七福神シリーズ|毘沙門天【猛特訓のジャブと鋭く光る緑の腕】
今日は、毘沙門天のもとに一匹のキリギリスが弟子入りにやってくるお話。
静まり返った境内で、今日も毘沙門天の気合の入った声が響き渡る。
鋼の鎧を揺らし、槍を振るい、己を追い込む。
滝のような汗が流れ、肩で激しく息をするほどの厳しい稽古だ。
「ふぅ……。筋肉が悲鳴を上げてきたな。だが、これが心地よい」
腰を下ろし、手近な草の葉で汗を拭おうとしたその時――
一匹のキリギリスが、ひょいと顔を出した。
「毘沙門天様、なんて、お強いのでしょう。
私も……私もそんな風に、誰にも負けない強い虫になりたいのです!」
細い手足を見つめて震えるキリギリス。
その小さな瞳に宿る真剣な光を見て、毘沙門天はニカッと豪快に笑った。
「よぉし、いい根性だ!
ならば、この俺が直々に特訓してやる。ついてこい!」
こうして、前代未聞の「神と虫」の猛特訓が始まった。
ジャブ! アッパー! フック!
神のスパルタ指導が火を噴く
「いいか、まずはジャブだ! ジャブジャブ!」
「はいっ、毘沙門天様!」
「次は下から突き上げるアッパーだ!」
「はいっ!」
「フックだ! もっと腕を伸ばせ!
獲物を逃さない鋭さをイメージするんだ!」
照りつける太陽の下、キリギリスは何度も転び、泥にまみれながらも、
毘沙門天の激に必死に応え続けた。
「もっとだ! もっと腕を振り抜け!」
何万回、何十万回と虚空を切り裂く特訓。
その果てに――。
「おい、お前……手がえらいことになっとるぞ!」
毘沙門天の声に、キリギリスがハッとして自分の腕を見る。
そこには、かつての細い手の姿はなかった。
猛特訓の末に鍛え上げられたその腕は、
まるで鋭い刃物のように太く、力強く、
獲物を一瞬で仕留める“カマ”へと進化していた。
「お前はもう、ただのキリギリスではない。
その腕で悪を断つ、勇ましき『カマキリ』だ!」
毘沙門天が小さな肩を叩くと、
カマキリは誇らしげにファイティングポーズをとってみせた。
そぅ、――
弱気だったキリギリスに戦う勇気を教えた武神は、
その熱血指導で、草原の最強ハンターという誇り高き姿を授けた ――というお話。
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