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『彼岸過迄』を読む 28 田口吾一は何故田口吾一なのか?

 田口要作の娘に田口千代子と田口百代子がいて、長男に吾一がいる。ここには何かアンバランスなものがある。

 結論から言ってしまえば、吾一が生まれる前に一人死産があったか、生まれて間もなく亡くなったのではなかろうか。

 一、、百、千の、十が欠けているからだ。それだけで一人の人間を殺してしまうのはどうかと思うが、ここに例えば「十之助」の死があればうまくバランスが取れる。これは作中に全く書かれていないことだ。

 それにしても田口吾一、タグチゴイチという名前は落ち着かない。音の響きは良くないが、それでもどうしても「五」と「一」を現し、「十」の不在を強調しようという意図がありありと見える。


[余談]

 田川敬太郎が森本宛に送った手紙は、宛名が「大連電気公園内娯楽掛り森本様」といい加減だったから誰か別の「森本」が受け取ったのではなく、田川敬太郎が状袋に自分の住所氏名を書かなかったので、結果として宛名不明で戻されることもなかったのではなかろうか。

 読み直してみると確かに田川敬太郎が状袋に自分の住所氏名を書いたとは書かれていない。書かなかったとも書いていない。

 さて、どう読むか。















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