啓蟄|生命が、動き始める
はしさん発足の、二十四節気を追って
自分なりに季節や風景を綴っていくという企画。
今年使っている手帳に、
二十四節気が書いてあることに気が付いた。
そこで私はこっそり先回りをして
次がどんな節気なのか覗いてみることにした。
啓蟄(けいちつ)
なんだそれは、見たことも聞いた事もない。
『地中で冬眠をしていた虫たちが姿を現すころ』
なるほど、虫が姿を現すのか。なんだか嫌だな。
私も子供の頃は虫と仲良しだった。
野原を駆け回って虫を集めていた。
しかし大人になった今。
虫のことが何となく苦手になってしまった。
虫の話を始めると、あの皮膚を這うような
感触まで蘇って背筋がぞくぞくするのだ。
私は不安な気持ちで啓蟄を迎えた。
そして今日、三月五日。
言われてみたら植物の多い場所では
虫の姿がちらほら見え始めた気がする。
逆に言うと前回までは虫がほとんど気にならなかった。
普段、虫なんか極力意識しないように努めているから
言われてみれば……である。
節気って本当にすごい。
普段は何気なくスルーしてしまっている物事の流れを
鋭い視線でしっかりとらえて端的な言葉にしている。
それから嬉しいことに、花が開いた。
散歩の際に必ず通りすぎる、小高い山のてっぺんにある木だ。
傍らに小さなベンチが据えられている。
決して幹は太くはないけれど、街を見下ろすように広がって
しっかりと根を張っている。
蕾を発見してから、毎日散歩のたびに観察してきた。
日を追うごとに少しずつほころび、小さな花が開き、
そうして啓蟄の本日、とうとう満開である。
花には詳しくない私だけれど、
花弁に割れ目があるから桜だということが分かった。
ひとくちに桜と言っても色々な種類がある。
自分に自信が欲しい時につける口紅みたいな
すこし濃いピンク色をした花が咲いた。
私は嬉しくて何枚も写真を撮った。
ピンクというのは春の柔らかな空色によく映える。
角度を変えて犬と花の写真もたくさん撮った。
ピントをどちらにあわせれば良いのか分からない。
犬も桜もどちらも主役にしたいのに、
片方を選ぶと片方がぼやけてしまって上手くいかない。
日差しも随分と暖かくなってきて、
今日のような気温であれば上着も薄手で良い。
着るもの自体が変わってきた実感がある。
いわゆる春物のシーズンだ。
けれど数日前のように雨が降ると
一気に気温が冷え込んでしまって、
やっぱりまだダウンが必要だなとなる。
温かくなったり、寒くなったり、一進一退。
日によってどちらの服も使うから、洗濯機も大忙しだ。
個人的にはもう少しだけ頑張って
毎日春物を着られるようになってくれると嬉しい。
私は、洋服なら春物が一番好きだ。
明るくて軽やかな色合いが好きなのだ。
特にお気に入りのスプリングコートを持っている。
淡いピンクで、裏地が華やかな花柄になっているやつ。
そんなお気に入りの上着を着られるくらいが
理想的な気候だと思っている。
だから早く。スプリングコートの花柄を
はためかせられる日が来ますように。
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