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鉾建ての街から「海」の響きへ

祇園祭の前祭を一週間後に控え、四条烏丸周辺では鉾建てが始まりました。

この日は、菊水鉾、月鉾、長刀鉾、鶏鉾の周辺を歩きながら、組み立ての様子を見て回ることにしました。空は曇っていたものの、気温と湿度は高く、少し歩くだけで汗がにじみます。いよいよ京都の夏が本格的に始まったことを、身体で実感するような天候でした。

四条室町(函谷鉾を望む)

鉾建てでは釘を使わず、木材を縄で固定する「縄がらみ」と呼ばれる伝統的な技法が用いられます。道路上に並べられた木材を、山鉾町の人々や職人たちが声を掛け合いながら組み上げていく。普段は自動車が行き交う街なかに巨大な構造物が少しずつ姿を現していく光景には、何度見ても胸を動かされます。

月鉾の鉾建て

祇園祭というと、宵山や山鉾巡行の華やかな場面が注目されがちです。しかし、その舞台がどのようにつくられていくのかを間近で見られる鉾建ても、祭の大切な見どころの一つです。長く受け継がれてきた技術が、現在の京都の街の中で実際に使われている。その事実を目の前で確かめられるところに、鉾建てならではの面白さがあります。

菊水鉾

しばらく山鉾町を歩いた後は、地下鉄に乗って北山へ。京都コンサートホールで開催された、沖澤のどかさん指揮、京都市交響楽団の第713回定期演奏会を聴きました。

月一度の愉しみ

この日のプログラムは、次の四作品です。

林光《吹きぬける夏風の祭》
吉松隆:ファゴット協奏曲《一角獣回路》
ラヴェル:《鏡》管弦楽版から「海原の小舟」「道化師の朝の歌」
ドビュッシー:交響詩《海》

前半に演奏された二作品は、いずれも京都市の委嘱によって生まれた作品です。なかでも林光の《吹きぬける夏風の祭》は、祇園祭をイメージして書かれたとのこと。鉾建てを見てから聴く作品として、これ以上ない組み合わせでした。

続く吉松隆の《一角獣回路》では、ソフィー・デルヴォーさんがファゴット独奏。ファゴットという楽器から想像する素朴で柔らかな音色だけでなく、鋭さや軽快さ、時には複雑な響きが次々と現れます。独奏とオーケストラが緊張感を保ちながら交錯する、聴き応えのある演奏でした。

後半はラヴェルとドビュッシー。精密に組み立てられた響きの中から、波や光、風景の移り変わりが浮かび上がります。沖澤さんと京響の演奏は、細部まで緻密でありながら、決して小さくまとまりません。特に最後の《海》では、音の層が次第に厚みを増し、大きなうねりとなってホールを満たしていく展開に圧倒されました。

演奏会が終わると、再び四条烏丸へ戻りました。昼間に見た鉾がどこまで組み上がったのか、進み具合を確認したくなったためです。数時間前には木組みの途中だった鉾が、少しずつ見慣れた姿へ近づいていました。

四条烏丸(函谷鉾)

街なかで進む鉾建てと、コンサートホールで聴いた京都ゆかりの作品。祭と音楽という異なる文化を、一日の移動の中で続けて味わえるのは、京都で暮らす楽しさの一つかもしれません。祇園祭は、華やかな宵山を迎える前から、すでに街のあちこちで動き始めています。

おまけ――夜の山鉾町で

鉾建てが始まる五日ほど前、夜のスナップ撮影に出かけた際には、各山鉾町から祇園囃子が聞こえてきました。

町会所の二階などで行われる「二階囃子」です。まだ鉾の姿はありませんが、鉦や笛、太鼓の音が通りへ流れ出し、夜の街に祭の気配を広げていました。

姿よりも先に、音から始まる祇園祭。あの夜から少しずつ膨らんでいた期待が、鉾建ての開始によって、いよいよ現実のものになってきました。

長刀鉾
月鉾

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