新指定国宝をいきなりコンプリート!?令和8年 新指定 国宝・重要文化財
私は大阪での単身赴任中に国宝鑑賞が趣味となった。訪問した国宝を記録するために「国宝トラッカー」というサイトを作り、日々国宝を散策している。令和8年にも国宝が3件追加され、合計1,152件となったが、早速その3件を観る機会が訪れた。
令和8年 新指定 国宝・重要文化財
京都文化博物館にて2026年4月25日(土)~5月17日(日)まで開催されている「令和8年 新指定 国宝・重要文化財」。新指定の国宝3件を一気に見ることができるということで、早速訪問した。
講演会「令和8年 新指定 国宝・重要文化財について」
4月29日(水)には、文化財調査官の皆さんによる新指定国宝に関する講演会があった。国宝を指定するまでのプロセスや新国宝の見どころを、日々文化財に携わっている方から直接聴くことが出来て、より興味をもって鑑賞することが出来た。
五百羅漢図(明兆筆、2幅狩野孝信補写)
京都・東福寺に伝来する南北朝~室町時代の画僧 吉山明兆(きっさんみんちょう)の筆による全50幅からなる大作である。東福寺にある45幅+狩野孝信による補写2幅が国宝に指定された(その他、東京・根津美術館に2幅、ロシア・エルミタージュ美術館に1幅ある)。今回は、この内、5幅が展示してあった。
明兆は「画聖」と呼ばれ、江戸時代までは雪舟と並ぶ人気があったということである。その明兆が10年かけて描き上げた本作は、現存する日本制作の五百羅漢図の中では最古の作例だ。とてもインパクトがあり、印象に残った。
論語疏巻第六
国宝は、重要文化財の中でも特に重要なものが指定される。つまり国宝になるためには、まずは重要文化財に指定される必要がある。
論語疏巻第六(ろんごそかんだいろく)は、2025年に重要文化財となり、わずか1年で国宝となった。文化財界に彗星のごとく現れたスーパースターである。
『論語義疏』(略して論語疏)とは、南北朝時代の儒学者 皇侃(おうがん、488年 - 545年)による論語の注釈書である。
『論語』は言わずと知れた孔子(紀元前6~5世紀)の言行をその死後に弟子たちが記録した書物である。日本がまだ縄文時代で文字も無かった頃の話だ。
論語の注釈書として著名なものには、魏の何晏(かあん)らによる『論語集解』(ろんごしっかい、3世紀)があるが、『論語義疏』は『論語集解』をベースに更に注釈を加えた書物である。講演会の中で説明があったが、文字に朱の点を入れてある部分が元の『論語』の文章でその他は注釈とのこと。説明を聴いてなければ絶対に分からなかった・・
『論語疏巻第六』は皇侃の死後、数十年しか経っていない中国の南北朝~隋の頃の書写だ。これほどの古い書写は中国にも残っておらず(出土資料を除く)、世界的に見てもダントツの古さを誇る。論語研究の第1級の資料であることは勿論、南北朝時代の字体や筆法といった書道史の研究の面でも大変貴重なものだ。
本書には藤原家の「藤」の字の朱方印があり、平安時代には藤原家が所有していたとされる。1500年前の中国で書かれ、1000年前の藤原氏が手に取った書物が今、私の目の前にある。なんとも感慨深い体験だ。
奈良県飛鳥池遺跡出土品
飛鳥時代の官営工房の跡からの出土品643点からなる。ガラスや金属を加工した完成品の他、制作するための工具などが含まれている。
その中でも特筆すべきは富本銭だ。講演会でも「教科書を書き換える発見」と仰っていたが、和同開珎よりも古い鋳造貨幣であると示す鋳型や鋳棹、未製品の富本銭や各種の工具が発掘されたのだ。私は当然、和同開珎が日本最初の鋳造貨幣だと習ったクチである。
また無文銀銭の断片も発掘されている。『日本書紀』の中の記述「今より以後、必ず銅銭を用いよ。銀銭を用いることなかれ」(天武12年、683年)とも整合する点も興味深い。飛鳥資料館にも是非足を運んでみたい。
今回みた国宝
・五百羅漢図(明兆筆、2幅狩野孝信補写)
・論語疏巻第六
・奈良県飛鳥池遺跡出土品
