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AIが謝っても、心が動かない理由|感情のプロが16年で見つけた「感情を読む力」を磨く実践法#12


こんにちは、心羅みきです。 大手通信系コールセンターで管理者として
16年・5万人のクレーム対応と感情に向き合ってきた「感情の翻訳家」です。


📖 この記事でわかること
・AIオペレーターに電話して実際に起きたこと
・AIが「できること」と「絶対にできないこと」の現実
・16年の現場経験から見えた、AIと人間の決定的な違い
・AI時代に「感情を読む力」がなぜますます価値を持つのか
・今日から使える「感情を読む力」を磨く3つの実践法
・職場・家庭で明日から変わる具体的な使い方


先に少しだけ、打ち明けさせてほしい。

私はコールセンターで16年間、人間として顧客の感情と向き合ってきた。 だからAIオペレーターには、正直、複雑な気持ちがあった。

「AIに人の気持ちはわからない」と、頭ではわかっていた。 でも先日、自分がAIオペレーターに電話をかける側になって、 それを体で理解した日があった。


これは、「伝わらない」「わかってもらえない」と感じたことがある人に特に読んでほしい話だ。

職場で。家庭で。日常の中で。 「ちゃんと話しているのに、なぜか伝わらない」 その経験が一度でもあるなら、この先を読んでほしい。


AIオペレーターに電話した日

ある日、銀行系のコールセンターに電話した。 用件はシンプルだった。手続きについて確認したいことがあっただけだ。

電話をかけると、AIオペレーターが出た。

「ご用件をどうぞ」

私は用件を話した。 でも、AIには私の用件に対応する選択肢がなかった。

「申し訳ございません。その内容はお受けできません。以下の番号を押してください」

何度か試みたが、どの選択肢も私の用件と噛み合わなかった。 やっと別の窓口に転送された。

でも、転送先はすでに営業時間外だった。

「代表電話におかけ直しください」 AIはそう言って、電話を切った。 代表電話も、営業時間外だった。


私はしばらく、スマホを持ったまま動けなかった。

怒りではなかった。 疲弊だった。

用件を伝えようとして、伝わらなかった。 たらい回しにされた。 最終的に「またかけ直してください」で終わった。

何も解決していないのに、ただ消耗した。

──そのとき、16年分の記憶が重なった。 電話口で怒鳴っていたあのお客様も、 無言になってしまったあのお客様も、 みんなこの疲弊を抱えて、電話をかけてきていたのだ。



怒りじゃなく疲弊

16年間の現場で見てきたことと、重なった

お客様がいちばん怒るのは、問題が解決しないときではない。 「誰も自分のことをわかろうとしていない」と感じたときだ。

AIオペレーターは間違いを言っていない。 マニュアル通りに動いている。

でも、私の用件の「文脈」を読もうとしない。 「この人は今、何を本当に必要としているのか」 この問いを、AIは持てない。

私はこの日、16年間で学んできたことを、 お客様と同じ側に立って、初めて体感した。


データが示す「人間にしかできないこと」

これは私の個人的な体験だけではない。

MMDLaboが2025年12月〜2026年1月にコールセンター従事者328人を対象に実施した調査によると、「人がやらないと解決できないカスタマーサポートがある」と答えた人は82.9% にのぼった。

その理由として最も多かったのは「顧客の要望や状況を深く聞き取ることが必要な応対がある」(58.5%)、続いて 「顧客の感情への配慮が必要な応対がある」(57.7%) だった。

現場のプロたちが、データで証明している。 感情への配慮は、AIには任せられない。

同調査のインタビューでは、こんなコメントも出ている。

「AIは感情を読むのがすごく苦手。その人が怒っているかどうかは、人間はあらゆる要素を使って判断している。そのレベルまでAIが追いつくのはまだ10年ぐらい多分かかる」

16年間現場にいる私も、まったく同じ感覚だ。


AIが「できること」と「できないこと」

AIオペレーターが得意なことは確かにある。

  • 定型的な問い合わせへの対応

  • 24時間365日の受付

  • 待ち時間のない即時対応

  • 感情的にブレない安定した対応

これらは本当に素晴らしい。人間にはできないことだ。

でも、AIにできないことがある。

「この人の用件の文脈を読む」こと。

人間のオペレーターなら、話を聞きながら「ああ、この方は〇〇のことで困っているんだな」と判断できる。選択肢に当てはまらなくても、適切な窓口に繋げられる。

AIにはその「判断」ができない。 選択肢の外側にある用件は、AIにとって存在しないも同然だ。


「感情の消耗」はAIには見えない

もう一つ、AIにできないことがある。

「この人が今、どれだけ消耗しているか」を感じること。

私が電話を切ったとき、疲弊していた。 でもAIにはそれが見えない。

人間のオペレーターも、営業時間外の窓口には繋げられない。 それは同じだ。

でも、人間ならこう言える。

AIの答え 「代表電話におかけ直しください」

人間の答え 「お手数をおかけして大変申し訳ございません。 本日はすべての窓口が営業時間外となっております。 明日、直接おかけいただける番号をご案内いたします。 メモのご準備をお願いできますでしょうか?」



AIオペレーターと人間

ただし、これはすべての人間が言えるわけではない。

相手の感情から逃げずに受け止め、 その奥に何が積み重なっているかを静かに読み取ってきた人間にしか、言えない言葉だ。

うまくいかなかった対応を何度も振り返った夜。 怒鳴られても、自分を責めながら翌日また電話を取った日。 自分自身も理不尽さにモヤモヤしながら、それでも相手の感情の奥を探り続けてきた積み重ね。

その苦労が、感情を「翻訳する力」になる。

失敗が多かった人ほど、うまくいかない経験を重ねてきた人ほど、 感情の奥にあるものが見える。

だから、まさにあなたにできる。

AIにはこの「気持ちの回復」ができない。 なぜなら、AIには「消耗した経験」がないからだ。


コールセンター16年で見えた「人間にしかできないこと」

お客様は問題を解決してほしいのではない。 「自分のことをわかってほしい」のだ。

問題が解決しなくても「この人は私のことをわかってくれた」と感じれば、怒りが収まることがある。 逆に、問題が解決しても「誰も私のことをわかろうとしなかった」と感じれば、怒りは収まらない。

AIは問題を「処理」できる。 でも、人間の「わかってほしい」という感情には応えられない。


AI時代に「感情を読む力」はどこへ向かうのか

AIオペレーターが普及するほど、こういうことが起きる。

定型的な問い合わせはAIが処理する。 でも、AIで対処できない「複雑な感情を持った人間」は、最終的に人間のオペレーターのところに来る。

先ほどの調査でも、こんなコメントが出ていた。

「DXが進むほど、人と喋りたくなる人が一定数出てくるだろう。規模は小さくなるかもしれないが、なくならないと思う」

つまり、これからの人間オペレーターに求められることは、今よりずっと高度になる。

AIが処理できなかった、もっとも難しい感情的な状況を扱う人間。 その人間に必要なのは、マニュアルではない。 感情を読む力だ。

これはコールセンターだけの話ではない。

上司の機嫌が悪いとき。 パートナーが不機嫌なとき。 子どもが急に泣き出したとき。 部下がやる気をなくしたとき。

「この人の感情の奥に何があるか」を読める人間の価値は、AI時代にますます上がっていく。

あなたが日常の中で積み重ねてきた「感情を読む経験」は、 思っている以上に、価値がある。


感情を読む力を今日から磨く3つの実践法

ここまで読んで、「感情を読む力が大事なのはわかった。でも、どうやって磨けばいいのか」と思った方もいるだろう。

16年・5万人のクレーム対応の中で、私が実際にやってきた方法を3つ紹介する。特別な才能はいらない。今日から、誰でもできる。


実践法①:表面の言葉ではなく「沈黙」を観察する

怒っている人が何を言っているかより、何を言わないかに注目してほしい。

例えば、お客様が「配送が遅い」とクレームを言ってきたとき、表面の言葉だけ聞けば「配送の遅延」が問題に見える。でも、私はそこで一度、沈黙を作る。

「配送が遅れてしまったということですね。大変ご迷惑をおかけし、申し訳ございません」

そう言って、少しだけ間を取る。

すると、お客様が続ける言葉が変わることがある。

「実は、誕生日プレゼントだったんです」 「急ぎで必要だったのに」

沈黙の中に、本当の感情が出てくる。

これは職場でも家庭でも同じだ。相手が怒っているとき、すぐに反論したり謝ったりせず、少しだけ沈黙を作ってみてほしい。相手が本当に伝えたいことが、その後に出てくる。


実践法②:「なぜ今、この人は怒っているのか」を考える

同じ内容のクレームでも、Aさんは電話をかけてきて、Bさんはかけてこない。その違いはどこにあるのか。

あるいは、昨日は穏やかだった人が、今日は激怒している。何が変わったのか。

答えは、「今日までに何が積み重なったか」にある。

人の感情は、その瞬間だけで生まれるのではなく、1日の中で少しずつ積み重なっていく。

朝、雨に降られた。 満員電車で押された。 上司に理不尽に叱られた。 ランチに行こうと思った店が休みだった。

そして最後に、配送が遅れた。

表面的には「配送が遅れたこと」に怒っているように見えるが、実際には1日分の感情が積み重なって爆発している

だから、相手が怒っているとき、「なぜ今、この人は怒っているのか」を考えてみてほしい。表面の出来事だけでなく、その人が今日何を経験してきたかを想像する。それだけで、対応が変わる。


実践法③:相手の感情を「天気」で例え、久しぶりの友人に会うイメージを持つ

これは私が16年間で一番役に立ったテクニックだ。

怒っている人を目の前にすると、こちらも感情的になりやすい。でも、相手の感情を「天気」に例えると、不思議と冷静になれる。

「ああ、今日はこの人、雨模様なんだな」 「雷が鳴ってるな。でも、雨はいつか止む」

天気は、誰のせいでもない。雨が降っても、それは自然現象だ。人の感情も同じだ。怒りは、その人の内側で起きている「天気」のようなものだ。

私はクレーム対応の途中で、心の中で「今日は曇りですね」とつぶやいていた。そうすると、相手の怒りに巻き込まれず、冷静に対応できた。

さらに私は、もう一つイメージを使っていた。

小学生以来会っていなかった、仲が良かった友人に久しぶりに再会するイメージだ。

「久しぶり!どうしてたんだろう?」

そう思うと、相手への興味が自然に湧いてくる。怒っている人に対しても、「この人、今日はどうしたんだろう?」と思えるようになる。

相手への興味こそ、感情理解につながる。

これは職場でも家庭でも使える。上司が不機嫌なとき、パートナーがイライラしているとき、「ああ、今日は天気が悪いんだな。どうしたんだろう?」と心の中で思ってみてほしい。自分の感情が楽になり、相手の感情が見えてくる。


職場・家庭で「感情を読む力」を使う3つの具体例

ここまで読んで、「でも、実際にどう使うの?」と思った方もいるだろう。

職場と家庭、それぞれで「感情を読む力」を使った具体例を3つ紹介する。


シーン①:上司が不機嫌なとき
表面の出来事:上司から「仕事が遅い」と叱られた。
表面の感情:怒り、不満
奥にある感情:実は上司自身がプレッシャーを抱えている。上からの締め切りが迫っていて、焦っている。
感情を読んだ対応:まず仕事が遅いことを素直に謝る。そして上司を尊重している旨を伝え、少しだけ頼る。
「申し訳ございません。〇〇課長のように仕事ができる人になりたいと思っています。恐縮ではあるのですが、〇〇課長であればどうタスクを進めるか、アドバイスをいただけませんか?」
この一言で、上司の表情が変わることがある。なぜなら、上司は「部下が自分のプレッシャーに気づき、頼ってくれた」と感じるからだ。表面の「仕事が遅い」という叱責の奥には、「助けてほしい」「一緒に乗り越えたい」という気持ちが隠れていることが多い。

シーン②:パートナーが怒っているとき
表面の出来事:パートナーから「洗い物をしてない」と怒られた。
表面の感情:怒り、不満
奥にある感情:日中の疲れが積み重なっている。仕事で嫌なことがあった、子どもの対応で疲れた、など。
感情を読んだ対応:すぐに反応せず、少し時間を置いて、いたわる言葉をかける。
「どうしたの?今日は何かあった?疲れてるね」
ここで大事なのは、間を置くタイミングだ。怒りが出た瞬間に問いかけると、火に油を注ぐことがある。少し時間を置いて、相手の怒りが少し落ち着いたタイミングで声をかける。
この一言で、パートナーが本当の話をし始めることがある。「実は今日、職場で嫌なことがあって」「子どもが言うことを聞かなくて疲れた」など。表面の「洗い物」は、実は本当の問題ではなかった。

シーン③:部下がやる気をなくしたとき
表面の出来事:部下が最近、仕事のミスが増えた。元気がない。
表面の感情:無気力、やる気のなさ
奥にある感情:認められていないと感じている。頑張っても誰も見てくれない、という孤独感。
感情を読んだ対応:小さな成果を具体的に言葉で伝える。そして、他の人と話題にしていたことを添える。
「実は、〇〇部長とも話してたんだけど、先週の資料、すごくわかりやすくてとても助かったよ」
この一言が持つ意味は大きい。
部下にとって、「自分の仕事が他の人との話題になる」ということは、「存在に意義がある」と感じる瞬間だからだ。他の人と話題にして褒めるくらい役に立ったという事実が、部下の心を動かす。
私自身も経験がある。会社のトップ層とクライアント様のトップ層が出席する重要会議で、私の対応が話題になり、とても褒めていただいたことを後日聞かされた。そのとき、自分の存在に意義を感じた。話題にしてもらえるほど、自分は役立つ存在なのだ、と。
やる気のなさの奥には、「認められたい」「意味のある存在でありたい」という気持ちが隠れていることが多い。


これらはすべて、私が16年・5万人のクレーム対応の中で実際に経験してきたことだ。

感情を読む力は、特別な才能ではない。観察と想像、そして状況への疑問があれば、誰でも磨ける。

私は部下によく言っていた。

「相手の状況に疑問を持て。怒っている、でも泣いている、でも、『どうして?』と相手の状態に疑問を持つんだ」

その疑問が、感情を読む力の入り口になる。


まとめ─AIオペレーターの先にいる「人間」の価値

AIオペレーターは便利だ。 定型的な処理は、人間よりずっとうまくやる。

でも、AIが処理できない場所に、人間が必要とされる。

「用件の文脈を読む」 「感情の消耗を感じ取る」 「わかってほしいという気持ちに応える」

これはすべて、感情を読む力がある人間にしかできない。

私がAIオペレーターに電話して心が折れそうになったあの日。 あの体験は、「人間にしかできないこと」を改めて教えてくれた。

あなたの「感情を読む力」は、AI時代にこそ輝く。 それは、誰かに奪われることのない、あなただけの資産だ。

そして、その力は今日から磨ける。

上司の不機嫌に気づいたとき。 パートナーの怒りに触れたとき。 部下の無気力を目にしたとき。

「どうして?」と問いかけてみてほしい。

その一歩が、あなたと相手の関係を、静かに変えていく。


📖 この記事を読んで、もっと深めたい方へ

「感情を読む力」の正体をもっと知りたい方は、 怒りの奥にある感情の構造を解説したこちらの記事へ。

そして「感情を読む力」をAI時代の経験資産に変える方法はこちらへ。

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出典:MMDLabo「コールセンター従事者に関する意識調査」 調査期間:2025年12月22日〜2026年1月5日 調査対象:コールセンター従事者328人 調査方法:インターネット調査


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