【グローバルリテラシー】あの子は、機内でみんなの家族になった
「隣の席は、一人旅の男の子です。このままでよろしいですか?」
客室乗務員にそう聞かれたとき、何のことかすぐには分かりませんでした。
2015年、ホーチミンに現地法人を開設してから、翻訳・調査・日本企業のベトナム進出支援を続け、何度も現地へ通うようになっていました。
いつもは成田からベトナム航空の直行便。でも、そのときはチケットが取れず、初めて台湾のチャイナエアラインを使うことに。台北(隣の桃園市の桃園国際空港)経由で、ホーチミンへ向かいます。
まず、成田から台北へ。台北からホーチミン行きの便に乗り継ぎ、仕事をしようとPCを開いたところで、冒頭の問いかけがあったのです。
聞けば、ベトナムの両親のもとへ、一人で会いに行く台湾の小学生とのこと。嫌なら席を替える、と言うのです。
なぜそんなことを聞くのか分からないまま、席を移動する理由も特になかったので、このままでOKと答えました。
言葉はいらなかった
やって来たのは、人なつこい笑顔の男の子。まだ、低学年にしか見えません。言葉はまったく通じないのに、ひっきりなしに話しかけて来ます。そして、じゃんけん、指遊び、トランプ。お互い何を言っているのか分からないまま、小一時間、二人で遊びました。
疲れたのか、彼はやがて眠ってしまいました。こんな小さな子が一人で国際線に乗るなんて、えらいなーと思いつつ、僕もPCを再開します。
でも、全然気づいていませんでした。この様子が、機内でずっと客室乗務員に見られていたことに。
機内食のあと、突然乗務員がやって来て、ハーゲンダッツを笑顔で手渡してくれました。
「お忙しいのに子どもの相手をしてくださり、本当にありがとうございます。」
なるほど、最初に席を聞いてきた理由が分かりました。子どもの相手なんてしていられない、忙しいビジネスパーソンも多いのでしょう。
そして、同じ思いを持っていたのは、彼女だけではありませんでした。
拍手の理由
ホーチミンに到着。空港で待っているはずの両親に引き渡そうと、男の子の手を引いて出口へ向かうと、狭い通路に、乗務員たちがずらりと並んでいます。その中には、パイロットの姿も。
「ミスター・オダジマ、本当にありがとうございました!」
拍手で、僕らを送り出してくれたのです。
たまたま隣になった子どもと、ほんの小一時間遊んであげただけ。それをあんなふうに喜んでもらえるとは、思ってもみませんでした。
機内の他の乗客は、僕たちのことを気にしていなかったと思います。「親子でベトナム旅行かな?でも、なんか言葉が変だな?」くらいのものでしょう。
でも、チャイナエアラインの乗務員たちは、ずっとあの子を見ていました。
もちろん、お客様全員に快適な空の旅を届けたい。小さな子どもに何かあれば責任問題にもなる。そういう思いもあったでしょう。
でも、彼らのあの対応は、それだけでは説明がつかない気がするのです。
僕の想像ですが、彼らにとってあの子は、自分の家族のような存在だったのではないでしょうか。
一人の小さな同胞の子どもを、外国人が我が子のようにかわいがっている。それを見て、まるで自分の家族がそうされているように、うれしくなったのではないでしょうか。
僕は一瞬で、チャイナエアラインのファンになりました。
