【ファンタジー小説】インターネットラジオMoonDream(ムーンドリーム)
今夜のゲスト 黒猫ジータ
みなさんこんばんは、はじめまして。パーソナリティーの柚木麻尋(ゆずきまひろ)です。
今日から始まりましたインターネットラジオMoonDream。この番組は、私たちパーソナリティーひとりひとりが放送したい企画を持ち寄って、自分たちで作り上げるラジオです。それぞれが街を歩き回って発見したり、あるときハッとおもいついたり、ときには自分で一生懸命考えたことの中から、これだけはどーしても伝えたいっ、ぜひ誰かに聴いてもらいたいっ、っていうものを選りすぐって放送する、そんな番組です。
MoonDreamにはスポンサーはいません。なぜって、どこかの企業さんに引っ張られるような番組にはしたくないから。じゃあどうやって運営するの? そうおもったアナタ、頭いい!
運営はね、私たちスタッフひとりひとりがお金を出し合ってやっています。だって、私が伝えたいことを伝えてくれるのだから、お金を払って当然でしょ? あ、でも、お金を払ってでも聴きたい、っていう方は大歓迎ですよ、そういう奇特な方がひとりでもいらっしゃったら、私たち、助かりますもんね。
MoonDreamについてはわかっていただけました? え? えーっと・・・ああそうか、ネットに接続したらいきなり聞こえてきたって? それはですねぇ・・・そう、周波数が合う人にだけ届くんですよ。そんなばかな、あなた今そうおもったでしょ? 心配しなくて大丈夫。これが聞こえてるってことは、あなたはピュアな心の持ち主です、ハハハ。
え? じゃあ、どこで放送してるんだって? そうねぇ・・・あなたが住んでる街のお隣のどこか。ヒントを言いましょうか、ブースの外に海が見えます。こんな時間だから外は真っ暗だけど、水平線にお月様が昇っていて、波がきらきら光ってます。右手に灯台の建ってる小さな島がひとつ。
わかりました?

じゃあ次は私、柚木麻尋のことね。年齢は、これが届いてるあなたよりはちょっと上かなぁ。あ、中には私よりずっと歳上の方もいらっしゃるかもしれませんね。そんな方はきっと、とっても優しい素敵な方なんでしょうね。
さっきも言ったけど、MoonDreamはみんなでお金を出し合って作ってるので、私もここの他に仕事を持ってます。えーっとね、人の悩みを聞くお仕事。
お医者さん? じゃないなぁ。精神分析の先生? そんな偉くもない。わからない? そっか・・・まあ、まだ始まったばかりだしね、おいおい少しずつ、わかってくるとおもいますよ。
結婚は、してません! って、エバることでもないか。したくないわけじゃないのよ、なんかねー、出会いがないっていうか機会がないっていうか。ここのスタッフ? そうねぇ・・・どうなんでしょうねぇ・・・あ、だめだよ大ちゃん、そこで笑っちゃ。大ちゃんっていうのはね、マネージャーさん。かっこいいんだよ、見かけはね、ハハハ。
で、何でパーソナリティーをやってるかっていうと、ぜひお伝えしたいことがあるから。それが何かっていうのは、初めてでお話できるようなことじゃない、というか、私が何をおもってるか、これからもずっと聴いてもらうと自然とわかってくるとおもいます。だから、これからもぜひ続けて聴いてくださいね。
MoonDreamには私の他にあと三人パーソナリティーがいます。ひとりは女性でふたりは男性。男女ちょうどふたりずつ。っていうか、そういう型にはまらないのもここのいいところなんですよね。え? ジェンダーフリー? さあ、どうなんでしょう? ジェンダーがどうのこうの言うこと自体、どうでもいいとおもうんだけど、でも一応ね、私が最初だから一般的なことはお伝えしないとね。それぞれ考え方や哲学も違うし、歳もバラバラだし。でもみんな、とにかく何か伝えたくて集まってる仲間って感じかな。
ひとりひとりについては私からはこれくらい。みんないろんなものを持ってるので、私なんかが紹介するより自分でお話してもらったほうがいいとおもうんだ。
あ、あなた今、全然聴いたことない番組なのに、どうやってパーソナリティーになったのか、って、そうおもったでしょ? 募集してるところも見たことないし、って。ん〜、そうですねー、言っちゃうと、ラジオをやりたいっ! って言って集まったのが先、ってこと。みんなね、とにかく発信したい、ってずっとおもってたの、それぞれ。で、何か書いたりYouTubeをやってみたりTikTokをやってみたりしてたんだけど、何かしっくりこなかったのね。ほら、ひとりでやるってなかなか大変じゃないですか? で、同じようなことを考えてたメンバーがある日突然集まって・・・って、そんなわけないか。
えーと、どう言ったらいいかなぁ・・・ほら、引かれ合うっていうか・・・あなたもこのラジオに引かれたでしょ。思いがつながった、って言ったらいいかな。え? 引かれた覚えはない? まあそんなこと言わないで、しばらく聴いてみてくださいな。
番組の内容は、四人ともバラバラです。私の番組は、お客様をお呼びしてインタビューするのがメインかな。他の人はおハガキ読んだりリクエストにお応えしたり。シーちゃんは? 何か怪しいことやるって? 占い? スピリチュアル? ・・・そっかー。詳しくは聞いてないんだ、私も。
それにしても、お客様遅いですねー。三十分ほどの番組だから、あっという間に終わっちゃうんだけどな・・・あ、いらっしゃいました! 表のドアを開けて・・・いらっしゃいませ、どうぞそちらへ。
渋滞にはまったんですか? 大変でしたねぇ。この時期だから、塀の上も屋根の上にもいっぱいいて・・・そうですか、大丈夫ですよまだ。
あ、お水を一杯。大丈夫ですよ、少し呼吸を整えて。
それではご紹介します。記念すべき第一回のお客様は、黒猫のジジさんです!・・・
え? 違うって? 『魔女の宅急便』には出てない? あっそうか、ごめんなさい、えーと・・・ジータさん、でしたね。そうそうジータさん、ごめんなさい、今日のお客様は黒猫のジータさんです。ようこそMoonDreamへ。
改めまして、今夜のゲストのジータさんです、拍手〜パチパチ!
本当に、ありがとうございます。ジータさんはね、私からぜひにってお越しいただいたんですよね。いつでした? 半年ほど前? そんなに前でしたっけ。あ、でもそのくらいからもう、私、このMoonDreamについて考えてて、それでたまたま出会ったジータさんに、ぜひ出演してくださいっ! って言ったんですよね。海鳴りの丘のカフェで。ホントに唐突に。ええ、でしたよね〜、その節はホントに・・・え? あのあと? おかげさまで無事に帰り着くことができましたよ。
私、何かを考え出すともうそればっかりになっちゃって、周りが見えなくなっちゃうんです。それで、あの日もぼーっと歩いてたらわかんなくなっちゃって、ここはひとつ落ち着こうとおもって、たまたま目についたカフェに入ったのね。そしたらそこにジータさんと奥様のルナさんがいらっしゃって。
私、疲れてたから窓際の席に腰を下ろして。すっごい感じのいいカフェでしたよね、あそこ。今度ぜひあそこから中継したいな。え? マスターに話をしていただけるんですか? ありがとうございます、それはもうぜひ!
ああ、そうだったんですね。ジータさんがおっしゃるには、最初私が入って行ったときは、やっぱりすごく疲れてるみたいに見えたんですって。私もね、テーブルについて紅茶を注文して、それが出されるまでしばらくじっと目をつむってたんです。実際、なんか急に疲れちゃったみたいで。それから紅茶が運ばれてきて、私がそれを口にするまでジータさんは奥様のルナさんと、私に話しかけないでおこうって、そう言ってたんですって。
ああでも、え? 奥様が? そうだったんだー。奥様がね、どうしてもがまんできなくなっちゃったんですって。だって、私みたいなよそ者が来ることってほとんどなくって、奥様が、話がしたくてうずうずしてらっしゃって、私、目をつむってたからわからなかったけど、マスターがお茶を入れるのを待ちきれなくて、運んでくれたのが奥様だったって、ジータさんが。
え? 何? まだジータさんのご紹介をちゃんとしてない? あっ、ごめんなさい、つい夢中になっちゃって。
じゃあここで、ジータさんのご紹介をしますね。ジータさんは、真っ黒な毛並みがとってもきれいな日本猫さんです。ジャパニーズ・ボブテイルっていうんですよね? それとはちょっと違う? そうなんですか。でも毛並みはつやつや黒光りしてて、それでね、実は、目がとっても美しいんですよ。大きなアーモンド型のオッドアイなんですよね。右目が金色に近い黄色で、左が透き通るようなブルー。日本猫さんでは珍しいんですよね。何か、とっても神秘的で、聴いてくださってる皆さんにお見せできないのがホント残念。ご両親のどちらかがそうだったとか? ああ、そういうことなんですね。ご兄弟の中で、ジータさんだけがそうだったんですって。それで、飼い主さんといろいろあって・・・そうなんですか・・・でも今はお幸せなんですよね?
で、今はあの海鳴りの丘の近くに住んでらっしゃって。えっ? そうなんですか? ちっとも知らなかったぁ〜。最初に出会ったカフェの二階がお住まいなんですって。ルナさんと、おふたりで? じゃあマスターは? あの人は雇われマスター? 雇ってるのはジータさんなんですか? え? 違う? そもそもあの建物には別にオーナーがいて・・・ああ、そういうことなんですね。もともと建物を管理していらっしゃるオーナーさんが、ジータさんとルナさんの思いに共感して、二階を貸してくださってるんですって。マスターは、おふたりが二階で暮らすようになる前から、オーナーさんに雇われて喫茶店をやってるんだそうですよ。雇われるとか借りるとかいっても別に、お金がどうとかここでは関係ないから、オーナーさんの思いと、おふたりやマスターの思いが合ってたからオーナーさんの代わりにあの建物を使わせてもらってる、そういうことなんですね? へぇ〜、面白いなぁ・・・私、そんなことちっとも知らなかったけど、お三人とも何だかとっても素敵だなとおもって、それで突然だったけどぜひご出演お願いしますって、お誘いしちゃったんです。ホントはね、お三人ともお越しいただきたかったけど、マスターはカフェを離れられないし、奥様はちょっと・・・ということで、ジータさんが快諾してくださって。
それで、今はあそこで何をなさってるんですか? ああ、なるほど。おふたりで、ええ、はい。街からも? それは素敵ですね。
えーっとね、ジータさんはカフェの二階で、奥様のルナさんとおふたりで、小さな子に勉強を教えてらっしゃるんですって。小さな子たちはまだ世の中に出ていくことができないから、世の中のしくみとか人との接し方とか。ときには甘え方なんかも。それで、この子はもう大丈夫ってなったら、何人か一緒に、丘の下の港から船に乗せて送り出すんですって。でも、すぐにまた帰ってきちゃう子もいるんじゃないんですか? ああ、そうなんだ・・・海鳴りの丘で教えたことをきっちり覚えてるわけじゃないし、この頃は特に帰ってきちゃう子が増えてるらしいんです。大変なんですね・・・
え? ルナさんも? ・・・そうなんですね・・・
ルナさんはね、ジータさんとはまったく逆の、真っ白なかわいい女性なんですよ。ふさふさの白いきれいな毛で、長いしっぽの先まで覆われてて。何より、ね、喋り方がとってもチャーミングで。好奇心が強くてらっしゃって。
ああ、そうなんですね。ええ、そうだったんですね・・・
ジータさんとルナさんは、もともとお隣どうしだったそうなんです。ルナさんのところには小さな女の子がいて、初めはね、ルナさんも、女の子とお喋りできてたんですって。でも、あるとき突然女の子の喋ってることがわからなくなって。それまでずっと一緒に遊んだりしてたのに、女の子のほうも急にルナさんに興味がなくなったみたいで。それからしばらくして、新しい飼い主さんを探し始めたらしいんですね。それまでジータさんとも、お隣どうしでお喋りしてたんだけど、そんなことがあってから会えなくなっちゃって。そこから先のことは、ルナさん、聞かせてくれないみたい。
で、再会されたのは? ええ、向こうの灯りのある街の。ルナさんがバーで歌ってらして、たまたまそのバーにジータさんが? へぇ、劇的な再会だったんですね。そこからふたりで暮らすようになって。
ああ、それで、ルナさんが歌がお上手だから、今は丘のカフェでコーラスを。そうなんですね、街からも何人かいらっしゃって。どんな歌を歌われるんですか? あ、そうか、私たちは知らない歌ね。一度聴きに行きたいなぁ。ここで流すのはあれだけど、私が聴きに行くのはいいですか? ええ、ぜひ! ルナさんに聞いてくださるって。ルナさん、あんなにかわいらしくて元気でいらっしゃるのに、まだこちらには来られないんですよね・・・
あ、もうそんな時間? まだぜんぜん話し足りないですねー。じゃあ次はぜひ海鳴りの丘のカフェで。ルナさんやマスターにもよろしくお伝えくださいね。MoonDream初めてのお客様は、黒猫のジータさんでした。ジータさん、お忙しいところ、本当にありがとうございました!
パーソナリティーは、心のインタビュアー、柚木麻尋でした。ではまた次回をお楽しみに!
