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メガネの話。

私はずっとメガネをかけている。記憶は定かじゃないが、小学校低学年くらいまでは視力は良かったはずだった。視力低下の原因はおそらく当時流行っていたポケモンだ。

テレビを観ることにすら五月蠅い親がなぜか私にゲームボーイを買うことを許してくれた。買ってもらったのはポケットモンスターの緑版。単三電池を入れて、初めて起動した日のことは忘れない。その日から私はゲームの虜になった。

親からは目が悪くなるからと言われたが、私は布団の中でもコソコソとやっていた。そして恐らくこれが悪かった。私の視力が低下すると母はたいそう嘆いていた。せっかくいい目で産んだのにと。子ども心ながらに、とんでもないことをしてしまったと、当時はすごく悲しんだ。

母はとりあえず私を近所の眼科に連れていき、状況を確認した。仮性近視ということが分かり、父に頼んで高価な矯正装置を買ってくれた。矯正装置は小さな黒い箱のようなもので、よく眼科に行くとやらされる気球が見えるようなものだ。それを一日五分やる。当然やらない。そしてあっけなく私の視力は低下した。

母はがっくりしながらも私をメガネ屋に連れていき、そこで人生初のメガネを手に入れることになる。それまで裸眼で過ごしていたものだから、メガネをかけた瞬間に視界がパッと広がったあの感覚は衝撃だった。

世界はこんなにも色がついていたのかと。当時信号機すら見えなくなっていた私は感動を覚えた。

それから十余年、私も大人になったころ初めてコンタクトレンズに手を出したことがあった。正直買い方も分からなかったので、なんとなくネットで注文した気がする。後で知り合いに聞いたら、最初はちゃんと眼科に行って買うのが王道だと知った。

コンタクトレンズの蓋を開けると、液体の中に沈んだペラペラのものがある。私は誰かの真似をしてそれを眼球に入れようとした。だが何度やってもうまくいかない。レンズが目に入らないのだ。何度か挑戦しててやっと分かったことがある。私はずっと目を閉じていた。

私のまぶたは私の意思とは反対に、頑なに開けることを拒んでいる。腹が立ってもう片方の指でまぶたを強制的にこじ開けようとしたが、それでもレンズが入るほどには開かない。

結局、私は全てを諦めてそのコンタクトレンズはお蔵入りになった。

妻は寝る時以外、コンタクトレンズ派だ。一度だけ妻の前でお蔵入りになったコンタクトレンズ取り出してやってみようと思ったことがあった。
だが、シャイな私のまぶたは、妻の前ではより頑固に閉ざされて、必死に目をこじ開けようとする私の姿を、妻はゲラゲラ声を出して笑っていた。

ここ数日、あまりにも花粉症がひどい。
私はnoteでおつながりのある朔夜さんからのアドバイスに従い、今年は花粉症の薬を飲まず、「自分は花粉症じゃないと思い込む」プラシーボ効果だけで乗り越えるチャレンジを決行している。

妻はそんな私を見て、早く病院に行けと言うが、私は意地でも行かないと決めている。幸いなことにプラシーボ効果の甲斐もあって鼻水は減ってきてはいるものの、目の痒みだけはどうしても抑えることができない。

と、いう訳で昨日調達したロートのアルガードを目に挿した。

…..入らない。

こんなにも目が痒いのに、目薬は目の中ではなく目尻の方に垂れていく。どこかで既視感のあるこの光景。私に似てどこまでも頑固な私のまぶた。ここまでくると「いい加減にしろ」よりも「さすがだよ」の方が勝つ。

あまりにもムカつくので、思いっきり逆の手の指先で開いてやったらなんとか目薬を入れることに成功した。

おかげで視界はクリアになった。頑固な彼も歳をとって少しは丸くなってくれたのだろうか。

私のまぶた、今ならコンタクトレンズを受け入れてくれるかもしれない。そんな期待を寄せつつも、結局はいつものメガネに手を伸ばす。
今日はそんな朝だった。


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