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フランス映画と焼きナス、マニキュア

今日は1日で、1日といえば映画の日。

わたしは布団の中で、ふと「目黒シネマ」のことを思い出した。


今日は何を上映しているんだ?と本日の上映作品を調べると、ゴダール作品2本立て。主演はアンナ・カリーナ。


フランス映画なんて、長らく観ていない。ちょっといいじゃないの。なんか今日はそういうの、観たい気分かもしれん。


現在時刻は、朝8時30分。


11時と14時過ぎ、どちらの時間から映画を観ようか、布団の中で思案する。


今から朝食を食べて洗濯物を干し、身支度を整えれば11時開始のほうに間に合いそうだ。

そうと決まればすくっと起き上がり、軽いストレッチをする間にお湯を沸かし白湯を飲み、チーズ乗せパンの焼き上がりを待つ間に洗濯機をまわす。そう、女はマルチタスク。


パンをかじりながら洋服のコーディネートを考え、
マニキュアもしたかったけれど乾かしている時間はなさそうだと諦める。


電車の時間まであと45分。

そう思って食器を洗っている時、昨日八百屋で買った小ぶりのナス7本が目に入る。

ナスが、7本ある。


どう食べるか。



焼きナスにしたら夕飯のちょっとしたおかずになるなと思い立ち、突如フライパンに7本のナスを並べて火を入れる。

焼きナスは熱いうちに皮をむくのが大切だけど、7本の小ナスの皮を電車の時間までに剥き終えることはできるのか。

いや、もう火は入れているから後戻りはできない。

化粧下地を頬にのばしながら、ちらちら小ナスの炙られ具合をうかがう。焦げた匂いがしてきたらば、フライパンとナス皮との接地面を変える。仕上げのリップを塗り終えたころ、ナス皮全面に程よく焦げが回った。

フライパンに、焼きナスの蛹。

わたしは出発タイムリミットの5分前、つまり5分間だけ、ナスの皮剥き用の時間を捻出する。

炙り上がった熱々の子ナス7本中、皮を剥けたのは3本。残り4本については帰宅したら剥いてあげるとしぶしぶ諦め、小走りに駅に向かう。


道すがら右手の人差し指の腹がヒリヒリするのを感じる。軽症の火傷だ。ナス皮に負傷させられた。



15分ほどの休憩を挟みつつ、1本目、2本目と続けさまにアンナ・カリーナを堪能する。スクリーンの中の彼女は、右手で男と抱き合いながら、左手で煙草をふかしていた。


彼女のくるんくるんと変わる目の色や目線について、帰りの山手線で思い巡らす。


2本立ての映画。


わたしが娼婦だったような気もするし、ストリッパーだった気もする。ひとりの女の、一瞬や一生を思う。ふくふくとした、笑い出したいような気持ちがこみ上げてきて思う。アンナ・カリーナっていい役者だったんだな。



思い巡らすうちに新宿駅に着いた。乗り換える。あ、帰ったらすぐに残りのナス皮を剥こうっと。右手の人差し指を、親指でこすってみる。まだ少しヒリヒリした。

帰ってすぐ、冷たくなったナスに取りかかる。想像どおり剥きにくい。冷蔵庫に少しだけ残っていた白ワインを飲みながら、残り4本もなんとか剥き終える。


疲れた。
もう焼きナス食べるのは、明日でいっか。



早めにお湯をはる。



湯船に浸かりながら自分の腕、指、胸、へそなどを見る。そしてもう一度アンナ・カリーナを思い出す。女って。体の中の真ん中あたりがキューとなる。


今夜はマニキュアを塗らなきゃいけない気がする。ナスに負傷した指先をみる。

にんまり。色は赤。


2020年頃。目黒シネマのプログラム。
プログラムやチラシはファイリングして残すのが趣味。

(おわり)


最後までお読みいただきありがとうございました。この記事は2020年頃、まだ東京にいた頃かいていたブログをnoteに移管しました。

目黒シネマ、いい映画館で大好きです。出張で東京に行くときは今も、プログラムを確認し、行けるタイミングがないか狙っています。


わたしはこういうものです。エッセイ中心に書いています。お時間があればいろいろ読んでみてくださいね!


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