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創業者こそ「録音」を習慣にすべき時代になった――会話を残すことが、知恵を資産に変える第一歩


私は最近、経営者、特に創業者の方々に対して、強く勧めていることがある。
それは、重要な会話を録音することを習慣にしてほしいということである。
この話をすると、まだ少し驚かれることもある。
しかし私は、生成AIがここまで一般化する以前から、当社の重要なミーティングや企画会議、打ち合わせなどを、できる限り録音してきた。私自身がそうしてきたし、社内の主要メンバーも、セミナーや講演で話す機会が多かったため、自然と「話した内容を残す」ということを続けてきた。
なぜそこまで録音を重視するのか。

理由は明快である。話した内容は、その場で消えてしまうからだ。
どれほど良い議論をしても、どれほど深い示唆があっても、それが記録されなければ、多くは人の記憶の中で曖昧になっていく。会議の直後は覚えていても、数日後には薄れ、数か月後には「たしかあの時、いい話が出たはずだ」という程度にしか残らない。これは、創業者同士の会話でも、幹部会議でも、お客様との打ち合わせでも、パートナーとの雑談でも同じである。
私は長年、IT活用や情報の共有化の重要性を経営者の方々に伝えてきた。
その中でずっと一貫している考え方がある。

それは、組織にとって価値のある情報は、記憶の中に置いておいてはいけないということだ。
とくに創業者は、日々たくさんのことを考え、話し、判断している。
そこには、単なる業務上の指示だけではなく、事業の本質に関わる考え方や、経験からくる直感、未来への構想、時には本人も意識していない大事な哲学が含まれている。ところが、そうしたものほど、きれいな文章にはなっていない。会議室の中でふと口にした一言や、移動中の会話、食事の場での雑談、何気ないやりとりの中に、本質が宿っていることが非常に多い。
これまでは、それを残すのが難しかった。

録音したとしても、後から聞き返すには時間がかかる。テープ起こしをするにも手間がかかる。議事録にまとめるにも、人が聞いて、人が整理し、人が要約しなければならなかった。だから、多くの企業では、よほど重要な会議でない限り、そこまで手が回らなかった。
しかし今は違う。
生成AIの登場によって、録音した会話を文字起こしし、要約し、整理し、論点を抽出し、今後のアクションまで見える化することが、以前とは比べものにならないほど容易になった。これは単なる便利ツールの話ではない。私はむしろ、経営における知的資産の残し方そのものが変わったと見ている。

経営には、数字や契約書や報告書だけでは見えないものが多い。
本当に大切なのは、人と人との対話の中に含まれている。
創業者の考え、幹部の問題意識、現場の違和感、お客様の本音、協業先の期待や不安。こうしたものは、表面的な議事録だけでは残りにくい。けれども録音があれば、それらをあとから掘り起こすことができる。
しかも録音の価値は、単に「記録が残る」ことだけではない。

あとから見返した時に、人間の頭だけでは気づけなかったつながりが見えてくることである。
あの時の会話と、この案件の課題がつながる。
以前の雑談の中に、今の新規事業のヒントがあったことに気づく。
ある人が何度も同じ懸念を口にしていたことが分かる。
逆に、皆が重要だと思っていたテーマより、周辺の話題のほうに本質があったことが見えてくる。
これは非常に大きい。

人間は、どうしてもその場の印象や感情、立場によって物事を記憶する。
だから記憶は曖昧であり、偏りもある。さらに、雑談のような場では、同じことを何度も繰り返して話してしまう。曖昧な記憶の上に新しい会話を重ねていくからである。もちろん、その反復の中から発想が生まれることもある。しかし一方で、本当はすでに話し合っていることを、またゼロから話してしまう無駄も多い。
録音は、その無駄を減らす。
そして無駄を減らすだけでなく、会話を知恵として再活用できる状態に変える。

私は、仲の良い創業者同士の対話や、重要なアライアンス先との会話こそ、できるだけ残したほうがいいと思っている。何も会議室の中だけではない。時には食事の場のほうが、本音が出ることもある。移動中にこそ、大きな構想が語られることもある。形式ばった会議では出てこない話が、くだけた場では自然に出てくる。そうした場面も、秘密保持や相手への配慮を前提にしながら、きちんと記録しておく価値は極めて大きい。

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