第5話|1st Stage 開幕
― 16歳、ライブデビューという通過儀礼 ―
ライブデビューが決まった。
デビュー戦の会場は、繁華街からは離れた場所にあるライブハウス。太秦という地域の商店街の中にあった。現在はカラオケ店になっているらしい。おそらくホールレンタル料金がかなり安かったのだろう。
この企画の主催者が誰だったかは覚えていない。
ただ、このイベントに、のちに京都で伝説を残そうと苦楽を共にする4人が集まっていた。今思えば、すでに何かが始まる前夜みたいな空気があった。
私はベーシストに Y、ギタリストに K、ドラムにKと同じ高校に通う人物を入れ、MR.BIGのコピーバンドでライブイベントのトップを飾った。こちらは私がリーダー。
そして同じ日に、Kのお兄さんをベーシストに迎え、ギタリストにK、ドラムは同じ人物、私がフロントマンで、イングヴェイ・マルムスティーンのコピーバンドを組み、ダブルヘッダーで大トリを務めることになった。こちらはKがリーダー。
また、この日には、
Kのお兄さんの友人である大学生バンド、
そして、のちに HEAT ISLAND のメンバーとなる S が率いるヴィジュアル系のコピーバンドも参加していた。
当時はまだ、
それぞれが別々の場所で、別々の音楽を鳴らしていただけだ。
だが今振り返ると、
この日のラインナップは、私が2nd Stageと位置づけるHEAT ISLAND結成へと繋がる人間関係が
すでに一度、同じ空間に集まっていた日だったのかもしれない。
確か 1997年8月31日
皆にとっては夏休みの最終日。私にとっては、ここまでの道のりが本当に長かったし、本当に嬉しかった。
「やっとライブデビューやぁー!!」という高揚感と、程よい緊張感が交錯する、あの何とも言えない感情。今も思い出せる。
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本番に向けて、スタジオに入った。
まずはMR.BIGのコピーバンドの方。初めて音を出すメンバーのはずやのに、なぜか手応えがあった。音が合っていた……ように思う。いや、気のせいかもしれない。けど、あの時の自分は確かに「いける」と思っていた。
そして、イングヴェイの方のスタジオに入った瞬間、空気が変わった。
ギタリストのKは、当時から完全に技巧派だった。正確に弦を捉える技術と速弾き、スウィープ、8フィンガータッピング。中学時代から使っていたX JAPANのHIDEモデルのモッキンバードから、イングヴェイ・マルムスティーンモデルのストラトキャスターにシフトしていた。スキャロップで指が痛くなるやつ。シングルピックアップに程よい歪みで音抜けが良く、歌っている私のテンションも勝手に上がった。
ドラムも異常だった。ツーバスを息を吐くように普通に使いこなし、音数が多いのに崩れない。
そしてKのお兄さんは、ベースで速弾きをする強者だった。低音のはずなのに前に出てくる。存在感が強すぎる。
正直、この時ふと思った。
「……こんなメンツの中で、フロントマン務まるんか?」
その不安を、Kのお兄さんの一言が一瞬でひっくり返した。
「めっちゃええやん!」
たった一言。
でも、その一言で胸の奥の不安が溶けた。先に現場を知っている人間からの、嘘のない肯定。あれで覚醒したのかもしれない。
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そしてライブ当日が来た。
会場に入る。店の方に挨拶をする。各バンドのメンバーが、いわばライバル達が続々と集う。
私は中学の頃からあまり素行が良くなかったのは3話・4話でご存知かと思うが、この日は何か喧嘩が始まるようなテンションになっていたのかもしれない。「最初が肝心や!」と言わんばかりに。完全に若さとイキりであるꉂ🤣w𐤔
リハが始まった。順番は覚えていない。
ただ、当時からギタリスト S の音作りが凄かったのははっきり覚えている。Kのような技巧派ではないのに、その空間を支配する説得力があった。バンド内も彼の指示で動き、PAにも注文を付ける。高校生とは思えない。Kのデビュー戦の時とは印象が違い、当時から東京やその他の地域でライブ経験を持ち、自然と経験を重ねていたのだと思う。
この瞬間、私は「物の見方、考え方を変えよう」と思った。スキルアップを目指す感覚が、確かに芽生えた。
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開場。出番が来た。
ライブデビューの1曲目は、MR.BIGの 「Daddy, Brother, Lover, Little Boy」。
今でもColorSingでリクエストされたり、リスナーの推し曲に入っている。歌い出す度に当時の感情にフラッシュバックして、ロック少年に戻れる気がする曲だ。
MR.BIGの持ち時間30分が終わった。ホールには各バンドの友人らの歓声と拍手。
ライブハウスの外に出ると、出番を控えているバンドマン達が「お疲れ様~!」と声をかけてくる。勝手にライバルを意識していた自分が恥ずかしい。
そして、ライブハウスのマスターからの一言。
「歌、上手いな!」
その横にいた、少し化粧が濃いお姉さんからは「この先メジャーデビューする人?」なんて言葉も飛んできた。
ただCDを流して、それに合わせて歌ったりギターを弾いたりしていた男が、ステージの上で空間を支配する側に変わった瞬間だった。
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その他のバンドのライブは観る事なく少し休憩してから大トリへ。
この当時から私は人に興味が無く、協調性が無かった。どこかで自分より歌の上手い奴なんて存在しないと思っていたのだろう。全く謙虚さが無い。今の私が当時の私に出会う事があれば、間違い無く一本背負いでもしてやろうかと思う今日この頃。ꉂ🤣w𐤔
……まぁ女の子がメンバーに入ってるバンドの演奏はじっくり観ていたのだが。
そして大トリのステージへ。
イングヴェイのコピーバンドはメンバー全員、装いを黒で統一。
1曲目は 「Rising Force」 からの、曲終わりで 「Liar」 に入る構成だったのを覚えている。
楽しかった。
ただ、このバンドは明らかに私が主役ではない。ギターソロになれば目線は全てKにいく。私の歌は届いているのか?
「おーい!皆、注目ᐕ)ノ」状態である。
フロントマンの存在を消し去るぐらいの存在感がKにはあった。
この頃から技巧派ギタリストアレルギーがあったのかもしれない。
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ライブは無事に終わり、その後に中華料理屋で打ち上げをした記憶がある。
達成感と次への希望。
そして、世界ツアーに旅立つ切符を手に入れたような、夢のような1日だった。
この日、私は二つのことを知った。
ステージに立つことの楽しさ。
そして、自分はまだ何者でもないという現実。
でも、それでよかった。
ここからが、私の音楽人生における1st Stageの本当の始まりだった。
続く
