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『竜の棲む島』あらすじ紹介

温暖な海に浮かぶ白島(ビアンカ)。薄荷色の竜が多く棲み、砂に多く含まれる珪砂で浜辺が白く輝く島には、昔らからヴェトライオと呼ばれるガラス職人とガラス工房があった。

この島のガラス工房の販売スタッフとして、28歳のルカは内地の都会から白島に移住をしてきた。白島のガラスペンに惚れ込んで、ガラスの知識など全くないのに、白島のガラス工房の求人に応募してきたルカを受け入れてくれたガラス工房が一つだけあったからだ。ルカを受け入れてくれたのは、「ウルバーノガラス工房」。皿やグラスなどの食器などの生活用品を作るガラス工房だ。念願のガラス工房に就職できたとルカは喜ぶが、何故、遠くから引っ越してくる必要があり、全くの未経験のルカを採用したのか、ガラス工房に勤めだしてルカはすぐに思い知ることになった。

融通が利かな過ぎて人と揉めてばかりのテオ、積極的に人と関係が作れないクラウディオ、場の空気を読めないトト、朝起きられないので毎日遅刻するニーノ、字が書けないカルロ、家庭環境がおかしくて常識がずれてる二コラ──つまりウルバーノガラス工房は、社長のマルティーノが仕事が続かない社会不適合者を哀れに思って採用してしまったばかりに社会不適合者ばかりが集まったガラス工房だったのだ。人間関係の構築ができる従業員もいるが、この社会不適合者たちのフォローが嫌になって、過去に何人もの販売スタッフ、見習いヴェトライオたちが辞めていった。だからウルバーノについて何も知らないルカを、ウルバーノは縋る思いで採用したのだった。

そんなウルバーノガラス工房のマスターマエストロという、工房を取り仕切る立場で、社会不適合者──もとい人間関係の構築にやや難のある従業員たちを上手にまとめていたは、ヴァレンティーノという男だった。38歳、白島出身のヴェトライオである。

ヴァレンティーノはウルバーノでも白島の誰からでも大変尊敬されていた。ガラス作りに真剣に向き合い、誰のことも見捨てずに根気良く話し合う姿に惹かれて、ルカは10歳も年上のヴァレンティーノに、ある日、プロポーズをした。

ルカは生来、誰にも恋愛感情を持ったことがない。性欲もない。人と付き合ったこともあったが、結局誰にも特別な愛情を持つこともなく、性欲を感じることもなく、関係がうまくいかなかった。それでも一人で生きていくのは寂しい。誰かと支えあって生きていきたい。ルカは性愛を求められることもなく、自分と人間的相性が悪くない誰かを探していた。もうこの際、年齢も性別も気にしない。テオも「ヴァレンティーノには誰か家族ができてほしい」と言っていたし、ちょうどいい。結婚する気がないのなら、自分と一緒に生きていこうとヴァレンティーノにプロポーズしたのだった。

転職してきたばかりで、まださほど付き合いのないルカのプロポーズを一度は断るヴァレンティーノ。しかし本当に一人きりでいいのかとルカに詰められ、ヴァレンティーノは悩む。ヴァレンティーノには結婚しない理由があった。

この白島及び近隣の島と半島には、昔から呪いがかかっていた。島と半島の出身者は元々この土地に住んでいた野生の毒竜を追い払うために、無作為に人が竜になる呪いだ。竜は縄張り意識が非常に強いので、別種のいる土地にやってこない。野生の毒竜と人が成り代わった竜は、時折小競り合いを繰り返しながらも土地を分け合い暮らしていた。ヴァレンティーノは、その呪いを持って生まれた希少な一人だった。竜になったとき、そして人の記憶を忘れたとき。ヴァレンティーノは二度、愛する家族を置き去りにする。そのことが怖くて、彼は今まで頑なに家族を作ろうとしなかった。

しかしルカは誰も愛さないと言う。誰も愛さないのであれば、家族にしてもいいのかもしれない。悩みながらもヴァレンティーノはルカのプロポーズを最後には受け入れた。二人は生活のルールを作って、一緒に暮らしてみようと決意する。

そのことをルカとヴァレンティーノはガラス工房の従業員たちに報告する。少数派でマイノリティで社会不適合者の彼らであれば、二人の奇妙な関係も二つ返事で賛成してくれるはずだと思ったら「少数派の生き方をしたら逆に苦しむ。まともに仕事ができる二人はそれぞれ普通に結婚をしろ」と大反対されてしまい……。

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