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無断転載には鈍感で、生成AIには過敏になるのはなんでだろう?

私は法律の専門家ではありません。自分で条文や文化庁の資料を読んで、自分の理解の及ぶ範囲で理解してきただけなので、細部に誤りはあると思います。

ただ、SNSでこの数年ずっと「生成AI」に対してのSNSでの脊髄反射みたいなものがずーっと引っかかっています。
著作権の話になると、なぜか生成AIだけが特別に雑な言葉で断じる人多くないですか?
しかもその多くは、Stable Diffusionの学習や生成の仕組みを自分で調べた形跡すらないまま、「あれは著作権違反だ」と言い切ってしまうという始末だった利します。
登場したばかりの時代ならまだしも、もう何年も経っているのにいつまでもこういった理解で居ることが不思議でなりません。

そろそろ自分たちが何に批判しようとしているのか勉強した方が良いと思っています。知性ある方たちならせめて何を批判しようとしているのか理解してから批判する順番の方が正しいのかなと思います。

それに、著作権の議論はそんなに単純ではないと思っています。

SNSに上げる行為は、「ただ共有しただけ」ではない

まず前提として、SNSへの投稿は感覚ほど軽い行為ではありません。
文化庁は、ライブ動画を無許可でSNSにアップロードする行為について、原則NGと整理しています。これは「私的使用のための複製」の範囲ではなく、不特定または多数に向けた自動公衆送信や送信可能化にあたり、著作権侵害となる可能性がある、という説明がされています。

推しのライブ動画をSNSに投稿して、ファンの友達と共有してもいい?

さらに、ネットで見つけた画像をSNSやブログのアイコンに使うことについても、「拾い画は無断利用OK」という理解は誤解であり、著作権侵害となる可能性があると明示しています。 

たとえば、ライブ会場で数十秒だけ撮った推しの動画を「感動したから共有したい」とXに載せる行為や、検索で出てきたイラストをそのままSNSのプロフィール画像にする行為はネット上では日常的に見かけます。
けれど、法的には「みんなやっているからセーフ」という話にはなりません。アップロードした瞬間に、単なる保存や鑑賞ではなく、「公に向けて利用した」ことになるからです。

こういった観点で見ると生成AIを使うとか使わないといった次元の話ではなく、SNSは著作権違反者のオンパレードですね。

こんなの凄いですよね。無断転載もいいところです。
それなのに、なぜかコメントでは「懐かしい」、「ありがとう」といった話であふれています。

アニメの切り抜き、漫画のコマ画像、拾い画アイコン、イベント動画の断片。そうしたものは日常の景色として流通しているのに、生成AIになると急に「違法か合法か」を大声で叫び始めるのが、まず不思議でなりません。

「著作権侵害に対して怒っている」のであれば、こういった明確な無断転載にこそ怒るべきではないでしょうか。

なんとなく「自分が気に入るものはOKで、気に入らないものはNG」ってしてませんか?と思ってしまうのですが、SNS上には賢人であふれているはずなので、きっともっと高尚な判断基準があるのかなと思います。

「公式がOKしている」は、単なる黙認とは限らない

また、権利者が利用条件を示している場合と言うものもあります。
文化庁は、ゲーム実況について「原則として権利者の許諾が必要」としたうえで、多くのゲーム会社が公式ガイドラインや利用条件を設け、その範囲で利用を認めている場合があると説明しています。
実際、任天堂も、個人である利用者について、非営利を原則に、一定条件のもとで動画や静止画を投稿できると公式ガイドラインで示しています。 

「ゲーム実況」で実際のゲームの映像を動画に使ってもいいの?

こういった権利者がガイドラインを公開し、そこで許可の範囲や禁止事項を明示しているなら、その範囲では「許諾に基づく利用」として利用させていただいているにすぎません。
著作者がこういった事を明確化していない作品をアップロードする行為は違反である場合が多いです。

権利者が自分の著作物の使われ方を条件付きでコントロールしているわけですね。

じゃあ、なんで違法なのに、無断転載なのに罰されないの?実質セーフってことじゃないの?と思う人もいるかもしれないですが、基本的に著作権は親告罪だからです。
そして著作権侵害については、原則として告訴がなければ公訴を提起できませんが、権利者には差止請求や損害賠償請求といった民事上の手段があります。文「訴えられなければ実質セーフ」というほど単純な話ではありません。

SNSに無断転載をして、「今」何も言われなくても、裏で著作者が情報を収集して裁判の準備をしている、という事も当然考えられます。

生成AIは、(少なくとも現時点では)「使った時点で違法」ではない

では、生成AIはどうかと言う話です。
新しい技術が好きではない、自分の既得権益を揺るがす技術は好きではない、という感情論の話はおいておいて、少し整理してみたいと思います。
あなたの感情は感情として立派な判断基準かもしれないですが、法律的にはどうなのかと言う話です。

文化庁の整理では、AIの学習データとして著作物を収集・複製するといった情報解析目的の利用は、著作権法30条の4の対象になり得ることもあるでそうです。

https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/pdf/94037901_01.pdf

資料内では、著作物に表現された思想や感情を人が享受することを目的としない利用について、原則として著作権者の許諾なく行うことが可能だとされています。AI学習は、この「情報解析の用に供する場合」の代表例として明記されています。(もっとも、著作権者の利益を不当に害する場合は除かれる、という記載もされています。具体的に影響がある場合はNGという事ですね)。

ここを見ないまま、「学習に著作物を使っているのだから違法だ」と言い切るのは、少なくとも日本法の整理とは噛み合っていません。

もちろん、文化庁のこの考え方、捉え方は現時点での話であって、特定の生成AIについて確定的な法的評価を行うものではないとも明記しています。最終的には個別事案ごとの判断です。

ですが、それでもなお、「学習に使ったら即違法」と断定するのは、現在公表されている公的整理からは論理の飛躍がありすぎるように思います。 

また、いろいろ不思議な点として、「すべての学習を禁止」と言う話になると、私たち人間が絵の練習をするときの模写も禁止になってしまいます。
模写した内容をSNSにアップロードして公開したら問題ですが、学習だけであれば問題ないはずですよね。学習して、練習して、その結果違う絵を私たちが書く(出力)のであれば問題にならないはずです。

ではこの出力についてみてみましょう。

本当に問題になるのは、生成物の「類似性」と「依拠性」

文化庁は、生成AIによる生成物であっても、通常の著作権侵害と同様の基準で判断されるとしています。
すなわち、既存著作物との「類似性」と「依拠性」が認められ、かつ権利制限規定の対象外である場合には、著作権侵害となり得ます。他方で、類似性または依拠性が認められない場合は、既存著作物の著作権侵害にはならない、という風に整理されています。

生成AIが好き、嫌いはさておき、まぁそうだよなぁという話だと思っています。
たとえば、ある作家の一枚絵を見ながら、「この構図、この表情、この衣装、この塗りをほぼそのまま再現して」と指示して、出てきた画像も実際にかなり近いなら、問題はAIだから発生するのではなく、既存作品への寄せ方が強すぎるから発生するという事ですね。
反対に、特定作品の表現上の本質的特徴を直接感じさせるほど近くない生成物まで、一律に「AIだから侵害」と言い出すなら、それはもう法律の話ではなく、感情の話です。

そして文化庁は、AI生成物についても「類似性」はAIを使わずに制作されたコンテンツと同様に判断されるとしています。
つまり、AIだけに別の物差しがあるわけではありません。
人がアナログで書こうが、デジタルで書こうが、AIで生成しようが、判断の軸は結局「手で書いたか、AIで書いたかという過程ではなく成果物」となります
(当然個別事例ではあると思います。著作権ではなく、名誉毀損みたいなケースにつながることもあるとは思います)。

生成AIだけを「特別扱い」する議論に違和感があるなぁという話

SNSに無断転載された画像や動画が日常的に流通していることには特に何も言わずに、それどころか無断転載のアイコンであふれているような惨状なのに、生成AIだけは仕組みも法的整理も確認せず「違法」と断じるといった状況は、著作権を大切にしているようでいて、実は著作権をかなり雑に扱っていると思っています。

特定のキャラクターを勝手にアイコンとして利用して、ネガティブな言葉を投稿していれば著作権侵害ですし、名誉棄損にもつながりかねませんからね。

ここまでいろいろ書いてきましたが、法律の初心者の私では理解できないくらい著作権の世界は面倒な世界だと思っています。

ただ、無断転載は原則としてやっぱり軽くないです。犯罪ですからね。
権利者が条件付きで認めている利用もあるというだけです。2次創作も「見て見ぬふりをしている」か「このガイドラインの範囲なら使っていいよ」という話がほとんどだと思います。

著作者が「AIでの生成は認めない」というガイドラインを提示したら、AIで二次創作をするのはNGというだけの話ですし、もし将来的に手描きで絵を描く人を憎んでやまない著作者が「手描きでの二次創作は認めない。自分の二次創作は生成AIを用いて作る場合にのみ許可する」というガイドラインを作ったらそうなるという話だと思います。
そして、これは「この著作者の権利が及ぶ範囲で」という話ですね。

SNSの賢人たちが毎日行っている、人生の貴重な時間を投じて行っている高尚な議論では「自分が嫌いなものは違法であってほしい」「自分が慣れ親しんだものは見逃したい」感情を「オリジナル著作権」として発表する場になっているように見えて仕方がありません。

生成AIの技術も理解しないで感情だけで話すのはもう世の中に一般的に出回ってから4年以上たつのですし、そろそろ飽きてもいいのでは?と思ったりします。

それにStable DiffusionについてはarXivでもたくさん公開されていますし、解説している記事・ブログなどもたくさん出てきます。

せめて単なる切り貼りしたコラージュではないという事を理解してから出ないと議論もできないのではないでしょうか。
フィギュアスケートの採点のルールを理解しないまま、採点に文句を言う……みたいな井戸端会議以上でも以下でもない、はたから見ていると滑稽なものでしかなくなってしまいます。

別に個人の「生成AIが嫌い」という感情に対してどうこう言うというわけではありません。別に生成AIが嫌いな人は嫌いでいいと思いますし、不買運動も勝手にすればいいと思います。
新しい技術ですし嫌いな人もいると思いますし、自分の生活・技術・既得権益が侵されるとなるといい気分がしない人がいて当然だと思います。

ただ、ありもしない法律をでっち上げて、対象に対して理解もせずに、自分の価値観・好き嫌いの話をそれっぽくするのはいい大人がカッコ悪いなぁと思います。

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