七福神シリーズ|祈紙(いのりがみ)編 【山吹色の厨房】
特別なことじゃなくていい。毎日の当たり前が、打ち出の小槌で生み出した最高の宝物!
チリーン、
チリーン、チリーン、
祈紙(いのりがみ)が、大黒天の手元に。
「ほっほっほ、こりゃまた賑やかな願いじゃな。やっと、久しぶりの出番がきたぞ~」
大黒天は頭巾をかぶり直し、打ち出の小槌を手に目を細めた。
祈紙(いのりがみ)は、願いの重さをそのまま色に映す。
強ければ濃く、深ければ深く。
手元に届いた色は、小槌のように輝く「山吹色(やまぶきいろ)」。
毎日を大切にしたいという温もりと、変わらない日常の豊かさが混ざり合った色だ。
「五十代の料理人……。なるほど、いつもの仕事に追われながらも、そこに宝物があることを忘れている者の祈りか」
五十代 料理人 マサシさんの祈紙
マサシさんは、和食の調理人として毎日厨房に立ち続けていた。
仕込み、調理、片付けと、毎日同じことの繰り返し。
「最近、お客さんの食べ残しが増えてきたな。なぜだ?」
「俺の作り方がまずいってのか?それとも、量が多すぎるのか?」
毎日忙しく働いているのに、ふと自分の仕事に迷いを感じていた。
チリーン、
チリーン、チリーン。
「30年もこちとら、包丁、握ってんだ!俺の料理のどこが悪いってのさ!」
——その時、打ち出の小槌を持った大黒天が、豪快な声を響かせた。
「ほっほっほ、マサシさんや。宝物は遠くにあるものじゃないぞい!基本の「基」じゃ!それこそが、お前の打ち出の小槌で生み出した最高の宝物じゃ!」
マサシさんは翌日の仕込みのために、包丁を研ぎ始めた。
いつも通りの作業だけど、ふと気がついた。
目の前にある昆布。
「あ!?」
俺、出汁作るのに、味見をいつからしなくなった?
——そうか、いつもの味を丁寧に届けること、それ自体が一番すごいことなんだ!
それなのに、俺は怠ってた!
お客さんは、出汁のまずさに気づいてたんだ!
ちくしょー!俺、何やってだ!のぼせ上ってたぜっ。
「あー神様、気づかせてくれてありがとうよ!」
天界で大黒天は、打ち出の小槌をポンと振り、満足そうに笑った。
「そうそう、それじゃ!毎日を大切に!一番の福の神じゃぞい!」
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