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『妖精の森』あらすじ紹介

雪深い北の街、ビョルケルに春が来た。この北の土地は、一番寒い時期には大地さえも凍って列車は止まり、夕方には日が沈み、暗い闇の中で雪がしんしんと降り積もる。人が住むには過酷な土地だが、冬の妖精が眠りにつけば、少しずつ明るい春がやってきた。

スノードロップが咲き、冬の間運航が止まっていた列車が再開される。人々は家から出て、冬の間、休んでいた仕事の支度を始める。このビョルケルの領主であり、魔法使いであるシモン・エストホルムは街を見回り、領主の配偶者であるノア・エストホルムは、森と妖精たちの様子を見にいく。彼らの仕事はこのビョルケルの街とビョルケルを取り囲む白樺の森を守ることであった。

妖精や森の生き物は《妖精語》と呼ばれる古い言葉を話す。かつて人も妖精も動物たちも同じ火を囲い、同じものを食べ、同じ言葉を話した。しかし人が人だけの集落を作り、鉄と石炭で街を作った。次第に森の生き物たちを離れていき、人は人だけの言葉を話すようになった。都会の人たちはもう妖精語を覚えていない。現在、ビョルケルのような妖精と暮らす街では、人の言葉と妖精語を適切に使い分けて生活をしていた。

ビョルケルの領主であるシモンは妖精語が非常に苦手で、三年前、白樺の森の主である古い妖精《白樺の王》と領主になるための契約を交わすことができなかった。この契約を結んだのは、シモンの妖精語の補佐のために契約の儀式に立ち会っていた妖精語の通訳のノアである。ノアは妖精語が大変に流暢で、妖精語の翻訳の仕事をしていた。シモンが白樺の王と直接契約できなかった以上、ノアはシモンを領主にするためにシモンと結婚するしかない。妖精は人の区別があまりつかないので、一族を同等の存在とみなすからだ。魔法使いたちは人々と森の生き物を守るために、妖精、動物、大樹、湖、あらゆるものと婚姻をしてきたため、結婚相手に制約がない。しかしノアはただの一般人だ。同性と結婚できないというノアの抵抗むなしく、ノアとシモンは出会って一月足らずで契約結婚をすることになった。
結婚当時は散々に諍い合ったものの、三年の時間を共に生きて、現在二人は大変仲良く、ビョルケルの街で暮らしていた。

去年の秋ごろ、ビョルケルに都会からアルベルトという起業家の男が移住してきた。

彼は妖精と暮らす街に興味を持ち、ビョルケルに観光に来た人たちが妖精と触れ合える観光ツアー会社を興そうとしていた。独身の若い男性という保守的な田舎街では倦厭されかねない立場でありながら、アルベルトは冬の間、街の人たちを良く助け、引きこもりだったコニーと言う青年を社会復帰させて自分の部下にし、あっという間にビョルケルの人たちに気に入られるようになった。

妖精と人が触れ合うツアー会社を作るには、妖精を熟知せねばならない。妖精について学ぶために、アルベルトはビョルケルの妖精について一番詳しいノアに度々話を聞きに行った。だがノアは人と関係を作ることが非常に苦手で、自分が一番苦手なタイプの年上の男性であるアルベルトと全く会話にならない。ノアは昔から勉強はよくできたが、相手の表情や身振りから感情や本心を読み取ることができなかった。ほかにも、人の言葉の裏やニュアンスがわからず、嫌味や揶揄いに気づけない。興味の幅が狭く、人との目的のない日常会話に参加することが苦痛で人との関係が続かない。そのせいで全く仕事が続かず、職場での人間関係が行き詰まる度に仕事を逃げて逃げて、たどり着いたのがビョルケルであった。シモンと結婚して、シモンに人との付き合い方を教わり、三年かけてようやくノアは仕事が続き、人と関われるようになってきたところだった。

本来であればシモンの配偶者として適格者ではないノアをアルベルトが気に入るはずがない。ノアも自分の態度がアルベルトを苛立たせていると分かっているが、苦手なタイプを前にするとすぐに泣いてしまう自分をどうにもできない。ノアとアルベルトの間で二人の関係と取り持っているシモンも、折り合いのつかない二人の間で悩んでいた。

アルベルトは妖精のガイドツアーと同時に妖精と人がいつでも触れ合える広場を作りたいとシモンに訴える。アルベルトが広場を作りたい場所は街と森の境目で、森の木を伐採しないと広場は作れない。しかし妖精からも人間からも伐採の許可が下りない。アルベルトは広場を作れば、妖精を目当てにビョルケルに観光に来た人たちが確実に妖精に会え、ビョルケルを気に入ってくれるはずだと説明するが、アルベルトの事業構想をビョルケルの人たちも妖精たちも中々理解できなかった。妖精からも街の人たちからも許可が出ない以上、勝手に森の木を伐採をするなとシモンはきつくアルベルトに言いつけるが、ある日曜日の朝、シモンとノアのもとに、白樺の木が勝手に伐採されているという連絡が届いて……。

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