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タッチパネルの自動販売機がなくなって未来を感じた話

全面タッチパネルの自動販売機があった。カメラがついていてユーザーの年齢や性別を判定しておすすめを表示したり、アプリのサブスクを利用してドリンクを購入するサービスまであったらしい。
ワイドショーでも取り上げられていて画期的だったし、何よりカッコよくて未来を感じるこの自販機が僕は好きだった。売り切れの商品が少し薄くなっていて、従来の自販機よりもわかりやすいと思える箇所もあったのだが、画面の遷移にわずかながらも時間がかかることが通勤シーンに合わない、メンテナンスコストもかかる、そもそも本体も高いということもあったらしく、数年でほぼ全てのタッチパネル自販機は撤去されてしまった。そして、従来の自動販売機に置き換えられていった。
僕が感じていた未来はわずか数年で元通りになった。

子供の頃の僕は、例に漏れず「未来の車は空を飛ぶ」とか「リニアモーターカーであっという間に日本中を横断できる」と思っていた。しっくりは来ない形だけど徐々に現実になってきてはいる。
僕が子供の頃に熱中したロックマンエクゼというゲームの影響で、小さなパソコンを一人一台持ち運び、それを使って様々なところからインターネットに繋ぐような未来が来る、そして端末の中にある人工知能と他愛もない話をする未来がきっとくると思っていた。それは予想のはるか上をいくスマートフォンと生成AIという形で現実になった。
僕は子供の頃に思い描いてきた未来を生きている。でもあんまりその実感はない。
きっと変化の渦中にいて、徐々に当たり前が変わっていく中で、その当たり前の変化に気付いていないからかもしれない。

たった数年前と比べてみても暮らしの中の些細なことに小さな「未来」はある。
例えば財布を忘れてスマホ一台だけ持って出かけたのに大量の洋服を買って帰ってきたとしても「財布も持たないでどうやって買い物してきたの?」と疑問を持つこともない。
仕事の中にだってAIが混ざってくることも増えた。AIに(細かい部分はぼかしながら)仕事のアイデア出しをしてもらうことに何の疑問も持たなくなってきている。
未来だと思っていたようなことは気付けば当たり前の事になっていた。

さっき自動販売機について「元通りになった」と表現した。でも、ここにも小さな「未来」は存在している。
以前駅の自動販売機は現金か交通系のICカードしか使えないのが当たり前だった。なのに、最近はボタンで選択するとキャッシュレス決済が使えるものが当たり前だ。今お金を払わなくてもジュースが飲めてしまう「未来」にはもうたどり着いている。
そう思ったら、タッチパネルの自動販売機にワクワクしていた自分と、ロックマンエクゼに憧れて、ゲーム内のコンピュータを模したおもちゃで遊んでいたあの日の自分の距離感が近いのか遠いのかよくわからなくなってしまった。


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