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48歳の誕生日、家族に忘れられた。

48歳の誕生日は、夫の借金560万円をあぶり出していた。

なんだその誕生日。

自分で書いていても、なかなかひどい。

数日前から始まった聞き取り調査は難航していた。

「あと借金ない?」

「たぶんない」

「たぶん?」

「わからない」

「契約書とかある?」

「どこだろう」

「カードは?」

「わからない」

そんな会話を何日も続けていた。

私は人生で初めて、本気でスプレッドシートを使った。

家計簿好きだった私も、まさか夫の借金調査で表を作る日が来ると
は思わなかった。

そんな調査の真っ最中。

その日が、私の48歳の誕生日だった。

もちろん誰も覚えていなかった。

夫も。

子ども達も。

そして、危うく私まで。


家族の誕生日だけは、私が毎年プロデュースしていた。

数週間前からアナウンス。

今年は何が食べたい?と聞き、

ケーキを用意し、

父親の誕生日には、子ども達に「おめでとう」に「ありがとう」を添えるよう声をかける。

私は撮影係。

誰より大きな声で歌う担当だった。

しかし、自分の誕生日となるとそうもいかない。

毎年、一つだけお願いする。

「手紙をちょーだい。」

祝われるのは照れくさくて、子ども達が中心になり、
夫がケーキを用意してくれた。

けれど、今年は違った。

私まで忘れていた。

朝、目覚ましを止めて何気なく携帯を見ると、

誕生日だった。

なんとなく、いたずら気分で誰にも言わずにいた。


夕食の時間。

今じゃない。

でも、言いたくなった。

おもむろに、

「今日、お母さんの誕生日なんだけどね。」

おどけているけど、抑揚のない少し大きめの声で。

子ども達の顔が、一瞬で固まった。

我先に、

「お……おめでとう……!」

「手紙……おれ、明日、手紙書く!」

少し引きつった笑顔でも、ちゃんと祝ってくれた。

その流れで、子ども達の視線が夫に移る。

そのままの笑顔で。

さっきまで私に怒られていた夫は、

苦虫をかみつぶしたような顔で、

一度だけ、

無言で、

頷いた。

……ゆっくりと。

誕生日で、

頷いてもらえた。

私は、その横顔を見ていた。

来年から、おまえの誕生日なんて祝うと思うな


48歳の誕生日に知ったことは、夫の借金総額だけじゃなかった。

私は思っていたより、

「おめでとう」を待っていた。

おめでとう。

わたし。



#創作大賞2026 #エッセイ部門


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