6畳の部屋でプラレール│次は直線レールが足りない。市長は越境し、父は資材不足に悩んだ‐2026年5月24日(日)

完成形
今日もプラレールに誘われた。
最近、6畳の部屋でプラレールを広げることが増えている。
というより、もうシリーズ化している。
長男はレイアウトを作る。次男は電車を探す。
父は「プラレールやろうぜ!!」と誘われる。
磯野!野球しようぜ。某国民的アニメのワンシーンみたいな誘われ方である。
そして三男は、だいたいどこかにいる。
今日は、三男が廊下にいた。
緑のマットの上に寝かしていた。もうここしかなかった。
6畳の部屋は、もういれないことを想定する。
線路。橋脚。駅。高架。車両基地。
父と兄たちが作った街に飲み込まれる前に、三男は廊下へ避難していた。

避難というか、立ち退きに近い。本人は、補償もないのに特に嫌そうではなかった。
ただ静かに、兄たちの都市開発の余波を受けていた。
長男のレイアウトは、あっという間に完成していた。
見た瞬間に思った。早い。もう駅がある。車両基地がある。分岐がある。
ただ線路をつなげているというより、街を作っている。
長男は、完全に市長だった。

一方で、次男はまだ電車を探していた。線路どころではなかった。こまち。はやぶさ。ドクターイエロー。貨物。
まず、走らせる電車を選びたいらしい。

長男は、「どう走らせるか」を考えていた。
次男は、「何を走らせるか」を探していた。同じプラレールでも、見ているものが全然違う。
父はその横で、勝手に次男用の線路を作るものだと思っていた。
「レイアウトは自分で作ろう」
みたいなことを言われたので、隣に次男の線路を作れという意味かと思った。
父は、次男側の支線工事に入った。ところが、当の次男は、まだ車両をいじっていた。まだ発注されていなかった。父だけが、勝手に着工していた。
これは事後発注だ。上場企業なら大問題だ。
問題はそれだけではなかった。
何て言うことでしょう。長男が攻めて来ていた。
こちらは次男側の線路を作り始めたばかりだった。
まだ区画整理中。まだ仮設道路くらいの状態。
そこへ長男の本線が、まっすぐこちらへ伸びてきた。越境しすぎである。
市長は言った。
「ここ、まっすぐ行きたい」
暴君すぎる。

こっちはまだ、線路を作り始めたばかりだった。
でも市長には、市長の計画があるらしい。
父から見ると、完全に隣地トラブルだった。
こちらの敷地に、普通に幹線道路を通そうとしてくる。しかも悪気はない。
「ここ通したい」
ただそれだけ。都市計画とは、時に強引である。
今回は、お得意の空中戦で難を逃れた。
地上で干渉するなら、上を通せばいい。プラレールは、困ったら高架にできる。これが強い。
現場でもそうだ。敷地が狭いなら、資材を立ててでも逃がす。

ただ、ここで問題が出た。
直線レールが全然ない。本当にない。
「え、今日直線レール全然なくね!?」
思わず声が出た。中東情勢のせいだ。ナフサ不足か。
いや、父の発注ミスが原因だ。
直線レールをここまで使うとは思っていなかった。
つまり未発注なのだ。
わが家でも、資材不足が始まっていた。
直線レールは、完全に取り合いだった。
曲線レールはある。めちゃくちゃある。
でも、欲しいのは今それじゃない。まっすぐ行きたいのに、曲がる材料ばかり余っている。
「直線レール全然ないんだけど!!」
そう文句を言うと、長男はどこかへ行って、ちゃんと直線レールを持ってきてくれた。市長は、資材管理までしている。
ただ、直線レールが少ないことに変わりはない。
レールは短めにした。理由は単純だった。直線レールがないから。曲線レールだけは、なぜか山ほどある。
だから短く納める。大きく広げたい。でも、材料がない。
理想の都市計画と、実際の在庫は違う。
そして市長曰く、完成形になった。
部屋いっぱいに線路が広がった。
駅があり、車両基地があり、橋があり、高架があり、外周もある。ぱっと見は、かなりいい。これは走りそうだ。
そう思って実際に走らせてみた。
すると、すぐに問題が出た。
「え!?!?ここ、ずっとぐるぐる回ってんだけど!!」
文句を言った。
そう。この街には、一度入ると、もう戻れない路線が存在した。
永久ループである。

市長は、あまり乗客の気持ちを考えていない。
路線図と見た目は完成している。
でも運用してみると、行けない場所がある。
これも現場でよくある。図面上は成立している。でも実際に動かすと、なにかおかしい。見た目はきれい。でも使いづらい。完成しているように見えて、機能していない場所がある。
プラレールは正直だった。電車を走らせると、すぐにバレる。
なんとなくアドバイスをした。
「分岐、ここにしたら戻れるんじゃない?」
「ここ繋げたら、外周に行けるんじゃない?」
「ここは一回こっちに逃がした方がよくない?」
気付けば、普通に打ち合わせに参加していた。
最初は誘われただけだった。横で見ているだけのつもりだった。
でも、走らせてみて問題が出ると、どうしても見てしまう。
どこで詰まっているか。
どこを繋げれば戻れるか。
どこを触ると別の場所が死ぬか。
完全に現場監督の目になっていた。父は、遊んでいるのか、検査しているのか、よく分からなくなっていた。
ただ、長男はちゃんと考えていた。
最後に見て、思わず声が出た場所がある。
「ここ、うまく作ったなー!!」
高架でまたいで、曲線で逃がして、外周で戻していた。直線レールが少ない中で、ちゃんと納めている。
全部がきれいなわけではない。強引なところもある。行きにくいところもある。謎の場所もある。
でも、ちゃんと考えている。

市長は、意外と納まりを見ている。
いや、意外とではない。たぶん市長なりに、見えているものがある。父には効率の悪い線路に見えても、長男には必要な道なのかもしれない。
次男には、そもそも線路より電車の方が大事なのかもしれない。
三男には、まだ全部ただの青い棒なのかもしれない。
同じ部屋にいても、見ているものが全員違う。それが面白かった。
今日も現場は、6畳部屋のプラレール。
発注者は市長。施工は父。次男は車両選定中。
三男は廊下へ一時避難。
資材は不足していた。特に直線レール。
曲線レールはある。めちゃくちゃある。でも、街をまっすぐ伸ばしたい時に必要なのは、やっぱり直線だった。
次はまた、直線レールを足しておかないといけないと思った。
6畳の都市開発にも、資材計画がいる。
今日も街は広がった。
これにて竣工。
6畳の部屋でプラレールシリーズ、マガジン作成しましたので、是非見ていってください!
