見出し画像

蟹と応挙のまち・兵庫県香美町:6

承前

 応挙の弟子たちが描いた残り10室について、1階の東側から南側、さらには2階へと、順番に所感を述べていきたい。

大乗寺 円山派デジタルミュージアム


◆「
藤の間」 奥文鳴
 応挙「山水の間」床の間のすぐ裏手。独立した部屋というより廊下の途中で、こんなところにも絵があるのかと驚いた。円山派お得意の、画面端の縦横をいっぱいに使った長い長い蔓の表現となっている。

◆「鯉の間」 円山応瑞
 鯉だけでなく、亀もたくさん描かれている。大乗寺の山号は「亀居山」。この部屋は池に面しており、池が室内に取り込まれるイメージ。

◆「狗子の間」 山本守礼
 犬っころの部屋。師・応挙に比べると顔つきがくどい気はするが、ともあれ、かわいい。竹に犬で「笑」という見立てもあるそうだが、より大きく描かれるのは梅のほうで、意図されたものかは不明。

◆「禿山の間」 呉春
 当時は蕪村の高弟だった、呉春による一室。文人画の描法が用いられ、毛色が著しく異なる。中央に坐せば、高山にいだかれて圧巻であろう。「狗子の間」から遠まきに拝見。

◆「仙人の間」 秀雪亭
 いわゆる「群仙図」。畳には炉が切ってあり、かつて茶室として使用されていたとか。その影響で劣化が進み、絵は見づらい。

◆「使者の間」 山本守礼・亀岡規礼
 山河を馬で往く男性を兄・守礼、舟で採蓮する女性を弟・規礼が描く、兄弟合作。「仙人の間」から拝見。

◆「農業の間」 呉春
 代掻きから収穫まで、1年間の農作業が描かれる。「禿山の間」と同じ呉春の作だが画風が異なり、蕪村の没後に応挙の門に入り、新味を加えたさまがうかがえる。玄関の正面にあり、訪問者が最初に出合う絵。

     *

 唯一、拝見が叶わなかったのが、この建物の中心である「仏間」。
 仏間は廊下と接しておらず、かならずどこかの部屋に入り、重文指定の襖を開けて通らなければならない。「禿山の間」や「使者の間」のように、遠まきに見るのもむずかしい。
 「孔雀の間」でガイドさんが襖の開閉を実演してくれた際にちらっと見えたが、薄暗く、開口部が広くなかったこともあって、絵は確認できず。

◆「仏間」 円山応瑞 ※未見
 この部屋の主役はやはり仏像で、絵は添え物といった趣。それでも、最も重要な部屋を割り当てたあたりに、嗣子・応瑞へ向けた応挙の期待がみてとれる。

 ——ここまでが1階。
 2階に関しては「ご興味のある方は別途」とのことで、迷わず声をかけた。
 うっかり拝見せぬまま帰ってしまう人も多そうだが、まだ芦雪の絵に出合えていないことを、わたしは忘れていなかった。(つづく



いいなと思ったら応援しよう!