初期設定の愛 42.シャドーマン 幽体離脱
2010年 相馬市のビジネスホテル 東日本大震災の前年だ。
40歳くらいの頃だったろう。
平屋のロードサイドのホテルだ、かなり古い、おそらく昭和時代からあるのであろう。
玄関で靴を脱ぎ、靴箱へ靴をしまう。そこからは備え付けのスリッパで部屋へ向かう。共同風呂トイレの安宿だが、十分な設備だ。寝るだけなのだ。
ベッドはダブルベットだ。
夜中、何だか、ただならない気配を感じた。
ゴソゴソ、だれかがベットのまわりを動いている。
黒っぽい人影だ。
車での長時間の移動後、商談にも遅刻して大失敗した。かなり落ち込んでいたこともあり、早い時間にベットにはいっていた。
もう少しゆっくり眠りたかった。翌日も商談がある。
あ~、三次元の人間ではないな。すごい圧を感じる。金縛りになる程ではないが、その一歩手前くらいの強いエネルギーを感じる。
そのことがわかって、ひとまず安心した。
生身の人間が、ホテル室内でゴソゴソしてたら、これは大変である。
悪の意図はなく、善意で何かやっているようだ。
彼一人だけだし、まあいいか。
そう考えて、寝ることにした。
とにかく眠たかった。
彼を ”シャドーマン” と呼ぶことにしよう。

・・・・・・
ゴソゴソが随分長い。それにしても要領が悪い。
寝た振りしながら、神経をとぎすましてみた。
何をしたいのだろうか?
どうも私の身体から何かを引っ張り出そうとしているようだ。
かなりてこずっている。
魂、あるいはエーテル体か、アストラル体か、私の当時の知識では、それらを厳密に区別できてないが、まあ、肉体から、肝心な意識のある部分を抜き出そうとしている。
このシャドーマンと揉める気はない。彼のミッションだ。
そうなのだが、さすがに、そう簡単に大事なものを引き渡せない。
ひそかに、抵抗していたのだ。
おそらくシャドーマンにとっては想定外の苦戦だったと思う。
想定外なのは、私が気配を感じて半覚醒してしまった。寝た振りしながら抵抗していることだ。
半覚醒と書いたが、身体の脳はほぼ寝ている。私の意識体(魂?)が覚醒してしまっていたという感じだ。あるいは幽体がすでに分離していたのかもしれない。
まあ、シャドーマンの任務へのリスペクトがある。私にも好奇心がある。
抵抗感を好奇心がやや上回った瞬間に。 “よし、任せよう” そう考えた。
しばらくして、ベッドから下へ “ストン” と落ちた。
一度がくんと1メートル程度であろうか、落ちた。
そこでしばし停止している。

おそらく肉体はベッドの上に置いてきている。
それ以外の意識を持つ肝心な部分だけが落ちた。幽体離脱だ。
階下には、畳の部屋に炬燵がおいてあった。こたつの上にみかんがあったかどうかは確認できなかった。人はいない。その光景が見えた。数秒くらいだろうか、そのまま停止していた。

(ちなみに、物理次元ではこのホテルは地上1階平屋なので、地下に和室は存在しないはずだ。)
そこから一気に落ちる、その下の階、またその下の階、何フロアーくらいだろうか、10階建てのビル一棟分位は落ちたろうか。各階に部屋があったようだが、落下スピードが速くどんな状況かはわからなかった。

(このストーリーは夢ではない、まあ、幽体離脱だ。経験した方なら、その違いはおわかりでしょうか。まるで違う。シャドーマンに強制的に引っ張り落された。私もそれに無意識的に同意している。)
(次の瞬間、場所を瞬間移動した。)
山岳トロッコのようなものに乗車している。他に乗客はいない。運転手もいないようだ。かなり急な登り坂だが、登坂のわりにはまあまあのスピード感だ、観光トロッコのようなイメージだ。私がそれにのって、旅行気分を楽しんでいる。

進行方向の左はなだらかな傾斜地のようだが、その山の斜面に近代的な建物、ビル群が並ぶ。地球的なセンスではない。日本でもない、日本なら、すべての建物が建築基準法違反だろう。あ~、どこかの星だな、この時点でそのように感じていた。空はうす暗い。
(執筆をした現時点では、地底かもしれないと思い直してます。落下したのですから。)
右は切り立った崖で、その下は川が流れているようだ。渓谷の崖の脇を走っている。
川幅がかなり広い、対岸付近の川面が見える。川面にはビル群からの光が反射している。トロッコの真下あたりの川面は見えない。崖のぎりぎりをそのトロッコはドンドン走る。川にはたっぷりの水が流れている。

その傾斜を、どれくらいのぼったであろうか、しばらくして上がり切ると、平地へ出た。
両側に商店街か? 何やら低層の建物が並んでいる。道の真ん中をトロッコが走る。道幅は広く、かなり余裕がある。平地のためか少しスピードが速くなる。両側の建物が後ろに流れるスピードが増す。時速40-60Kmくらいの体感だろうか。
トロッコ以外に車のようなものは見えない。人や動物のような生命体も一切見えない。
私には見えなかっただけで、おそらく沿道に生命体はいたと思う。気配は感じた。こちらを見ていたかもしれない。おそらく周波数的な事情で私には見えなかったのかもしれない。
このトロッコだが、
何かゆらゆらと揺れる物体が複数、おどっているのか。音楽に合わせてゆれている。紙人形のようにも見える。ゆらゆらとゆれる複数の物体が、トロッコの車外へ身体を半分以上乗り出して風にゆれながら踊っている。
このダンサーたち、手足、身体、顔はあるが、全体的にひょろ長い。生命感がなく、無個性だ。感情があまり感じない。

このダンスにより気分はかなり高揚した。楽しいのだ。沿道の人(私には見えないが)も彼らのダンスと音?を楽しんでいるようだ。音と表現したのは、地球的な音楽とはちがい、何か一定の周波数、リズムをきざんだような感じだ。
私を歓迎してくれてるようだ。気分が高揚する音だ。とにかく楽しくて、ずっとこのままでいいと感じていた。何もストレスを感じない。
しばらく街の中をトロッコが走る、数キロメートルくらいだったろうか。時間の感覚はあまりないので正確にはわからない。
終点のようだ。

目の前に一軒の家、昭和40年台の日本の都市の郊外にありそうな木造の平屋だ。決して豪邸ではない、普通の古い一軒家だ。
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