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『彼岸過迄』を読む 4359 作中人物の設定②「田川敬太郎」

田川敬太郎

 田川敬太郎。法学士、就職活動、探偵を経て、田口要作の斡旋で職を得る。出身地不明。学生時代は起業家を目論んでおり、当時流行の冒険譚にちなんで「蛸狩の田川」と呼ばれていた。成績はそこそこで、中学校の英語も怪しいところがある。

 須永市蔵からは「田舎者」と呼ばれるので、京都、大阪、横浜あたりは出身地候補から外れると考えられる。森本との会話から、北海道、四国も外れそうだが、どこという特定には至らない。会話にはあからさまな方言は現れない。年齢不詳。須永市蔵と同輩なら二十五六と推定される。下町生活にはなじみがないが、江戸式の若旦那、須永市蔵のような少年時代に憧れている。

 身体は頑丈で、体格は良い。漱石作品における体格と性格の相関関係の例にもれず、「間の延びた調子」を持っている。しかしマメでもあり、風呂では体を手落ちなく洗う。頭を石鹸でごしごし洗うのでそう長髪ではなさそう。作中、「二重瞼」は森本の形容にしか使われないため、逆に田川敬太郎は一重瞼のように印象付けられる。

 遺伝的な浪漫家。(父親、あるいは父方の家系に浪漫家がいたと考えられる。作中では父親は浪漫家というより、迷信家のように書かれている。父は方位九星に詳しい神経家であった。)異常に対する嗜欲が強い。世間並みの道徳心と徳義心の持ち主。どちらかと言えば猫派。

 お酒は強くないので顔が赤くなる。しかし何かストレスがあると飲んでしまうタイプ。喫煙者で霧島を吸っている。肉が好き。(宝亭ではアラカルトと思われるも、肉料理を二皿注文している。) 鰻の蒲焼はタレが甘ったるくても平気。絵や盆栽は解らない。詩や哲学や理屈を嫌う実際家。

 一定以上の年齢の男性に関しては年齢の判断が曖昧になるという特性を持つている。

 小学校時代、馬に蹴られて土堤から下へ転がり落ちた事がある。不思議に怪我も何もしなかった。以来、頭の中に怪しい色の雲が流れ込むという奇妙な体験をしており、その雲は今日に至るまで抜けきらない

 田舎に母親がいる。妹は嫁いだと思われる。「(妹が片づいて、)母一人残っている」と書かれている。ほかの家族については曖昧。父親は死んだとはされていないが、母親だけが残されている。特に女性と交際している気配はない。ただし女性経験はあるものと考えられる。(臨時費の請求や、田口要作との千代子を巡る処女云々の会話からそう推察できる。)女好きは確かで、当初は千代子にただならぬ興味を持っていた。本当は千代子を探偵していてたまたま松本恒三がそこに現れた。千代子と松本恒三が分かれる際には「男を捨てて女の先途だけを見届けたかった」が我慢した。ストーカー気質がある。コートの下の肉体を想像する程度の助平である。

 田舎には田地を持ち、毎年決まった金が得られるので下宿代等には困らない。学生時代から洋食屋に出入りするなど比較的優雅な生活を送っている。
 本郷台にある賄い付きの下宿の三階の部屋に二年半前、つまり学生時代から住んでいる。常に三田線にばかり乗っていた。東向きの窓からは上野の森が見渡せ、眺めが良い。
 歌留多が不得意。妙なタイミングで相槌を打つことがある。







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