私は茄子で空を飛ぶ3

3話

5年前…

美琴はとても素敵なところへ嫁いだと思った。広々として緑が豊かだ。
大地と共に生きる農家は美琴にとって憧れに近かった。大地に顔を近づけると様々な営みが見える。
アリが卵を抱えて列を作っている。
大小のバッタが飛び交う。
トカゲが視線に気付き、急いで草むらへ入った。美琴は土の匂いを思い切り吸った。懐かしい堆肥の香りが、僅かに鼻を掠めた。

結婚式が済んで、生活も落ち着きを取り戻した頃、美琴は近所のいちご農家へいちごを買いに、久太郎と出掛けた。
「おはようございます!タケシさん、いちご3パック下さい!」
近所のいちご農家、四谷家はよくいちごをくれる。ちなみに四谷のおばあさんはおしゃべりとコーヒーをこよなく愛する人で、久太郎の祖母が仲良くしている1人だ。その息子のタケシが、現在のいちごを継いでいる。
「おい久太郎、久しぶりに技ぁ見てけよ!結構いいやり方みつけたからよ、おらっ!」
私がいるから、きっと気を使って見せようとしてくれたのね。いい人だな…?
美琴は目を見開いた。久太郎はおおーとつぶやいて手を叩いた。
ハウス全てのいちごが、まるで糸がついているかのように宙に浮いていた。美琴の様子に気付いたタケシは焦っていた。
「久太郎、まだ教えてなかった?これ普通の人はびっくりするぞ?」
美琴は怯まず質問した。
「すごい機械をお持ちなんですね!事前に糸でも付けておくんですか?」
「…」

タケシは久太郎の肩をぽんとたたき、いちごを3パック渡した。

千葉県のこの地、六本ヶ丘の成り立ちは、約70年前に遡る。かつて戦争をしていた時代、農業のスペシャリストとなるべく全国から若き精鋭達が集められ開拓団となった。彼らは遠い異国の地で農業を指導する立場となる、はずだった。しかし戦争は終わり、千葉の地で生きていくことに。

その頃から、六本ヶ丘には非常に高い「技」を持つものが次々と現れた。全国にいた精鋭達を集めたせいだろう。日本農業のパワーバランスが崩れると地方から反対の声が上がり、各地で暴動が起きる事態となったらしい。

しかしこの時は、全国の農家が手を合わせることになるとは誰も予想出来なかっただろう。

ダンゴムシのコロは、ある日から何かに備えるように、甲殻が硬くなっていった。


#創作大賞2024 #漫画原作部門
 

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