【第5回】スターキャッチのはじまりと小説になるまでの物語。(天体観測講師・岡村典夫先生)
山元環(以下、山元):こんにちは、映画監督の山元環です。
森野マッシュ(以下、森野):脚本家の森野マッシュです。
山元:今週も「ハラカド天文部」、はじまりました。配信をスタートして1ヶ月、ちょっとずつ広がってきた感じありますね。僕の周りでも「聴いたよ!」って声、増えてきました。
森野:友達からの連絡、うれしいけどちょっと照れますね(笑)。
山元:兄がXでリポストしてくれたりして。意外と家族も聴いてるんだなって思うと、なんだかくすぐったいような、でも嬉しい気持ちになります。中には「“ヤマカン”って呼ばれてたね(笑)」って、ニヤニヤしながら言われたりしてます。
映画のモデル校から、先生が登場!
山元:さて、今回は初のゲスト回です。映画『この夏の星を見る』のモデルになった「スターキャッチコンテスト」を実際に作られた、天体観測講師の岡村典夫先生にお越しいただきました。
岡村典夫(以下、岡村):よろしくお願いします。少し緊張しますが、楽しみです。
森野:岡村先生は茨城県立土浦第三高等学校で科学部の顧問をされていて、映画の舞台のモデル校でもあるんですよね。
山元:撮影前にリール映像を撮るために実際に訪問して、屋上で一緒に星空を見たのが印象的でした。桜が舞う季節で、星と花びらのコントラストが今でも忘れられません。
森野:そのとき、岡村先生に星空の説明をしてもらいながら夜空を見上げていて、「これはただの観測じゃない、体験だ」と感じました。
茨城の星空と、監修のバランス
山元:茨城って、星空が本当に綺麗なんですよね。
岡村:そうなんです。田舎なので空が暗くて、条件が良ければ天の川も見えます。学校の裏に霞ヶ浦があるので、そこから昇る満月が水面に反射して、まっすぐな光の道になることも。
森野:富士山の上に彗星が見えた、という話も聞きましたよね。
岡村:ええ、富士山の真上に彗星が昇ってくるのを、狙って撮影したんです。肉眼では見えづらいけど、写真にはしっかり写っていて。あれは本当に嬉しかった。
山元:先生って、星の位置を“感覚で”把握してるところがあって、本当に星空と会話してるような人なんですよね。
岡村:まあ、経験値です(笑)。予測して、「この辺にあるはず」っていう直感を信じてカメラを向ける。で、写ってたらガッツポーズですね。
山元:現場での天体監修もしていただきましたが、科学的な正確さと映画としての見栄え、そのバランスの取り方が絶妙でした。
岡村:正しく伝えたい気持ちはありますが、映画はエンタメでもありますから。監督が「かっこよくしたい」と言えば、そこはぜひ!って(笑)。
森野:脚本段階でもいろんな助言をいただきましたよね。このセリフだとちょっと硬すぎるとか、もう少し柔らかくしたほうが自然だとか。
山元:現場で一番頼りにしてたのは、望遠鏡の角度とか動かし方。岡村先生が「それ、かっこいいね」って言ってくれると、自信持てるんです(笑)。
「教室は間違えていい場所」
山元:先生の授業って、どんな感じなんですか?
岡村:「間違えていいよ」と伝えることを大事にしています。発言することに意味があるし、そこから新しい発見が生まれる。教室は失敗していい場所であるべきだと思うんです。
森野:その考え方、すごく好きです。映画づくりの現場でも、アイデアを出し合って前に進むのって、そういう空気から生まれますよね。
山元:大人になっても「間違えちゃダメ」って思いがちだけど、本当は「まず話してみる」が大事だったりしますもんね。
岡村:実は地学の授業では、防災の話もよくします。この土地に家を建てると液状化する可能性があるよとか、昔の地図を見るとその場所の安全性が分かるんです。
森野:それ、まさに“生きる力”を育てる授業ですね。
空気望遠鏡がつないだご縁
山元:映画に登場する巨大な「空気望遠鏡」、あれって実在するんですよね?
岡村:はい。震災前は10メートルあったんですが、壊れてしまって今は3メートルに。でも、2010年に『ナニコレ珍百景』に出演したことがきっかけで、辻村深月先生が番組をご覧になって、そこから小説が始まりました。
森野:先生の話って、どれも物語のタネが詰まってるんですよね。
山元:実際、撮影前の取材でも「それ、小説にあった!」って思うことがたくさんありました(笑)。
岡村:そんな大げさな……でも嬉しいです。取材されてるつもりが、気づいたら一緒に遊んでるみたいな感覚でした。
スターキャッチ誕生の瞬間
山元:さて、やっぱり聞きたいのが「スターキャッチコンテスト」がどう生まれたのか、ということなんですが。
岡村:ある観測会で、塩ビ管で自作した望遠鏡を持っていったんです。高価な望遠鏡もあったけど、生徒たちは壊してもいい自作望遠鏡に夢中になってて。その姿を見て、「これ、競技にしたら面白いかも」と思ったんです。
森野:その着想がすごいですよね。遊びと学びが一体になってる。
山元:映画でも塩ビ管の望遠鏡を使わせてもらいましたが、見た目よりずっと丈夫で扱いやすくて、すごくリアルに撮れました。
岡村:今では群馬県でもスターキャッチをやる準備が進んでいて。全国大会とか、夢が広がりますね。
星空でつながる未来
岡村:今、宇宙ステーションには大西飛行士が搭乗しています。彼を応援する意味でも、日本全国の高校生が同じ時間にISSを見上げたら素敵ですよね。
山元:オンラインでつなぐスターキャッチ大会、夢ありますよね。
森野:それぞれの学校の夜空の下で、同じ瞬間に同じ星を目指す。なんてロマンチックな競技なんでしょう!
岡村:映画や小説から生まれたアイデアを、今度は現実の世界で形にしていく。それがこれからの自分のミッションだと思っています。
山元:先生の情熱がどんどん伝播していって、きっと次の誰かがまた新しい物語を作っていくんでしょうね。
森野:物語が未来をひらくって、まさにこういうことだなと感じます。
山元:ということで今回は、天体観測講師の岡村典夫先生をお迎えしました!
森野:次回も引き続きご出演いただきますので、お楽しみに。
山元:それではまた、星空の下で。良いお年を!
(この記事は、Podcastコンテンツ「ハラカド天文部」のダイジェスト記事です。)
🎬 映画『この夏の星を見る』は、2025年7月4日全国公開予定。
制作秘話や星にまつわるエピソードは、今後の配信でもたっぷりと。
次回もお楽しみに!
<山元監督プロフィール>
1993年1月22日生まれ。2019年に公開されたショートフィルム 『ワンナイトのあとに』がyoutubeで300万回再生され話題になり、その後、監督・脚本を務めたBUMP配信ドラマ「今日も浮つく、あなたは 燃える。」の切り抜き等がSNSで総再生回数4億回を超える。昨今では「夫婦が壊れるとき」(NTV)、「沼オトコと沼落ちオンナのmidnight call~寝不足の原因は自分にある。~」(TX)、「痛ぶる恋の、ようなもの」(TX)では監督・脚本を務める。
<森野マッシュプロフィール>
1996年9月24日生まれ。広告代理店勤務を経て、東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻脚本領域を修了。坂元裕二教授の元で脚本を学び、「FIN」にて第47回城戸賞最終選考に選される。2022年に『ケの日のケケケ』が第47回創作テレビドラマ大賞にて大賞 を受賞。近年では、「沼オトコと沼落ちオン ナのmidnight call~寝不足の原因は自分にある。~」(TX)や「君となら恋をしてみても」(MBS)、「VRおじさんの初恋」(NHK)の脚本を担当。
