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【私にとっての自由/Music Video】 lutha noe| 羽根の子の歌 ―大切なものを守る自由―


羽根の子の物語

ある日、森を散歩していると、  卵をひとつ見つけた。

そのそばには、羽根が一枚引っかかっている。

こんなところに、大きな鳥はいただろうか?

私は少し気になって、ときどき卵の様子を遠くから眺めるようになった。


それからしばらくして、
その卵は無事にかえった。

だが、予想に反して、  
出てきたのは鳥ではない。

見たこともない種族だ。

危険かもしれない。

そうして、私は引き続き彼を観察することにした。  
それは、監視に近かった。


新しい世界の空気を胸いっぱいに吸い込むと、  
彼は羽根の存在に気づいた。

何をするつもりだろうか?

おもむろに、羽根をくわえて引きずり始める。

かと思えば、すぐに引きずるのをやめ、  
今度は羽根をくわえたまま高く持ち上げる。

あ、落ちた。

あわてて飛びつき、岸まで引き上げる。

そして、  
少しうなだれて、  
今度は両方の前足で、  
しっかりと羽根を抱えたまま…

座り込んでしまった。

途方に暮れた顔をしていた、ような気がする。

さっきまでのアレは、  
もしかして…?


やがて、  
その子は「立ち上がろうとした」。

…二本足で。

不器用だった。  
とても。

だって彼は、おそらく四足歩行の種族だ。


ふらつき、倒れそうになり、  
今度は反対の足で踏ん張る。

それでも、羽根を離さない。

いつの間にか、  
彼を眺める私の手のひらには、  
汗が滲んでいた。


監視だったはずの観察は、  
いつの間にか、

彼への興味に変わった。

これはもはや、見守りだった。

私は、彼を"羽根の子"と呼ぶことにした。


夜が訪れる。  

心配になって見に行くと、  
不安そうな彼が目に入った。

声をかけようかどうしようか…

近づこうとしたそのとき、  
私の立てた物音に、  
彼が怯えた顔を向けた。

いけない。  

怖がらせたいわけじゃない。


しばらくすると、  
彼は羽根に頬を寄せ、  
船を漕ぎ始める。

やがて、  
すっかり寝入ってしまった。

羽根を抱きしめ、  
安らかな寝息を立て始める。  

 私はそっと、その場を離れた。


あれから、彼は少しだけ歩くのが上手になった。  
まだ、川べりを少し歩き回るくらいしかできないのだが。

よたよたと水辺に近づき、水面をのぞき込む。

魚のウロコが、キラキラと陽の光を反射していた。  

興味津々で顔を寄せたそのとき。

突然、魚が跳ねた。

彼はびっくりして、尻もちをつきそうになる。

私は少し、笑ってしまった。


彼の行動範囲は、日を追うごとに拡がった。

今日は森を探検するらしい。  
まだ少しおぼつかない足取りだが、大丈夫だろうか。

森は少し、歩きにくい。


小鳥たちが、ぺちゃくちゃおしゃべりをしていた。  
あの子は初めて鳥を間近で見たようだ。

興奮気味に近づいていく。

あれでは、いけない。

やはり、鳥に逃げられてしまった。

羽根の子はしょんぼり鳥を見送り、  
再び歩き始めた。

ほんの少し、肩を落として。


しばらく行くと、  
その先には大きな岩のそびえ立つ、小さな岩壁が現れた。

私にとっては、  
ひょいと越えられる程度のものだ。

羽根の子だって、  
このくらいなら四本足を使えば簡単に登れるはずだ。

しかし、羽根の子はそうしなかった。

羽根を抱えたまま、  
一生懸命背伸びをして、  
羽根を決して離そうとはしなかった。

2本の足で登ろうにも、  
岩のひとつひとつは大きい。

無理だ。

やがて、諦めたように道を引き返す。

今度こそ、意気消沈していた。


見かねた私は、  
ついに羽根の子に声をかけることにした。

「ねぇ、きみ。」

羽根の子は驚いて、  
少し警戒した。

咄嗟に、羽根をかばおうとする。

「驚かせてごめん。  
君の羽根は取らないよ。  
大切なものなんだろう?  
それなら、これでその羽根を持ちやすくしてあげよう。」

私は近くに生えていたツタを引き抜き、  
羽根の子によく見えるよう、かかげてみせた。

「ほんと?」

羽根の子が、小さく聞き返す。

「おいで、やってみよう。」


羽根の子が大切にする、羽根。

私はなるべく、それを丁寧に扱った。  
締め付けすぎず、でも落としてしまわないように。  
そして、羽根の子がいつでもその羽根に触れられるように。

いつも、大切そうに触れていたから。 

なぜかは知らない。  
見る限り、役に立っているわけでもなかった。  

むしろ、羽根が彼の行動を制限していた。

けれど、それを捨てれば自由になれるとは、  
言いたくなかった。

私の手先が器用で良かった。  
こんなところで役に立つとは。


羽根の子の体に合わせて調整をし、  
ついに羽根ホルダーが完成した。

「できたよ。どう?」

そう声をかけると、  
羽根の子はキョトンとした顔でこちらを見た。

「ほら、これで歩きやすくなったろう?」

「あっ。」

羽根の子が、おそるおそる前足をおろした。

「歩ける…」

もう一歩。  
そしてもう一歩。

羽根が落ちてしまっていないか、慌てて振り返る。  
羽根は変わらず、彼の体に寄り添っていた。

さっきまで沈んでいた顔に、  
少しずつ笑顔が広がった。

「見て!歩けた!!」

私もつられて、笑みを深めた。


それからというもの、  
私は彼にいろいろなことを教えた。

森の歩き方、川の渡り方。  
魚という生き物。

そして、相手との距離。

彼は、羽を持つ鳥に憧れていた。  

この羽根がどうしてあたたかいのか、  
知りたかったようだ。


「ぼくも、鳥たちと仲良くなれる?」

ある日、そんなことを聞かれた。

「いいかい、彼らは君のことを知らない。  
仲良くしたかったら、まずは挨拶をしないとね。」

「あいさつ?」

そうか、私も、彼に挨拶をしなかったな。

「そうだ。私たちの出会いは、良いお手本ではなかったな。  
よし、今から鳥たちに挨拶しに行こう。」


森へ入り、ほどなくして鳥を見つけた。

「ここへ座って。大きな君が急に近づいたら、怖がるだろう。」

羽根の子は、大人しく私の隣に座る。

「鳥さん、久しぶりだね。」  

「ああ、お猿さん。その子はだぁれ?」

話しかけると、鳥は羽根の子に興味を持った。

「この子は、最近生まれたんだ。  
種族は分からないけど、いい子だよ。  
仲良くしてやってくれ。」

鳥は小首を傾げて、羽根の子を見た。

「よ、よろしく…」

ちょこちょこと近づいてきた鳥に、  
羽根の子はおそるおそる声をかけた。

「きみ、おっきいけど、よく見たらかわいいね!」

そう言うと、鳥は羽根の子の頭に飛び乗った。

「よろしくね!」


大胆な鳥に、羽根の子は目を白黒させながらこちらを見た。

「こ…これで合ってる??」

私と鳥は、顔を見合せて笑う。

「ああ、もう"仲良し"だ。」

それを聞いた羽根の子が、  
くすぐったそうにおしりをもぞもぞさせる。

「もう、座ってなくても大丈夫だ。  
鳥たちと遊んでおいで。」

私の言葉を合図に、羽根の子が駆け出す。  
鳥はパッと飛び立った。

今度は、羽根の子と同じ方向へ。

「みんな、この子と遊ぼう!」


鳥たちと戯れながら、
羽根の子は力いっぱい駆けた。

鬱蒼とした森をぬけ、広い平野へ飛び出す。

その背中には、
飛べない羽根が、1枚。


森をぬけ、川を渡ると、
そこには大きな岩の壁。

それでも、羽根の子はもう、ひるまなかった。

羽根を背中に付けたまま、
ぐんぐん駆け上がる。

前は見ることも叶わなかった、その先。

新しい世界を、見に行きたくて。



 この作品について

これは、こはる観測所の音楽寓話です。
『keth-nara』から派生した lutha vetha シリーズの第1話。
あたたかな羽根を大切に抱える子の物語です。


私にとっての自由

この物語では、大切なものを抱えて、
どうやって歩いていくのか、を描きました。

私にとって、自由とは自立していることです。

そして、自立とはひとりで立って歩くことではありません。
でも、誰かに甘えるだけでも自立とは言えません。

私は自由になるためには、いくつかのステップがあると思っています。


何かを守りたい。
何かを成し遂げたい。

そんな想いを実現させるために、
または守り抜くために、

まずは自分で挑戦すること。

不器用でも、
役に立たなくても、
誰にも見てもらえなくても。

重ねた試行錯誤は、自分の経験になります。


そして、誰かの助けを受け入れること。

自分にとって必要だと思う助けは、
素直に受け入れます。

自分が何を大切にしたいかが見えていれば、
受ける助けと、受けない助けを選べます。

丸ごと抱きあげて運ぶ介助ではなく、
大切なものを捨てさせるアドバイスでもなく、

より良くなる方法を、私は模索したいから。

全てを跳ね除けて、
ひとりで立つのが自立とは思いません。

かといって、
自分で立っているとは言えない支えも、要りません。


だから、
私にとっての自由は、ひとりだけでは成り立たない。

自分が誰かの自立を助けて、
自分も誰かに自立を助けてもらう。

自分の何かを、
誰かの何かを、
尊重することで、

自分の大切なものを守る自由が得られるんじゃないかな、と思いました。


勝手にスペシャルサンクス

これは、前作 『keth-nara』を、誰にも見られないんじゃないか?とビビりながら公開した際に、
「しれネコ🐾|迷子の気持ち、 ちょっと軽く」
さんからいただいたコメントがきっかけで制作に至ったものです。

蔦に覆われた卵は救えないのか?  
この子にとっての救いとは何か?

それを考えた時に、6話構成(予定)の物語になりました。
まだ、蔦の子は出てきませんけど。

見てくれる人がいてもいなくても、  
ちゃんと作りたいと思える形になりました。

きっかけをいただいたことに、感謝を。


応募作品としての記事はここまでです。
この作品は、こちらの企画に参加しています。
お時間ありましたら、他の方の作品もご覧ください!


今回のお題は、ユル勇者あかねさんからいただきました✨️


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