体内の警報装置:免疫システムを発動するメカニズム
アメリカのノーベル医学・生理学賞といわれる「ラスカー賞」が発表されました。
下記が今回の受賞内容です。
1.ジジャン・チェン:体内で火災警報器のような働きをする重要な酵素の発見。
2.ジョエル・ハベナー、ロッテ・ビェレ・クヌーセン、スベトラーナ・モイソフ:肥満治療用の薬の発見と開発。
3.クワライシャ・アブドゥル・カリムとサリム・アブドゥル・カリム:HIVの予防と治療に貢献
1つ目の研究について説明した記事を見つけたので少し掘り下げてみます。
ざっくり言うと、チェン博士の研究は、ウイルスや細菌などの外来DNAを感知し、免疫系を活性化させる仕組みを解明しました。
DNAは本来核やミトコンドリアに包まれていますが、たまにハプニングで外に脱出してそのまま細胞内を徘徊します。
過去の研究では、その浮遊した徘徊DNAを見つけて退治するインターフェロンの存在が知られていました。ただ、どのようにしてそのDNAを発見するのかが謎のままでした。
今回の研究で、その発動メカニズムが判明したわけです。
本来、その異常DNAを退治する酵素は免疫機能として働いていますが、状況によっては退治する要員が足りなくなってきます。
その要員不足を検知するのが、今回の研究の主役であるcGAS(サイクリックGMP-AMP合成酵素)という酵素です。
cGASが酵素の要員不足を検知すると、cGAMP(環状GMP-AMP)の生成を誘発し、それがインターフェロンを放出する「STING」の発動を要請し、これが直接的に異物DNAを退治するわけです。図示するとこんな流れになります。

記事ではcGASを火災警報器になぞらえていますが、なんとも生命の神秘を感じさせる巧妙なコミュニケーションです。
しかも、外来DNAだけでなく、HIVのようなウイルスに対してもこのcGASが重要な役割を果たすことがわかりました。
もっといえば、cGASは自己免疫疾患だけでなく、加齢性黄斑変性症やパーキンソン病など、様々な神経疾患に対する新たな治療法の可能性を拓きました。
ただ、1つだけ難点を言えば、たまに間違えて指示することもあり、健康な個所も攻撃してしまう自己免疫疾患の原因にもなります。
いずれにしても、この検知機能をうまくコントロールすることが出来れば、免疫機能に影響を与えることはできます。
そして今度はこのcGAS自身のメカニズムの研究が進んでおり、2024年になって京大グループがこんな報告をしています。
ようは従来説を否定する結果が起こったので、再考すべきというものです。まだ出たばかりなのでどう転ぶかはわかりませんが、この神秘の体内センサーcGASには多くの人がアンテナを向けるでしょう。
