馴染みのコンスタンティン・リフシッツです。
動画にもあるように彼のバッハは力強い基音を下地に神秘的な倍音を帯びた、これぞロシアピアニズムの美の極地とでも言うべき演奏です。
リフシッツは主な教育をモスクワのグネーシン特別音楽学校で受けており、彼の教師タチアーナ・ゼリクマンの指導の下、卒業時にゴルドベルク変奏曲を演奏しています。
個人的な思い出としては、東京春音楽祭による招聘でリフシッツのバッハのピアノ協奏曲を全曲演奏するコンサートや、一夜でバッハのトッカータと音楽の捧げ物全曲を演奏するという途轍もないリサイタルが挙げられます。
ピエール=ローラン・エマール
次に紹介するのはフランスの巨匠で、現代音楽の解釈者としても名高い、ピエール=ローラン・エマールです。
彼の演奏は、極めて透明感が高く、独特の光を持つような高音部が印象的です。
私のエマール体験は平均律クラヴィーア一巻の演奏会でした。フランス音楽にうっとりするような時と心持ちが似たような体感で、散りばめられる美音に心揺さぶられました。
他にもメシアンなどを得意としており、彼には難解なものを即座に単純化しそれを演奏によって具現化する能力が宿っているような気がしてなりません。
日本人でも師事したことのあることの多い巨匠ですので、興味がある方はぜひ演奏会に行ってみてください。
他にも、アンジェラ・ヒューイットや、ピョートル・アンデルジェフスキーが現代のバッハ弾きとして国際的な評価を得ています。またいつか詳しく紹介できればと思います。
それではみなさん、良き音楽ライフを〜!
