見出し画像

『太郎とトマトの夏休み』

夏休み、小学5年生の太郎はおじいちゃんと一緒にトマトを育てることにしました。

「自由研究にぴったりだね」とおじいちゃんはにっこり。

 

タネの中の5人のヒーロー

土の中はひんやりして、ちょっぴり暗いけれど、静かで心地よい場所。

小さなトマトのタネには、5人の小さなヒーローが住んでいます。


せのび名人オーキシン、分けっこ上手のサイトカイニン、ねむり番人アブシシンサン、目ざまし役ジベレリン、染色の魔法使いエチレン。


それぞれが芽や根、花や実を育てるために、タネの中で準備をしています。

 

目覚めの時間

春の光が土をあたため、やさしい風が葉っぱのかげを揺らす頃。

小さなたねは「ふわっ」と目を覚ます準備をします。

「まだ寝ていていいよ、あせらなくていいんだよ」

ねむり番人アブシジンサンが芽のまわりをそっと包み込みます。

芽は「ふーん、まだ眠っていようかな」と少しだけゆっくりしています。

でも、目ざまし役のジベレリンがあたりを見渡すと、起きるのにはちょうどいい季節みたい。

「そろそろ起きる時間だよ♪」

とやさしく呼びかけると、芽は「どれどれ、よいしょ、よいしょ」と土を押しのけて顔を出しました。


そこへ、せのび名人オーキシンは

「そっと背中を押してあげるよ」

といって芽をぐんぐん空へと伸ばしてあげます。

芽は「うん、ありがとう」と空へ空へと向かってのびていきます。


太郎もおじいちゃんも、芽が少しずつ伸びていく様子をワクワクしながら見守りました。

 


空に大地に広がって

土の下では、分けっこ上手のサイトカイニンが「こっちも広がれるよ」と声をかけます。

すると根っこが「すーすー、ぐんぐん」と伸びていきます。

芽や枝は、せのび名人オーキシン、分けっこ上手のサイトカイニン、そして目ざまし役ジベレリンと相談します。


オーキシンは「背中をそっと押して、空へ向かって伸ばそう」

サイトカイニンは「こっちも広がれるよ」

ジベレリンは「よし、ここで少しぐんと伸ばすタイミングだね!」


するとある日、くきのわきから小さな芽が「ぴょこん」と顔を出しました。

太郎はそっと手を添えて、「どの枝を伸ばそうかな…?」と考えます。

おじいちゃんはにっこり笑って、

「うん、そうしたら太い1本の枝に仕立ててみよう」とアドバイス。

芽や枝は「ふんわり」と形を変え、風が「さわさわ」、光が「きらきら」と通るようになりました。

トマトは自分のリズムで伸び、光や風、水の通り道を探して育っていきます。

人もトマトも心地よく

ある日、太郎はおじいちゃんと一緒に枝を見ます。

「わあ、葉っぱや枝がぎゅうぎゅうだ…」タローは目を丸くしました。

おじいちゃんは「よし、勢いが強すぎる枝はポキンと取ろう。枝分かれしているところからね」とやさしく教えてくれます。

タローはそっと枝を選び、力を入れすぎずにポキン。

「こうやって太い枝を1本にすると、よく実もついて光や風が通りやすくなるんだよ」とおじいちゃん。

やがて黄色い花が咲き、「ぽんぽん、ふわっ」と甘い香りが漂います。

そこへ小さな青い実がつきみるみる大きく育っていきます。


美味しくなっちゃった

夏休みもいよいよ中盤。

青いトマトはたわわに実っています。

そこへ実を赤くそめる魔法使いエチレンの登場です。

「そろそろ身を熟す時間だ。そーっと色をつけていくよー」

と魔法をかけると、青かった実は「ぽわわ〜んっ」と赤く色づきます。

あたりには美味しそうなトマトの香りがいっそう広がります。

 

みんなでいただきます

ある朝、太郎とおじいちゃんは手を合わせて、大きく熟した実をそっと摘み取りました。

「わあ、こんなに大きくなった!」太郎は大喜び。

「やったね太郎。いい香りだね!」とおじいちゃんも笑顔です。


家に持ち帰ると、お母さんが「まあ、たくさんできたのね!」と目を輝かせて褒めてくれました。

太郎もおじいちゃんも、少し誇らしげににこにこ。


夕食のテーブルには、赤くてぷりっとしたトマト、お母さんのトマト料理がたくさん並びます。

家族みんなで「いただきます!」

一口食べると、甘くてジューシーなトマトの味が口いっぱいに広がり、テーブルに笑顔があふれました。

 

おやすみ、そして次の夏へ

季節が過ぎ、実は熟して落ち、また小さなタネが土の中に戻ります。

ねむり番人アブシジンサンがそっと芽を包み込み、

「ふわぁ…もう少しお休みだよ」とささやきます。

目ざまし役ジベレリンも、せのび名人オーキシンも、分けっこ上手のサイトカイニンも、赤くそめる魔法使いエチレンも、

ひとつひとつの役目を終え、「すーっ」と静かに眠りにつきました。

土の中には、5人のヒーローと小さなタネが、次の春にまた芽を出すための準備をしながら、静かに時を待っています。

太郎も夏休みにたくさん食べたトマトの味を思い出しながら、眠りにつきました。

おやすみなさい。また次の夏に会おうね。

おしまい



※植物ホルモンの記事を見かけたのですが、いまいち難しくって。ということで絵本調のストーリーを作ってみました♪ わかりました?

ご覧いただきありがとうございます!



いいなと思ったら応援しよう!

山田憲吾 | 自然のしくみで社会をつくる 映像制作をはじめとした活動費に使わせていただきます。ありがとうございます!