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岩波書店『定本漱石全集』注解を校正する90 夏目漱石『行人』をどう読むか②

懇気に


 三沢は焦烈ったそうな自分の顔をなお懇気に見つめていたが、やがて「じゃ話そう」と云った。

(夏目漱石『行人』)


 岩波はこの「懇気に」に対して、「当時としても普通には見られない表現」としている。

佐吾七猶懇氣に堪ず。水菅と責擊事を問果さんとるをを。開樂少時待ねと制じつなんちこのぞんなとひさごしちこたへわれさきこゝろうかゞぎふ。實實汝汝此女を知らざるやと問けれだ。

綟手摺昔木偶 上 柳亭種彦 著||高畠藍泉 訂||柳川重信 画||尾形月耕 縮図隆港堂 1888年

◎孤獨者喜びあり◎懇氣に病む者は助かり◎勞れに病む人は死すべし。

夢判断 稚川 著||康節 叢輯||中文書院編輯局 訳北上屋書店 1906年

 などの用例がある外、漱石の書簡に「あなたは能く懇氣にあれ丈の仕事をなさいます感心の至です」と使われている。
 むしろ「洋食屋」の注解に現れる「それ以外にもシチュー、オムレツ、ミンチエッグ、コロッケ、グラタン、カツレツ、スープなどが親しまれていた」とある説明の中の「ミンチエッグ」が国立国会図書館デジタルライブラリーの中に一つも見つからない。スコッチエッグのことだとは思うが、記録に残らないとはどういうことなのだろう?

今から顧みると

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