DTOPIA〜デートピア〜
『ゲーテはすべてを言った』と共に芥川賞を受賞した安堂ホセ氏による『DTOPIA』(デートピア)。
これはもうはっきり言って好きか嫌いか大きく分かれる作品ではないかと思う。
暴力や性的な描写が苦手な方にはお勧めしない。
〜どっかの金持ちが美男美女を招集して、南の島で恋愛ゲームを開催する。
から始まるホセワールド。ブラックミックス文学の開拓者と称される彼の作品は、他に『迷彩色の男』を読んだが、肌の色やセクシュアリティを巡る差別を描いた点では『デートピア』と共通のテーマがみられる。

タヒチ北西にあり、『太平洋の真珠』と呼ばれる。
1人のミスユニバースをめぐり、先進国から集められた男達10人が競争を繰り広げる様子が動画配信されるというデジタルネイティブ世代小説。
賞金は20万ドル。日本円にすると約300万といったところか。与えられたプレイ時間内で男達をランク付けし、最終的に優勝者を決める。
10人のうちの1人に日本人が含まれ、彼は物語の中で『おまえ』という呼び名で誰かに鑑賞されている。
こうして並んでみると、おまえの顔はどうしても、他の男たちとは違った。一重の瞼に、エラのはった顎。典型的すぎるぐらいに日本人らしい顔。まるでスタッフの外人が片手間に「日本人ってこんなもんでしょ」って想像したような顔に、視聴者の一部からは揶揄が飛ばされた。
(本文抜粋)
何とも破茶滅茶な展開と性描写に嫌悪に近いものをもよおし挫折しかけるも、『おまえ』と共に物語の中心となっていくモモの存在が物語に引き留める。
モモはトランスジェンダーの象徴ともいえる存在。詳しくは物語を読んでいただくしかない。モモの過去はここには書けないほどゾッとする痛みを伴っている。それは肉体的な痛みでもあるし、精神的な痛みでもある。自分の心を突き詰めるということは時に倫理を超える境地へと繋がるのだろうか。
『デートピア』にしても『迷彩色の男』にしても、こういう小説が書けてしまう著者のこれまでの背景を想像せずにいられない。個人的なことはあまり公表されていないだけに謎に満ちている。
正直、好きな類の小説ではないのに、著者の新作が出たら私は迷わずそれを読んでしまうだろう。なぜだかわからないけれど、不思議な吸引力を持つホセワールド。
2025年3月号の『小説すばる』に「人生は他人を眺めている時間の方が長い?」というエッセイを書かれているようで、こちらも気になるタイトルだ。手に入れるべく、書店へこれから出かけてみよう。
ぼやけた六等星だけど 思い込みの恋に落ちた
初めてプライドの冊を超えて
スピッツ 『渚』
