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はじめての私の駅

子供の頃は転勤族で、いろんな場所に住んでいた。
だから最寄り駅も、利用したことがある駅も、
同年代と比べたら多い方だったと思う。

けれど当然、当時の住居は親のもので、
どこに住むのかも、どの駅を利用するかも、
全部親に決定権があった。

初めて私が自分で最寄り駅を決めたのは、
大学卒業後、就業することになってからだった。

私は自分の車を持っていないので、
一人暮らしをするなら交通機関を利用することになる。
住まいを探すときも、最寄り駅をすべての中心に考えた。

駅から歩いて何分かかるか。
どの路線を利用するか。
どの駅の近くに部屋を借りるか。

そして私は、聖蹟桜ヶ丘で暮らすことを決めた。

東京で暮らしたことはなかったけれど、
部屋の内見に行って一目で気に入った。
都心の喧騒からはある程度距離があって穏やかで、
けれど駅チカにはお店が揃っていて暮らしやすそうで。

何より名前が美しい。
どこに住んでるんですかって聞かれて、
聖蹟桜ヶ丘ですって答えたかった。

実際に暮らしてみても、期待を裏切られることはなかった。
今振り返ってみても、暮らしやすくて大好きな場所だ。
初めての一人暮らしをこの場所で過ごせて本当によかった。

聖蹟桜ヶ丘の好きなところがもう一つ。
電車の発車時に流れる駅メロが、カントリーロードなのだ。
そう、あのジブリの、『耳をすませば』の曲。

『耳をすませば』の舞台にもなっている土地が、聖蹟桜ヶ丘だ。
引っ越して間もなくして、休日にふと思い立って
一人で映画の舞台になっている場所を巡った。

杉本が告白した神社、クライマックスに自転車で登った急な坂。
そして地球屋があるという設定のロータリー。
まるで物語の主人公になったような気分だった。
自転車を漕ぎきる自信がなくて、坂を登るのは常に徒歩だったけれど。

駅周辺には坂がなかったから、
当時の私は自転車を相棒にあちこち遊びまわった。
ケーキ屋、焼き肉屋、コンビニ、居酒屋。
ひととおりの店は揃っていて本当に暮らしやすかった。

なんといっても駅前にそびえる京王デパートの存在感といったら。
人生で初めて一人で洋服を買った。
ペットショップでいつもいやしをもらった。
暇なときはふらっと喫茶店に入った。

もう一度、何の条件もなしに、一人暮らしをしろと言われたら
私はきっとまた聖蹟桜ヶ丘を選ぶだろう。
知っている場所だからとかじゃなくて、本当に好きだから。

今でも私の心に残っている
「私の駅」といえば、聖蹟桜ヶ丘なのだ。

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