宇宙生徒会長セイヤ 第70話⑧中編 『セイヤ遭難する』
登場人物紹介
■ セイヤ 風紀を愛する生徒会長。今日も正論で突っ走る。
■ ポックス 冷静沈着な副会長。論理を愛するバルタン星人。
■ クロ 感情を得ようとする推定10億歳のアンドロイド。
■ リュウジ 頼れる幼馴染。仲間思いの生徒会メンバー。
■ ギル 岩石星人の風紀委員。見た目は怖いが五つ子の父親。
■ カズマ 新聞部の特ダネ記者。艦内の噂話ならお任せ。
■ エミリア 生徒会書記。優秀な参謀役でセイヤの彼女。ミリィの姉(双子)
■ ミリィ 明るく元気な医療部志望。リュウジの彼女。エミリアの妹(双子)
■ ヴァル 穏やかな流体生命体。優しさ溢れる癒やし担当。
■ハンク艦長 コスモ・アカデミア号艦長。豪快な性格。
■ポックル副長 コスモ・アカデミア号副長。冷静沈着。ポックスの父親。
■セイゴ コスモ・アカデミア号操舵士。誠実な性格。セイヤの父。
■リュウジロウ コスモ・アカデミア号機関主任。リュウジの父。
前回のあらすじ
極寒の惑星で救助隊が発見したのは、遭難したセイヤたちが築き上げた驚くべき居住空間だった。地熱を利用した暖房や照明、個室、さらには温泉やサウナまで完備されたその場所は、もはや立派な「家」と化していた。あまりの充実ぶりに呆気にとられる救助隊だったが、洞窟の奥からさらに信じがたい波の音が響き渡る。
第8章「再開」中編
――ザザーン……。
寄せては返す、穏やかな波の音。
「え……?」
全員が顔を見合わせる。困惑に突き動かされるようにして最奥へと足を踏み入れると、そこにはさらなる衝撃が待ち受けていた。そこだけが、まるで白昼のように明るかった。天井に設置された強力な人工太陽灯が、眩いばかりの光を降り注いでいる。足元に広がるのは、さらさらとした白い砂浜。どこから調達したのか、南国風のヤシの木までが瑞々しい葉を広げている。そして何より、視界の先で青く輝いているのは――紛れもない、人工の海だった。
「…………」
救助隊の全員が、今度こそ完全に硬直した。
視線を転じれば、そこには信じがたい光景が広がっていた。ビーチチェアに深く腰掛け、海パン姿でくつろぐセイヤ。その隣では、サングラスをかけたリュウジが優雅に寝そべっている。ポックスはといえば、トロピカルなジュースを片手に、何やら難しい顔で波打ち際を眺めていた。それだけではない。砂浜の端には手作りの屋台まで設置されており、香ばしいソースの匂いを漂わせながらクロが焼きそばを焼いている。傍らには「かき氷」の看板まで掲げられていた。さらに岩場の方では、ギルが黙々と筋トレに励み、カズマは「最高の一枚だ!」と叫びながら夢中でシャッターを切っている。
遭難という言葉を辞書から抹消したかのような、これ以上ないほどにリラックスした六人の姿がそこにあった。その光景を目の当たりにした救助隊は完全に停止していた。最初に異変に気付いたのは、ファインダー越しに「最高の一枚」を狙っていたカズマだった。
「あれ……?」
レンズの向こう側に、見慣れた、しかしこの場所にはおよそ似つかわしくない人影を捉える。カズマはカメラから顔を上げると、満面の笑みで大きく手を振った。
「みんなー!お客さん来たぞー!」
その明るい声に、思い思いにくつろいでいた全員が弾かれたように振り返る。
「エミリア?」
「ミリィ!」
「ヴァルまで!」
そこにあるのは、死線を彷徨った遭難者の悲壮感など微塵もない、まるで休日に遊びに来た友人を迎えるような、屈託のない笑顔だった。ヴァルが真っ先に走り出した。
「ポックス……!」
勢いよくその胸に飛び込み、しがみつく。
「よかった……本当によかった……」
堰を切ったように涙が溢れ出し、止まらない。
ポックスは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐに表情を和らげると、その細い肩を優しく抱き返した。
「心配をおかけしました、ヴァル」
ヴァルは何度も、何度も頷きながら、溢れる涙を拭った。
一方――。
「リュウジーーーー!!」
ミリィが砂を蹴立てて全力疾走し、そのままの勢いでリュウジに思い切り抱き付いた。
「生きてたぁ……!本当によかったぁ!」
リュウジもたまらず声を上げて笑い、彼女の背中を叩く。
「悪い悪い、心配かけたな」
しかし、感動の再会は長くは続かなかった。
数秒後、ミリィの視線がゆっくりと下へ向く。
「…………」
視線の先にあるのは、見事なまでに着こなされた海パン姿。
「……で?」
「ん?」
「なんで海パンなのよっ!」
ゴツン!!乾いた音が響き、リュウジが頭を押さえてうずくまる。
「いてぇ!何すんだよ!」
「こっちは死ぬほど心配してたんだからね!それなのに、何よその格好!」
「ご、ごめんって!」
二人のやり取りに、ビーチにはどっと笑いが広がった。
次章に続く
