「豆腐戦争」と「5万円の腕時計」
──“またか”と思った瞬間、経営者は次の業態へ行く
今日、朝から頭の中がずっとザラついていた。原因は、たかが豆腐。されど豆腐という感じだ。
スーパーチェーン本部、メーカー、システム会社、営業、工場長。誰が悪いのかを延々と説明する長文メッセージ。GTINコード、店舗コード、例外処理、ノーアクション。
正直に言うと、もうお腹いっぱいだ。
これは誰かがミスした、という話ではない。このスーパーという業態そのものが、構造的にこういうトラブルを内包している。
■ ハムスターが車輪を回すビジネス
スーパーの現場は、いつも同じだ。週末に限って発生する欠品、ひっきりなしの電話応対、責任の押し付け合い、システムへの責任転嫁、週末の担当者不在、「確認します」の連絡、そして、また欠品
誰かが必死に走っている。でも景色は一切変わらない。皮肉だ。まるで、ハムスターが必死に車輪を回り続けているような構造。
儲からない。なのに、忙しい。トラブルも多い。それでも止まれない。
このループを「今回だけのトラブル」と捉える人が殆どだ。
でも、私は違う。
「これ、構造的に無限ループじゃん」
そう思った瞬間、もうその業態に心が戻らない。
■ 午後は質屋へ
午後、東京都内の質屋に行った。
店内は静かで、空気が違う。
店員さんと話をしている最中、
5万円の腕時計が1本、すっと売れた。
慌ただしさはない。
怒号もない。
電話も鳴り続けていない。
売上の多くは、楽天などのネット経由らしい。
ここでふと思った。
ああ、これは「消耗戦」じゃない。
■ 豆腐と腕時計の決定的な違い
豆腐はどうだろう。
•単価は安い
•利益は薄い
•欠品するとクレーム
•毎日同じ
•誰も喜ばない
一方、腕時計。
•単価が高い
•粗利益率は50%以上
•在庫は腐らない
•売れると「価値」が動く
•オンラインで全国と繋がる
同じ「商売」なのに、脳の使い方がまるで違う。
例えば、100円の豆腐の粗利益を甘めに見積もって20円とする。
一方で、5万円の腕時計の粗利益額を3万円くらいとする。
腕時計の粗利益額3万円と同じ粗利益額を達成するには、豆腐は、
30,000 ÷ 20 = 1,500
つまり、1,500個も売らないといけないことが分かる。
この人口減少、財布の紐が固い物価高、人件費や水道光熱費が重い時代にだ。儲かるはずがない。
■ 私が異質に見える理由
たぶん私は、少し異質だ。
多くの人はこう考える。
•「今回のトラブルは不運だった」
•「あの担当者が悪い」
•「次はうまくやろう」
私は違う。
•「この業態そのものが原因では?」
•「同じこと、10年後も起きてない?」
•「だったら、別の業態に行こう」
この思考のジャンプは、意外と多くの人が出来ない。
学歴の問題でも、能力の問題でもない。視点の高さの問題だと思う。
■ “またか”と思った瞬間
今朝、スーパー本部からの豆腐の長文説明を読みながら、正直こう思った。
「またか。もういい。」
その直後に、5万円の時計が静かに売れた。
この対比は、余りにも残酷で、そして余りにも分かり易かった。
■ 向いてない。でも、可能性がある
リユース事業を始めて5年以上が経つが、私は正直、リユースの現場が好きなタイプではない。
商品そのものに、そこまで興味もない。
でも、ビジネス構造には強烈に興味がある。
•粗利が出る
•消耗しない
•商圏が全国と繋がる
•オペレーションが比較的シンプル
向いていなくても、可能性があるなら、そこに賭ける。
経営とは、そういう判断の連続だと思う。
■ 結論
豆腐戦争と、時計1本。
今日1日で、自分の中の何かがはっきりした。
“またか”と思った瞬間、経営者は次の業態へ行く。
私は、ハムスターの様に必死で車輪を回すのをもう止めたい。
