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暗闇の中、息子が灯した小さな光のはなし

寒いはずの空気なのに、
子どもたちの笑い声だけで、
公園がほんのりあたたかくなる瞬間がある。

あの日の りんごろうそく も、そんな時間だった。

真っ暗なホールに、静かな気配が満ちていく。
足音をひそめるように、人の気配が遠のいていく。

りんごろうそくの火が、ひとつ、またひとつ。
火が灯るたび、空気がすっと澄んでいくのがわかる。

どこからか、かすかに響く澄んだ音。
鐘の余韻が、胸の奥までゆっくり降りてくる。

普段の慌ただしい生活が、
その一瞬、そっと外に置かれたような
穏やかで、深い静けさの時間だった。

🌙 真っ暗なホールに浮かぶ、小さな光たち

シュタイナーの幼稚園で行われる「りんごろうそく」は、
一年に一度だけ体験できる特別な行事。

練習は一切ない。
本番は、本当にその一度きり。

暗いホールの中央には、
太陽に見立てた大きなろうそく。

子どもたちは、
りんごに挿した小さなろうそくを手に、
螺旋の道を、ゆっくり、ゆっくり歩いていく。

ひとり、またひとり。
自分の足で進み、
太陽の光を受け取り、
星の形に並べられた場所へ、そっと灯りを置く。

誰かに急かされることもなく、
比べられることもなく、
ただ「その子の歩幅」で。

その光景は、
まるで世界が息をひそめて見守っているようだった。

🌿 園長先生が教えてくれた、りんごろうそくの意味

園長先生は、こんなふうに話してくれた。

「りんごろうそくは、
子どもが自分の足で光に向かい、
その光を受け取って戻ってくる行事です。」

そして、静かに続けた。

「完璧じゃなくていい。
泣いてしまっても、ふらついてもいいんですよ。」

さらに、こんな言葉も添えてくれた。

「比べるのは、周りの子どもではありません。
去年のその子自身と比べてあげてください。
去年はどんな表情だったか、
どんな歩き方をしていたか。
その子の“成長の線”を見てあげてほしいんです。」

その言葉を聞いた瞬間、
胸の奥で、何かがふっとほどけた。

行事は、
上手にできたかどうかを見るためのものじゃない。
その子が、その子のままで
一歩進めたかどうかを見守る時間なのだと。

🍎 子どもたちの世界は、こんなにも温かい

待っている間、
おしゃべりがこぼれることもある。
落ち着かない様子の子もいる。

でも、りんごろうそくを受け取った瞬間、
空気が変わる。

息子は、りんごを両手で抱えるように持ち、
一歩一歩、確かめるように歩いていた。

普段は、
走って、転んで、また走って。
そんな毎日なのに、
この日はとてもゆっくりだった。

一歩、一歩を踏みしめるように。

星の上に、そっと灯りを置いたあと、
振り返ることもなく、
真剣な表情のまま歩き去っていく背中。

その姿が、
誇らしくて、愛おしくて、
胸の奥がじんわりと温かくなった。

「大丈夫。
子どもたちは、自分の足で、
ちゃんと前に進んでいける。」

あの小さな灯りが、
静かにそう教えてくれた気がした。

🌾 今日のやさしいひとこと

今日のやさしさは、
真っ暗なホールの中、
小さな灯りたちのあいだに落ちていました。

完璧じゃなくていい。
比べなくていい。
その子のペースで、光に向かえばいい。

あなたの日にも、
ふわっと心がほどける瞬間が
そっと訪れますように。

📚 そっと寄り添う物語たち

🌼 子どもと、わたしのやさしい日々
子どもとの日常の中にある、
ふっと心がゆるむ瞬間の物語をまとめています。

🌙 やさしく生きる練習帖
心が少ししんどい日。
刺激ではなく、やさしさで整えたい日に。

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