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世界味めぐりー旅先の一皿が教えてくれたこと15|ポルトガル:塩鱈のコロッケ

これから始まる世界旅行を前に、「旅先の一皿」を手がかりに、これまで訪ねてきた国々をふりかえってきました。思い出をたどることも、ある意味では一つの旅なのだと実感しています。

また、行ったことのない国の話を読んだり聞いたりすることも、旅の一つと言えるのではないでしょうか。実際に旅に出ることができなくても、このシリーズを通して、少しでも旅気分を味わってもらえたのならうれしいです。

【第4章:地中海をめぐる旅】
海が運んだ豊かな食の記憶

この章では、ユネスコ無形文化遺産にも登録されている「地中海の食文化」を手がかりに、海を越えて広がった豊かな味の記憶をたどってみます。
そして、このシリーズもいよいよ最終回となります。
最後に取り上げる国として、最初から決めていたのがポルトガルです。

ポルトガル:パステイス・デ・バカリャウ(PASTÉIS DE BACALHAU)
― 大航海の国ポルトガルの食卓 ―

ポルトガル料理に初めて出会ったのはマカオでした。マカオのポルトガル料理は、アジアの風味が加わって、日本人の口に合うと言われています。実際に食べてみると、何を食べても美味しく感動しました。甘いものをあまり食べない私ですが、名物のエッグタルトもしっかりいただきました。

マカオで食べたポルトガル料理

「やはり本場の料理も食べてみたい」と思うようになり、ポルトガル旅行を計画しました。

そんな中で印象に残っているのが、NHK BSプレミアムの「チョイ住み in リスボン」という番組です。俳優の竹内涼真さんとプロレスラーの小川直也さんがリスボンで1週間暮らしながら料理に挑戦する内容で、ポルトガル名物「バカリャウ(塩漬け干し鱈)」をスーパーで買って、何日もかけて塩抜きして料理をする様子がとても興味深いものでした。

この番組を見て、「ちょい住み」という旅の形にも憧れるようになり、ポルトガル料理への期待もますます高まりました。

ポルトガルの地図(訪問先)

実際に訪れたのは2018年4月。リスボン4泊、ポルト4泊の旅で、エヴォラ、コインブラ、ギマランイス、ドウロ渓谷なども巡りました。どこを訪れても歴史を感じさせる街並みがあり、海の幸・山の幸に恵まれた自然の豊かさに感動の連続でした。

料理も期待以上で、素朴ながら素材の美味しさを生かしたものが多く、ポルトガルの食文化の奥深さを感じました。マカオも美味しかったけど、本場はやっぱり種類も豊富で毎食のように感激していました。

当時は物価の安さにも驚かされました。よくフランスなどで「ワインが水より安い」と言われますが、ポルトガルは水も安いのです。さらにオリーブオイルも「この値段でいいの?」と何度も値札を見直したほどです。

ポルトガル語はまったく話せず苦労もしましたが、それでも「ちょい住み」したい最有力候補の憧れの国となりました。2027年の春頃を目標に、またゆっくり訪れてみたいと思っています。だいぶ物価が上がったと聞きますが、ポルトガルのよさは変わらずにいてほしいと願っています。


ポルトガル料理を語るうえで欠かせないのが「バカリャウ(BACALHAU)」、前述した塩漬けの干し鱈です。

チャンバラができそうなくらいカチンカチンに干された保存食ですが、ポルトガル近海ではタラはほとんど獲れません。大航海時代、漁師たちは北大西洋まで出てタラを獲り、船上で塩漬けにして乾燥させて持ち帰りました。
保存のきくこの魚は長い航海やカトリックの「肉を食べない日」に重宝され、やがてポルトガルの食文化に定着しました。

スーパーで販売されている様子


ポルトガル人にとってどれだけバカリャウが重要かというと、「ポルトガルには365種類のバカリャウ料理がある」と言われるほどです。つまり一年中食べても料理が尽きないというわけです。料理の主役としてだけでなく、具材としてさまざまな料理に使われます

その中でも印象に残っているのが、マカオで食べたコロッケ「パステイス・デ・バカリャウ(PASTÉIS DE BACALHAU)」でした。コロッケに鱈が使われているということにまず驚き、「美味しいの?」と半信半疑で食べた記憶があります。

マカオで初めて食べたパステイス・デ・バカリャウ

塩抜きしたバカリャウとジャガイモ、卵とパセリを混ぜ、細長く成形して揚げたシンプルな料理ですが、外は香ばしく中はふんわり。バカリャウの繊維の口触りもよく、クセになる味で、名物料理なのも納得でした。

本場でもまずこのコロッケを探しました。観光客が多く通る通りに、ポートワインとセットで販売している店があり、さっそくいただきました。懐かしい味との感動の再会です。

ボートワインとのセット

その他にバカリャウを使った有名な料理として、卵と炒めた「バカリャウ・ア・ブラス(BACALHAU À BRÁS)」があります。こちらは家庭料理らしい温かみのある一皿です。

胃袋がもっとたくさんあれば、バカリャウ料理の食べ歩きをしてみたかったところですが、ポルトガルにはそれ以外にも美味しいものがたくさんあり、胃袋も大忙しでした。

魚介料理も豊富で、なかでもタコの煮込みや白身魚のソテーは、今でも思い出して食べたくなります。 

魚の名前を何度聞いてもわからなかったけどとにかく美味しかったソテー

シンプルなイワシのグリル、つまり焼き魚は日本人にはたまりません。肉料理や山の幸もあり、ウサギ肉にも挑戦しましたし、名物のもつ煮「トリパス(Tripas)」も噂に違わぬ力強さを感じながら堪能しました。

トリパス。どれもこれもじっくり紹介したい料理ばかり


そして忘れてはいけないのが、ポルトガル生まれの「パステル・デ・ナタ(PASTEL DE NATA)」、いわゆるエッグタルトです。今ではどこでもよく見かけますが、ポルトガルでは毎年コンクールが開かれ、上位の店には行列ができるほど人気だそうです。

発祥の地であるリスボン・ベレン地区では、1837年創業の「Pastéis de Belém」が今も秘伝のレシピを守り続けています。もちろん私も本場の味をいただきました。

エッグタルト発祥のジェロニモス修道院
Pastéis de Belémの元祖エッグタルト


小さな国ポルトガルは、大航海時代に世界へ船を出した国です。遠い海から運ばれてきたバカリャウも、世界に広がったエッグタルトも、その長い航海の歴史の中で育まれてきた食文化なのでしょう。

こうして振り返ると、食を通して世界を旅する楽しさを改めて感じます。またいつか、どこかの旅先の一皿でお会いできたらうれしいです。

#創作大賞2026 #フード部門

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