小説|君に付箋を
失って初めて、ブランコへの愛に少女は気づきました。いつも遊んでいたブランコが公園から撤去されたのです。ひどく広く見える跡地。少女に妹ができるまえは何度も何度も両親に背中を押してもらったブランコでした。
「大事な場所に忘れたくないことを書いて貼るの」と母から教わった通り、少女は付箋を貼ります。かつてブランコがあった地面に。「楽しかった」とクレヨンで書いて。静かな公園の出口で振り返り、少女は手を振りました。
翌日は雨。少女は妹が生まれてからあまりブランコで遊ばなかったことを悔やみました。付箋は雨に流れてしまったからです。長靴で家へ帰りながら少女はブランコがあるうちに想いを伝えればよかったと頬を拭いました。
家に帰るとすぐに少女は三枚の付箋にクレヨンで丁寧に字を書きました。雨も弾くように表面を透明なテープで覆います。少女は付箋を貼りました。剥がれないよう手のひらで何度も何度も押します。母と父と妹の背中を。

ショートショート No.334
昨日の小説
#ショートストーリー #短編小説 #物語 #読書
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