【日本リテラシー】富山を語れる県民へ、日本を語れる日本人へ
2日前の投稿で、
富山県が「寿司といえば、富山」という合い言葉を掲げ、
県のブランディングを再起動した話を書きました。
そして、その達成度を測る指標として、
2032年までに東京、大阪、愛知で「寿司といえば富山」と答える人を90%にする、
という目標を掲げたことも。
でも実は、もう一つの指標を掲げています。
「富山県民自身が、友人に富山の寿司を積極的にすすめる割合を90%にする」
僕はむしろこの2番目の言葉に、
富山県民にとって本質的に大切なことが言語化されていると感じました。
この戦略づくりに関わったクリエイティブディレクターの高木さんは、
富山の人たちについて、こんなことを語っています。
『他県の人から富山のことを聞かれると、「なにもないちゃ」と答える控えめな人が多い。』
おそらく地元にとっては、富山の良さは身近すぎて、特に意識する対象ではないのでしょう。
あるいは、自分たちのことを大きく語らない、日本人らしい謙虚さの表れなのかもしれません。
では、本当に富山には何もないのでしょうか。
そんなことはありません。
世界に誇れるたぐいまれなものがあります。
その一つが、富山湾です。
富山湾の何がすごいのか
富山湾のすぐ背後には、標高3,000メートル級の立山連峰がそびえています。
その山頂から水深1,000メートルの海底まで、一気にくだります。
その高低差は約4,000メートル。
岸から20km沖に出ると、そこはもう1,000mの深海。
世界的に見ても、とても珍しい地形です。
そして、富山湾は性質の異なる水が重なっています。
表面には、7本の川から流れ込む淡水の影響を受けた水。
その下には、南から来る暖かい対馬暖流。
さらに深い場所には、冷たく栄養分の多い日本海固有水があります。
加えて、立山連峰に降った雨や雪が海底から湧き出してくる。
森の栄養が、川と地下水の両方から海へ運ばれているのです。
こうした地形、水、海流が重なり、
富山湾には豊かな生態系が生まれました。
春の夜、青白く光りながら海岸近くまで押し寄せるホタルイカ。
「富山湾の宝石」と呼ばれるシロエビ。
寒ブリ、ベニズワイガニ、バイ貝、ゲンゲ。
日本海に分布する約800種の魚のうち、
実に約500種が富山湾に生息するとされています。
しかも、漁場と港が近いため、
獲れた魚を鮮度を保ったまま食卓まで届けられる。
富山湾が「天然のいけす」と呼ばれるゆえんです。
そもそも、富山が「寿司といえば、富山」を掲げられたのも、
この湾あってこそなのです。
富山を語れる県民へ
2014年、富山湾は「世界で最も美しい湾クラブ」という国際組織に加盟しました。
世界でも45か所、日本では5か所しか選ばれていません。
立山連峰を望む景観だけでなく、
豊かな生態系や環境を守る取り組みが評価された結果です。
これほど特別な湾が、目の前にある。
それでも富山県民は、「なにもないちゃ」と答えてしまいます。
意識しなければ、知ろうとしない。
知らなければ、語れない。
語れなければ、伝わらない。
「寿司といえば、富山」を掲げることで、
富山の人たちはいま、
富山を知り、富山を言語化し、
富山を語れる県民になるためのトレーニングに挑戦している。
そんな風にも見えるのです。
日本を語れる日本人へ
これは、富山だけの話ではないと思います。
20年前と比べて、僕たちが外国人と接する機会は、
比べものにならないほど増えました。
去年日本を訪れた外国人の数は、約4,200万人。
20年前の6倍以上です。
それでも、世界一のフランスは年間1億人超。
日本のポテンシャルを考えれば、
この数は今後ますます増えていくでしょう。
等身大の日本を知りたいと思っている人は多くいます。
そして、当の日本人の口から日本のことを聞きたいと思っています。
日本の自然や歴史や文化の中で育まれた、
僕たちが大切にしていること、
感性や美意識、世界観や人生観についてです。
ということは、
富山の人たちの挑戦は、僕らの挑戦でもあります。
日本を知り、日本を言語化し、
日本を語れる日本人を目指すというトレーニングです。
先ほどの高木さんは、この挑戦のゴールをこう語っています。
「10年後、県民の方々と『富山最高!』『富山出身で良かった!』と語り合えることが自分のゴール」
いいゴールだなと思うのです。
僕も外国人に日本のことを尋ねられたとき、
自分の言葉で自信を持って楽しく語っている。
そんな姿を目指して、足元の日本を学び続けます。
