聖人の審判 第1章
📘『聖人の心配』
第1章:揺れる国会、沈む支持率(冒頭1,000文字程度)
「人は見えるところを見るが、主は心を見る。」
― サムエル記上 16:7
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午前八時、国会議事堂前に沈黙が降りていた。
雨の予報はなかったはずだが、空には鈍い雲がたちこめている。
総理・石橋聖人(いしばし まさと)は、官邸の窓からその空をしばらく眺めていた。
灰色は、境界を消してしまう色だ。
善と悪、光と影、正義と偽善。
どこまでも混じり合い、輪郭をぼかしていく。
「閣議の準備が整いました」と秘書官が声をかける。
石橋は小さくうなずき、聖書を閉じて立ち上がった。
政治という舞台に立つ前に、彼は毎朝、ひとことの祈りとともに言葉を読む。
もはや習慣ではなく、儀式だった。
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「総理、昨日の経済対策案について、財務省が再調整を求めてきています」
「再調整…」
「内容が抽象的すぎると。具体的な財源もなく、減税方針にも一貫性がないと」
「それがいいんです」
石橋は静かに言った。
「抽象的であることが、希望を残すんですよ」
秘書官は困惑の色を隠せないまま、後に続いた。
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テレビには、「迷走する政権」「沈む支持率」「求心力のない指導者」という文字が躍る。
ネットは嘲笑に溢れ、解説者たちは口を揃えて「石橋総理は終わった」と語る。
彼はすべてを、知っていた。
想定通りだった。
ただ、まだ誰もそれを“作戦”だとは思っていないことが、石橋にとっての余裕だった。
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「国を変えるには、まず党を壊さなければならない」
その言葉が、今朝の祈りの中で何度も浮かび、消えた。
神よ。
私は間違っているのか。
それとも、あなたが私にこの“役”を与えたのか。
