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『詩』四角錐と円柱のあいだで

四角錐と円柱のあいだで
鞭を振り回しながら
象使いが怒鳴っている
おれには何の関係もない
男がそうおもっていると
サーカス団の団長が近寄ってきて
囁くような声で男に言う
すまないが
探しに行ってきてくれないか?


探すって、いったい何を?
象さ、もちろん
いなくなってしまったんだ


それはおれの役目じゃない、そう言いかけて
男は言葉を飲み込む
ツィードのスーツを着込んだ紳士な団長の顔が
あんまりローワン・アトキンソンだったので


あんたには報酬にこれをやろう
団長が差し出したのは
トランプのジョーカーに似た一枚のカード
こんなものに人生を賭けられる奴はどうかしてる
言いかけて振り返ると
ライオン使いもブランコ乗りも
示し合わせたようにカードを取り出して見せる
皆と同じじゃ割に合わないじゃないか
あんたのは特別さ、どこでだって役にたつ


カードを受け取って繁々しげしげと眺め
ふところに仕舞い込んで男は尋ねる
ところでおれはどこへ行ったらいい?
団長は困ったように首を振る
四角錐に向かって象使いが鞭を振り下ろす
どこでもいいから早く探してきてくれ
このままだと仕事にならん!
男はため息をついて肩をすくめ
自分の古いピックアップトラックを呼びにゆく
相棒はいつだって準備万端のはずだ


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さあ、
まずどこへ行けばいい?
試しにダッシュボードを開いてみると
古びて茶色くなった地図が二冊
それは多分
今じゃどっちも当てにならないね
むしろやつはそれの外に行ったのさ
仕方ない
男はついに諦めて車に乗り込み
スターターのキーをひねる


それにしても
やつは何だって逃げ出したりなんかしたんだろう?
わかっちまったのさ
たまの上よりも
地面のほうがよっぽど楽だということに
それで降りちまったのか!
そういうことだ
それじゃあみんなが困るだろう?
なに、遅かれ早かれ
みんなそうなることはわかってたんだ
見ないふりをしてただけなのさ


三角錐と円柱のあいだの道を
何日も何週間も何ヵ月も
男はピックアップトラックを走らせてゆく
陽が沈み 月が昇り星が巡って
地平線と水平線が入れ替わる
朝焼けがあり 夕焼けが行く手を赤く染めて
たまたま荷台に乗せた女が涙を流し
土砂降りの雨がトラックを襲う
気づけば男はすっかり目的を忘れているが
車を止めることはない


ある日 砂埃にまみれて
トラックはエンストしてしまう
男もトラックも疲れ切って
互いにもう口を聞くこともない
ハンドルに体を預けて
男はどれだけ眠っただろう
ふと頭を上げてみると
車の先の砂漠の上で何かが光っている
きしむドアを押し開けて車から降り
男は覚束おぼつかない足取りでそれに近づく
そこにあったのは
人の頭ほどの大きさの象のたま


青く輝いているそれを
男は両手でゆっくりと拾い上げる
こんなものの上で
やつは均衡を保っていたのか!
呆れ果てて
男は力任せに球を蹴り上げる
意外に軽くそれは飛んで
砂埃の舞う黄色い空へ吸い込まれていってしまう
ローワン・アトキンソンも象使いも
きっと今頃パニックになっていることだろう
だがおれの知ったこっちゃない


消えていった球の行方を見送って男は振り返る
するとそこに
砂にまみれた相棒が静かに男を待っている
片手を上げて
男はトラックに近寄ってゆく
トラックの背後に夕陽が傾いて
男は相棒とともにシルエットになる
砂の上に黒々と
二人で長い影を引きながら




今回は完全に空想の世界です。四角錐も円柱も、象も象使いやサーカスの団長も、みんなあるものの比喩ですが、手から離してこうしてアップした以上、何の比喩か、お読みいただいた皆さんでご自由にお考えいただければとおもいます。それこそ #なんのはなしですか  ですね。




今回もお読みいただきありがとうございます。
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