「礼文島にアツモリソウを見に行く」kojimamaの脇道、寄り道、廻り道 10
七月、那須の茶臼岳を越えて朝日岳に向かって行くのは楽しい。細い山みちの先をイワヒバリがトントンとポッピンして行く。ついてくるのではない。どこまでも先導してくれるのが不思議で可愛い。
脇の斜面には高山植物。キンバイの仲間、ツガザクラの仲間、ヒメシャジン。苦労して登ってこそ出会える、登山のごほうびだ。ところが北に行けば、登らずに高山植物が見られるという。例えば花の島と呼ばれる礼文島。
氷河期、那須あたりの平地には、寒さに適応した植物が栄えていた。間氷期に入り地球が暖かくなると、これらの植物は寒い所へと移動した。あるものは高い所へ。あるものは北へ。その結果那須の高山植物が礼文の海に近いところで見られるというわけ。
2022年、礼文島を訪ねた。遅まきながらレブンアツモリソウを見に行った。どのように保護されているのか知りたかった。というよりむしろ、絶滅しないうちに会っておきたいという思いだった。
アツモリソウは蘭の仲間で、花の下部の丸い袋・唇弁が大きく膨らんでいる。これが平敦盛が戦場で馬に乗るときにつけた母衣に似ている、ということでこの名がついた。昔は島じゅうに生えていて、子どもたちは袋の部分を両手でパンと叩いて、潰して遊んでいたという。現在では盗掘によりほとんど見られなくなり、希少種に指定されている。
保護地は道路脇の明るい開けた場所にあった。低い草丈の草原に数株。黄色がかった白い花が清楚だ。おっとりというか無邪気な雰囲気を醸している。
保護活動をしている人が木道の入り口で募金を募っている。一口千円の寄付をすると可愛いピンバッチが渡される。「バッチを買いに行こう」と言っている人がいたが「買う」ということばに、保護活動との微妙なズレを感じる。
「わざわざ見にきたのはこんなものだったの。ポツポツしか無いじゃない。しっかり復活するまでは、謳い文句にして客寄せしちゃいけないわ」とツアー参加者が言った。
一度絶滅しかけた植物を復活させるのは大変なことだ。特に成長の遅い寒冷地では。謳い文句にして広く知ってもらう。愛らしい姿を見たいと思う人が増える。それも保護活動の助けになるのにと思った。
植物が希少になるのが早いか。人間の意識が変わるのが先か。多くの場合人間は希少になって初めて気づく。ともあれレブンアツモリソウは気づかれ、保護されて順調に増えている。
