小説|双子の手袋
冬夜の路地裏で双子が再会します。彼らは手袋でした。かつて左右の差のほかに見分けがつかなかった兄弟は、いまや別人。いや、別手でした。弟は別れた日のまま。兄はボロボロです。風に舞う誰かの汚れた紙幣を掴む兄。
十年前、兄弟はある少女への贈り物として生まれたのです。貧しい家で、母親が少女の誕生日に手渡した手袋でした。お金はなくとも温かい家庭で、短い時間ながら兄弟は幸せに暮らします。突風が兄を吹き飛ばすまでは。
少女の手から遠く離れた兄の話を弟は風の噂で聞きます。日銭を稼ぐため悪事に手を染めているようでした。弟は少女の手もとで大切にされました。双子の絆を裂いた風が、十年後に路地裏へ吹いたとき、勝負は始まります。
弟が勝てば兄は悪行から手を引くという約束でした。勝負とはジャンケンです。弟は兄が出す手を知っていました。兄はグー。弟は、パー。金を握りしめて離せなかった兄と、弟は握手します。汚れた紙幣は風に消えました。

ショートショート No.345
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