散歩の話。 スタエフ追加
補修したてのアスファルトはそこだけ色が変わっている。コールタールのように真っ黒に染まったそれは、他の場所よりもたっぷりと日光を含んでおり、跳ね返った輻射熱は容赦なく私の足元を照りつける。
白いスニーカーを履いているというのに、足の裏から感じる熱気は爪先の先端をじっとりと汗で蒸し焼きにする。
灼熱が運ぶ陽炎。人の形をした逃げ水は私に手を振りながら嘲笑う。一歩を踏み出すたびに心を削られる。日傘の柄を握る手に思わず力が入る。
すれ違う人たち。みな同じく下を向いている。私も下を向きながら、歩道の端で軽く体を捩る。彼らが過ぎ去った後、汗と香水の混ざった臭いが塊となってしばらく道に遺っていた。
額から滴る汗が頬を伝い、顎から落ちた。ポタリと垂れたそれはゆっくりと足元のコンクリートに小さなシミを作った。そのシミを右足で踏み潰し、爪先にグッと力を込める。
目線を前に向ける。交差点、歩行者用信号機。カウントダウンはいつもよりもゆっくりと、一つずつ数を減らしていく。私はその長さに耐えきれず、信号機の影にぴったりと体を収めた。気づけば周りには数人が待っていた。或る者は天を仰ぎ、また或る者は下を向き、ただじっとその時を待っていた。
信号が赤から青に変わる直前、一人の男が横断歩道に足を掛けた。それに呼応するように他の者も一斉に進む。取り残された私はまた視線を下に向け、少し遅れて足を出す。足の裏が黒く焦げる音がした。そんなものはないはずなのに、ゴムが溶け、焦げた臭いが鼻につく。
足から煙を出しながらガード下を歩き続け、やっと目的地に辿り着いた。けたたましく排熱を続ける室外機を横目に、自動ドアの前に立ち、日傘を畳む。扉がゆっくりと開くと同時に冷えた冷気が足元にかかる。私は待ちきれず、ドアが開き切る前に店内に足を踏み入れた。
中を見渡す。店員以外、誰もいない。内心で舌打ちをした。客がいないのでまっすぐレジに向かう。いつも通り、51番を2つ注文した。店員は私が「ごじゅうい」と言った時点で後ろを向き、指定されたタバコを目の前に置いた。もっとここにいたいという私の気持ちとは裏腹に、私の指は自動的にタッチパネルを操作した。
機械にスマホを翳し、決済が完了する。店員が放つ「ありがとう、ございましたあ」という尻上がりの声は「用が済んだらさっさと出て行け」ということだ。知らぬ間に私の後ろには列ができていた。
タバコを受け取り、再びドアの前に立つ。私はゆっくりと開く自動ドアの前で、ただ立ち尽くすしかできなかった。
と、ここまでが私の妄想だ。
自慢じゃないが、起きてから今まで私は今日一歩も外に出ていない。
タバコはとっくに尽きている。いい加減我慢の限界だ。さっさと買いに行かなければならない。だが、この暑さだ。外に出るのが億劫すぎてどうにかエア散歩でエアタバコを買えないかと思ったが、どうやらそれは無理らしい。
間も無く19時になろうというのに、外にはセミの鳴き声も聞こえない。セミも蚊も暑さが過ぎると活動できなくなると聞いたことがある。一体どんだけ暑いんだ。
あゝタバコを買いに行くのが本当にだるい。こんなことなら最初からカートンで買っておけばよかった。
追記: 久々にスタエフ撮りました。
