今日を生きるということ#2
-小さな灯を抱えて-
朝の空気は、少し柔らかかった。
昨日よりほんのすこしだけ、
光の色があたたかい気がした。
テーブルの上には、読みかけの本。
開いたままのページが
「続きは今日だよ」と
静かに待っている。
パソコンがゆっくりと灯る。
その青い光に照らされて、
心の奥で眠っていた “やる気の種” が
そっと弾ける気がした。
通知が鳴り、
積み上がったタスクたちが
姿を見せはじめる。
ため息が漏れそうになる。
けれど――
昨日より、ほんの少しだけ
心の重さが軽かった。
なぜだろう。
ふと、あの言葉を思い出す。
「続けてるだけで、すごいと思うよ。」
その一言は、
日に日に輪郭を増して、
今日も背中をそっと押してくれる。
昼休み。
窓から差し込む光が、
机の上に小さな影を落とす。
その影をぼんやり眺めながら思う。
「成長って、劇的じゃなくていい。」
昨日より、少しだけ。
心がやわらかくなっていたら、
それで十分だ。
午後の会議。
誰かのミスで予定がずれる。
昔の自分なら、
きっと苛立っていた。
でも今日は違う。
「じゃあ、どうしようか。」
そう言えた自分に、
少し驚いた。
長い時間をかけて育った
“余白” のようなものが
そっと肩に寄り添っている気がした。
夕方。
窓の向こうの空が、
オレンジから紫へ、そして紺へ。
今日だけの色が、
ゆっくりと移ろっていく。
街を歩く人の影も、
昨日とはまた違う速さで流れていた。
帰り道。
学生たちの笑い声が聞こえる。
その明るさが、
未来の音みたいに聞こえた。
ふと思う。
「明日は、今日より良くなるかもしれない。」
根拠なんてない。
でも、そう思えるだけで、
心がふっと軽くなる。
夜。
静けさの中で、深呼吸をひとつ。
今日やりきれなかったことも、
途中で投げ出したことも、
全部抱えたままでいい。
だって――
“生きる”って、
完璧と真逆の場所にあるのかもしれない。
布団に入る前、
窓の外を見上げると、
小さな星がひとつ輝いていた。
毎晩そこにいるわけじゃない。
でも、気づけた夜は特別だ。
明日もまた、
気づける何かがあるかもしれない。
そして朝が来る。
湯気の立つマグカップを包みながら、
まだ少し眠い目をこすり、
そっと息を吸い込む。
「今日も、悪くない。」
その一言で、
新しい一日が始まっていく。
※本作は『今日を生きるということ』をテーマで綴ったシリーズ作品です。
前作はこちら → https://note.com/koji_breath/n/n38d567c26618
