よかれと思った一言が距離を作ってしまう【ココロを軽くする短篇集】:第53話
よかれと思って言ったのに、少しだけ空気が冷えた。
夕方、娘がリビングで問題集を開いている。
ページをめくる音が、静かに続いている。
ペンは動いている。
その姿を見て、ほっとする。
【何気なく出た言葉】
『ちゃんとやってるじゃん』
そのまま言った。
自然に出たつもりだった。
娘は一瞬だけ手を止めて、
『別に』と返す。
そのあと、またペンを動かす。
【消えなかった違和感】
あれ、と思う。
褒めたのに、距離がある。
さっきより、少しだけ遠い。
何かがズレた気がする。
【引っかかる言葉の中身】
『ちゃんとやってる』
その言い方。
どこかで線を引いている。
できてる側と、できてない側。
そこに分けて見ている。
【見たくなかった視点】
正直、評価していた。
今の行動を、そのまま見るんじゃなくて、
基準に当てはめていた。
できてるか、できてないか。
その目線のまま言葉にしていた。
【崩れていた対等さ】
評価が入ると、関係が少し傾く。
言われる側と、言う側。
上と下みたいな形になる。
それが、違和感になって返ってきた。
【気づいてしまったこと】
私は関わっているつもりで、
判断していた。
そのまま見ていなかった。
だから、伝わらなかった。
【見えてきたこと】
人は安心したいとき、
評価で整理しようとする。
分かりやすくなるから。
でもそれは、
相手の行動をそのまま受け取れなくする。
私はそこにいた。
【今日のワーク】
評価を外して、実況する。
見えたままを、そのまま言葉にする。
私は少しだけ言い直した。
『今、集中してるね』
それだけにした。
娘は少しだけ顔を上げて、
『うん』と返した。
【ほどけていく空気】
さっきより、やわらかい。
同じ場面なのに、全然違う。
余計な意味を足さないほうが、
ちゃんと届く。
今日は、それをちゃんと感じた。
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よかれと思った言葉がズレることもありますよね。
少しだけ見方を変えると、関係が変わることもあります。
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