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株主提案できる内容とは?

 私はこれまで誤読は「書いてあることを読まない」「書かれていないことを付け足す」というパターンから生じることを繰り返し説いてきました。

 例えば夏目漱石の『こころ』の冒頭、鎌倉での海水浴で「私」の水着は書かれていません。何を身に着けていたのか分からないのです。むしろロジックからは全裸のように思えます。ここに書かれていない水着を勝手に付け足すのは誤読です。Kという呼称は養子に行く前後で変化がないので姓ではないでしょう。文章はある程度ロジックで読まなくてはなりません。しかしこの程度のことが案外伝わりませんね。島田雅彦はKを幸徳秋水、またはキング、天皇だと書いており、高橋源一郎は工藤一(石川啄木)だとしています。恥ずかしい話です。

 文學だけではなく法律でも同じですね。書いてあること、書かれていないこと、つまりマイナスされていることにも注意して読んでいく必要があります。いわゆる実用現代文というやつですからさらにロジックには正確さが必要です。会社法では「株主提案できる内容について」以下のように規定されています。


一定の事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。次項において同じ。)【303条】

 なるほど、でも、一定の事項では何のことか分かりませんね。次に、こうあります。

株主は、株主総会において、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。次条第一項において同じ。)につき議案を提出することができる。ただし、当該議案が法令若しくは定款に違反する場合又は実質的に同一の議案につき株主総会において総株主(当該議案について議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の十分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の賛成を得られなかった日から三年を経過していない場合は、この限りでない。【304条】

 これもまだ何だかわかりません。株主総会の目的である事項とは具体的には何を指すのでしょうか? それを理解するためには株主総会の本来の目的を確認する必要があります。

株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。【295条】

 これでしょうね。まずは株式会社に関する一切の事項と考えていいわけです。ところが二項にこうあります。

前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。

 ここで範囲がぐっと狭められましたよ。「一定の事項」→「株主総会の目的である事項」→「株式会社に関する一切の事項」→「この法律に規定する事項及び定款で定めた事項」となりました。

では定款の一部変更なら何でも提案になるのでしょうか?

一見適法な定款変更議案の体裁を満たしている場合には、適法な提案として扱わざるを得ないのが現実です

 なかにはこういう意見もあります。しかしこの人は、ネットニュースでしか株主提案の事例を確認していないようで、具体的にどういう提案がボツになっているのかということを知りません。本を買うお金もないのでしょうか? いえ、おそらくネットニュースで十分だと思い込んだのでしょうね。専門家気取りなのに。知らないのにこれだけ偉そうに書けるマインドの強さには感心しますが、専門家ならちゃんと事例を精査して勉強したうえで発言してもらいたいものです。↓ 安いですよ。

 野村HDに対する株主提案では、形式的には定款の一部変更のように見えても、内容が業務に直接関わる部分になると見事にボツにされています。これはつまり逆に言えば「どうでもいいような、一見業務とは無関係のような定款の一部変更」でないと採用されないということです。無論これは一企業の判断ですが、企業ごとに独自の判断ができるという事例でもあります。

一見適法な定款変更議案の体裁を満たしている場合には、適法な提案として扱わざるを得ないのが現実です

 ……などいうことはないのです。いいですかみなさん、会社法の中で「株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項」が途中でマイナスされている流れが見えていますか?

一定の事項」→「株主総会の目的である事項」→「株式会社に関する一切の事項」→「この法律に規定する事項及び定款で定めた事項

 ここ、流れ的に組織、運営、管理がマイナスされていますよね。で、定款だけ残された。このロジックが見えていないとお話になりません。例えば部課長制を廃止してフラットな組織に変更したいとか、目標管理制度を取り入れるべきだとか、不動産ローンに力を入れるべきだと言えば、これみんな組織、運営、管理の問題でマイナスされた部分ですよね? マイナスされちゃった部分を頭の中で勝手に足しちゃってませんか? それ誤読です。

 違いますか?

 違うという人がいてもいいんですが、これは法律の解釈と運用の話なので、ネットを漁らないで、役所に直接確認しましょう。お金がある人は本を買ってロジカルに読む勉強をしてください。

















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