セッション定番曲その241:If You Could See Me Now by Tadd Dameron
ジャズセッションの定番曲。魅力的な歌詞とメロディのバラードです。
(歌詞は最下段に掲載)
和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。
ポイント1:Chet Baker
1958年録音。バラードにはChet Bakerのストレートな音色のトランペットが似合いますね。サックス(バリトン)はPepper Adams。鼻歌で歌えそうなメロディがシンプルに演奏されていて、それだけで聴き応えあります。
ポイント2:Natalie Cole
1996年録音。ジャズ歌手には「歌そのものが上手い人」と「ジャズボーカルという分野だから活きる人」がいますが、彼女は前者。元々はR&B寄りの歌手で徐々にジャズにシフト、抜群の歌唱力と前に出る歌声で何でも歌いこなします。この物語性のある歌詞も余裕たっぷりに歌っています。特にバラードは演出過剰になってしまうこともあるので、押し引きが大事ですね。
こういう歌唱を「ジャズボーカルっぽくない」と考える人達も一定数いますが。
ポイント3:Tadd Dameron
ビバップ時代の有能な作曲家/編曲家であったTadd Dameron。今でもスタンダード曲となっている「Hot House」「Our Delight」「Good Bait」「Lady Bird」そしてこの「If You Could See Me Now」などを書いています。いずれもジャズセッション初心者をちょっと抜け出したあたりのレベルの人達に人気の曲。いずれも懐かしさのある印象的なメロディとちょっとした仕掛けがあるものばかり。
Hot House
Our Delight
Good Bait
Lady Bird
ポイント4:歌詞のポイント
If You Could See Me Now
日本人の苦手な「仮定法」です。みんな中学校とかで習うのですが、文法とかの理屈にとらわれて、微妙なニュアンスをうまく表現する言い回しだということに気が付かないのがもったいないです。
・If You Could See Me Now 「もし今の私の様子をあなたが見ることが出来たら(仮定)」→でも見られない状態にあることを示唆している
・If You Could See Me Now 「もし今の私の様子をあなたが見ることが出来たら(強調)」→なんとしてでも見て欲しい(という願望)
最初のAパート冒頭と最後のAパートの最後で同じフレーズでもニュアンスが変化していると思います。
If you could see me now, you'd know how blue I've been
One look is all you'd need to see the mood I'm in
Perhaps then you'd realize I'm still in love with you
ふたりは離れてしまったけど
私の今の惨めな様子を見たら、どれだけ落ち込んでいるか分かるはず
あなたを今でも愛しているからこうなってしまったのを知らないでしょ
If you could see me now, you'd find me being brave
And trying awfully hard to make my tears behave
But that's quite impossible, I'm still in love with you
あなたはもういないけれど
私は耐えて、崩れ落ちないように持ち堪えています
涙だって見せないようにしてる
でも、そろそろ限界
あなたのことが忘れられないから
You'll happen my way on some mem'rable day
And the month will be May for a while
I'll try to smile but can I play the part
Without my heart behind the smile?
ふたりの記念日とかにもしあなたを通りで見かけたら
それが初夏の始まり5月の五月だったとしても
うまく笑顔でやり過ごせるかな
せつない気持ちを押し隠して演じられるかな
The way I feel for you I never could disguise
The look of love is written plainly in my eyes
I think you'd be mine again if you could see me now
わたしの思いは隠し通せないと思う
恋焦がれる気持ちは私の瞳を見れば明らかだから
今の私を見て欲しい
あなたの気持ちを取り戻したい
最初は失恋に打ちひしがれて落ち込んでいましたが、覚悟が決まったのか歌の最後では「(以前とは違う)今の私を見て欲しい」「惚れ直すかもね」と語り掛けています。言葉数の少ないバラードで「物語」を感じさせる歌詞が流石ですね。この心境の変化をうまく歌で表現したいですね。
ポイント5:曲の構成
AABA 各8小節のバラード。Aパートの上昇下降メロディが印象的です。

ポイント6:様々なバリュエーションを聴いてみましょう
Bill Evans、1962年録音
「物語」を弾かせたらBill Evansにかなう人はいませんね。高級BGM。
Dexter Gordon、1970年録音
ヨーロッパで活動していた頃の録音。
Sarah Vaughan, The Count Basie Orchestra、1981年録音
私はこの人のわざとらしく大袈裟なフェイクやビブラートが苦手なのですが、この曲はもともと彼女に歌ってもらう為に書かれたということで。
こっちは初期の録音。まだストレートな表現。
Dianne Reeves、2001年録音
Sarah Vaughanに捧げたアルバムから。抜群の歌の上手さ。
Mel Tormé、1995年録音
ほっとする優しさと上品さが同居する円熟の歌。いかにもオッサンっぽいルックスで損していましたね。
Lilly Hertzman、2021年録音
生々しいギターを伴奏にした歌唱。
◼️歌詞
If you could see me now, you'd know how blue I've been
One look is all you'd need to see the mood I'm in
Perhaps then you'd realize I'm still in love with you
If you could see me now, you'd find me being brave
And trying awfully hard to make my tears behave
But that's quite impossible, I'm still in love with you
You'll happen my way on some mem'rable day
And the month will be May for a while
I'll try to smile but can I play the part
Without my heart behind the smile?
The way I feel for you I never could disguise
The look of love is written plainly in my eyes
I think you'd be mine again if you could see me now
